写真の右から左に、直近2か月に読んだ本を並べてみた。
「ヒト、犬に会う」(島泰三、講談社メチエ)では、オオカミから分かれた犬の特性はデンプン質の消化能力にあるという。4万年から2万年前の最終氷期に向かって気候がぐんぐん寒冷化していく時期に、ホモサピエンスは世界中に拡散し、そして犬と出会った。ヒトと出会ったオオカミは犬となり、ヒトは犬の助けによって精神活動に余裕が生まれ、人になったことを論じている。
「日本人になった祖先たち」(篠田謙一著、NHKブックス)は再読。なにせDNA分析の説明がとんでもなく難しかったので、今回読み返して少し理解できた気がする。篠田先生によると、縄文人には北と南の系統があるという。さらに驚くべきことに、現代人のDNAに伝わるのは南系統の縄文人のもので、東北、北海道の縄文人のDNAはほとんどないというのだ。
北方の旧石器人由来の縄文人はいったいどこへ行ったのだろう。彼らこそが1万6500年前に縄文式土器を列島に残した人々らしいのだ。彼らは絶滅したのか、それとも北方へ帰ったのか。
7世紀になって、大陸方面から数度にわたって渡来した弥生人の一派は、すさまじい勢いで関東、東北地方の征伐を開始した。これによって、律令制に組み込まれた俘囚たちの中に、北方系の縄文人の子孫がいたとしたら(いなかったとする方が不自然なのだが)、現代の列島人のDNAには、必ずやその痕跡が残っているはずなのだ。
「縄文時代の歴史」(山田康弘、講談社現代新書)は縄文時代を体系的に俯瞰するのに大変役に立った。
「日本人はどこから来たのか?」(海部陽介、文春文庫)は、旧石器時代に列島へ3方向からサピエンスが押し寄せたことをわかりやすく論じている。2万5000年前ころに北海道に現れた細石刃文化はシベリアから南下した集団によるもの。3万8000年前以降に本州や九州で爆発的に増える旧石器遺跡、これらはおそらく対馬ルートで半島から入ったとされる。もう一つはこの列島で最も古い3万6500年前の化石人骨が出土する琉球列島。明らかに南方から北上するルートがあった。しかし彼らは奄美諸島から北には進出しなかったようだ。
次は、「弥生時代の歴史」(藤尾慎一郎、講談社現代新書)、「倭の五王」(河内春人、中公新書)を読む予定。この列島に向かって、原始から7世紀にかけて連綿と渡来してきた人々の興亡を読み解きたいと思う。(2019.12.26)