<最近の新聞記事から>
東京の古美術商が殺害され金品を奪われた事件で、ネコの保護や里親探しなどをする非営利団体の女性メンバーが、テレビニュースで容疑者宅の家宅捜索の映像を見ていたとき、室内から窓ガラス越しに外を見つめる一匹のネコに気付いた。女性は「助けを求めるネコと目が合った気がした」と心配になり、警察と協議し、容疑者の所有権放棄の手続きを経て救出作業を行うことになった。
警察から「二十匹くらいいる」と聞いた上で、非営利団体のメンバーが容疑者宅に入ると、閉め切られた二階建て住宅には熱気と異臭が立ちこめていた。散らかった室内を探し回ると、子猫二匹はすでに死んでいたが、瀕死(ひんし)の十九匹を無事救出した。テレビに映った猫には「ありがとう」と言い、息絶えた子猫二匹は花を添えて火葬した。
非営利団体のメンバーは「保護が少しでも遅れていれば、多くの小さな命が失われていた」と語る。関係者は「罪のない多くの猫が犠牲にならなくてよかった」と胸をなで下ろしている。
以上、新聞記事から抜粋して、若干文言整理した。
それにしても、その団体のメンバーがネコに気がつかなかったなら、ネコたちの状況はどれほど悲惨なものになっていたことか。しかし、何だか腑に落ちない。容疑者宅にこれだけ多くのネコがいることを、「関係者」の誰一人知らなかったというのだろうか。
いや、そんなはずはない。ホームズやルパンの洞察力を借りなくても、容疑者本人と家宅捜索した警察が知っていたことは容易に推察できる。飼い主は自分のことで目一杯で、ネコたちのことを捨て置いても平気だった、警察は殺人事件にかかりっきりで、容疑者宅の二十匹以上のネコたちを見て見ぬふりした、としか思えない。この両者の弁解は聞きたくない。
その他にも不明な点が色々とある。この家の周囲十キロメートルの範囲に人家はない? 容疑者の弁護士とか代理人たちは、一度も容疑者宅を訪れていない? マスコミ関係者の一人としてネコを見た者はいない? いや、そんなはずはない。
こう考えると、その女性が警察に通報する前に、誰かが何とかしなかったことが不可思議でたまらない。(2014.5.26)