東京新聞のコラム【筆洗】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2014010402000129.html)。
「大滝さんは「春よ来い」・・・・・・正月の孤独に耐える青年の気持ちをしぼり出すように叫ぶ▼・・・・・・春よ来いである」。本当に、そうだ。このままならないこの国の政治状況に。
『●「ナイアガラ」の大滝詠一さん亡くなる』
『●大滝詠一さんを悼む』
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【http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2014010402000129.html】
【コラム】
筆洗
2014年1月4日
正月といってもコンビニもファミレスも営業している。元日の深夜、たばこを切らしてコンビニへ行く。レジの前に並んでいる青年が正月らしからぬ弁当を持っている▼実家に帰らないのだろうか。コンビニの弁当がたまたま食べたかっただけならいいが、どうも引っ掛かる。<行くところなき身の春や墓詣(はかもうで)> 永井荷風。正月のにぎやかさは光となり、かえって心に映る影を濃くする▼永島慎二さんの代表作『漫画家残酷物語』に家出し正月を下宿で過ごす若者の話(『春』・一九六三年)がある。「下宿のふとんの中で除夜の鐘を聞いていたら自分の生活がとてつもなく寂しく思えて」「おとなしくしていれば、みんなニコニコおとそをのんで、おめでとうが言えたのに」▼これに着想を得た曲が、はっぴいえんどの「春よ来い」である。大滝詠一さんが十二月三十日に亡くなった。「春よ来い」は大滝さんの部屋で松本隆さんが永島さんの漫画を見つけて歌詞を書いた。作曲は大滝さんで七〇年のデビューアルバムのA面の一曲目に収録。彼らが目指した「日本語ロック」の嚆矢(こうし)といえる▼大滝さんは「春よ来い」の歌唱について民謡歌謡の三橋美智也と浪曲の広沢虎造に影響されたと言っている。正月の孤独に耐える青年の気持ちをしぼり出すように叫ぶ▼コンビニの元気のない青年はどうしただろう。春よ来いである。
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