お彼岸の今頃、あちこちで彼岸花が咲いている。
子供の頃、彼岸花は墓地にしか咲かない何となくこわい花というイメージがあった。
あの朱色には尋常じゃない自己主張を感じ、姿も妖艶で、
魔界かどこかに連れていかれそうな気がしていた。
現に彼岸花の球根には、リコリンという毒があるそうだ。
かつてお墓は土葬だったので、その毒を利用して動物によって
掘り荒らされないようにと植えられていたらしい。
だから、墓地には一面の彼岸花という風景が広がっていたわけだ。
でも調べてみると、彼岸花の球根にはデンプンが含まれていて、
水にさらしてすりおろして食用にしたり、
炎症・腫れものに効く漢方薬や民間療法、そして防虫にも使われていたそうだ。
また別名が多いというのも、面白い。
「曼珠沙華」が一番有名だけど、他に、有毒だからかシビトバナ、
シビレバナ、ドクバナ、ユウレイバナ、キツネノタイマツ、キツネノシリヌグイ、
ハヌケグサ、ヤクビョウバナ、ステゴバナ、カエンソウ等々
1000余あるとも言われているそう。
彼岸花の知らないところで、勝手にいろんな呼び名を考えてくれるものだなあ。
人間が勝手に忌み嫌っているのをよそに、秋の風に揺られている姿は、
どこか凛として美しい。
ここで一句・・・
「秋風に 黙して揺れる 彼岸花」