脳脊髄液減少症患者のつぶやき、「とりあえず、生きてみよか・・・。」

過去から現在へ、脳脊髄液減少症、体験克服記。

森の「綿菓子屋」さん。

2006年12月12日 | 四季の風景
今日は12月12日
今年もあと19日。残りわずかです。
今日はこちらは曇り
午後から雨になるようです。

昨日の朝は寒くて、庭に霜柱を見ました。
たまった水に氷もはっていました。

今朝はくもりだったせいか、比較的暖かな朝で
霜はおりていませんでした。

最近寒いせいか、
インフルエンザにかかった時のように、全身のふしぶしが痛みます。
昨日も今朝も痛みで目が覚め、本当にこんな目覚めが嫌で、
つい「もう死にたい。」と
弱音が自然に口から出てしまいました。
こんな日もあります。

さて、
12月4日に初霜を見ました。
翌日も霜で車も空き地も真っ白でした。
冬だなぁと感じました。

その日は寒かったけれど晴れていたので、
気温が上がるのを待って、公園に散歩行ってきました。
これで26回目です。

翌日5日にも、出かけるのが11時ごろと遅れたけれど、
散歩にいきました。
27回目です。

でも、出かけるタイミングは遅かったせいか
具合が悪くなってきて、いつものコースより短めに歩いて、
早めに帰ってきました。

以来きょうまで、散歩には行っていません。

12月の公園は木々の紅葉も終わり、
木の葉が落ち、うっそうとしていた森が
急に日が差し込んで明るくなってきました

最後の落ち葉が道を埋め尽くし、
もみじの赤や黄色の木の葉で埋め尽くされた木の下は
まるで色とりどりの糸で織られたじゅうたんが
しかれているようでした。

11月末のある朝の散歩の時、
朝日のスポットライトの射す林の中で、
まるで、雪のように絶え間なくハラハラと散る、木の葉を見ました。

とても幻想的な美しい光景でした。

考えてみると、
今までの人生の中で、
10月11月12月と移りゆく、木々たちを、
こんなにも毎日のように観察したことはありませんでした。

紅葉の名所は何度か見たことはあっても、
身近な木々たちの葉が次第に少しずつ色づき、
散っていく一部始終の変化を、
見て、嗅いで、木の葉を拾って、描いてと、
全身で感じたことも、ありませんでした。

いつも、苦しい症状を抱えながらも
時間に追われ、学業や仕事や忙しい日常に追われ、
必死に生きていたから、

こんなにじっくりと紅葉の一部始終を見たことは
今までの人生で一度もありませんでした。

こんな秋は、今年が生まれてはじめてでした。

「脳脊髄液減少症」が悪化して、リハビリ散歩が必要なほどにならなければ
こんな時間は、私の人生にはなかったかもしれません。

そう思うと、今までの人生も、悪化後の苦しさも
ブラッドパッチ後も孤独な闘病も、リハビリも、
ただ、苦しいだけではなく、

自分と向き合ったり、四季の自然からエネルギーをもらう
大切な時間を与えてもらったのかもしれません。

「人生に起こることがらに、何も無駄なことはない。」のだと思えました。


この秋、公園にいくと、私にはひそかな楽しみがありました。

それは、「森の綿菓子屋さん」に会うことです。

その「森の綿菓子屋さん」は
いつもそこで、甘い香りを周囲一杯にただよわせて
私が来るのを待っていて、
11月下旬まで、私を励まし楽しませてくれました。

「おっ、今日も歩いてきたな。」
「がんばれよ。」といわんばかりに
そこを通るたび、甘い香りで応援してくれました。

しかし・・・・・、
そこには、「綿菓子屋さん」の姿は見えません。

ただ、濃厚な、砂糖がこげるような、
カラメルソースのような、
お祭りの屋台の綿菓子やさんの近くにただようような、
甘い香りがするだけです

私はいつも、そこで足を止めました。
見渡すかぎり、森です。
「はて?」と毎回考えました。

「近くに精糖工場でもあるのかな?」
そう、本気で考えました。

でもそんな施設は周囲にはありません。

「ミツバチの巣でもあるのかな?」
「はちみつの匂いかな?」
でも、蜂の気配もありません。

「はて?この甘い香りの正体はいったい?」

散歩をしている老夫婦に
「ここに来ると甘い香りがしますよね?なんでしょう?」
と聞いてみましたが
老夫婦は二人でニコニコと首をかしげるばかりでした。

老夫婦には、この香りがわからない様子でした。
耳が遠くて、私の声が聞き取れなかったのかも・・・

まさか、私だけが感じる幻臭?

ずっと疑問に思いながら、
公園散歩に通いました。

いつ行っても、そこを通ると香ってくる
あま~いカラメルの香り・・・。

ある日、その正体がやっとわかりました。

その正体とは・・・・・

決してキレイな紅葉とはいえない、あたり一面に敷きつめられた、
茶色の「桂(かつら)の木の落ち葉」でした。

茶色になった落ち葉をひろって、匂いをかいでみると、
カラメルの香りそっくり
「これだ」と
気がついた時の驚き。

そして、確かに「香りの元」があったことで
微妙な木の葉の香りを感じ取ることができた
自分の嗅覚の回復したことの気づきと驚き。

改めて周囲を見回すと
その場所は、桂の大木が何本かそびえ立っていました。

「森の綿菓子屋さん」の正体は
かつらの木たちだったのです。

まさか、この甘い香りの正体が、「木の葉」とは想像もしませんでした。

ハート型の「桂の葉」は、
好きな人の持ち物の本にそっとはさんでおくと
自分の思いが伝わると
昔、山の案内人から聞いたことはありましたが

こんなに甘い香りがすることを、
この秋まで、私は全く知りませんでした。

桂の木の大木が何本かある林の一帯には
10月ごろから、11月下旬まで、ずっと甘い香りがただよっていました。

どうして落ち葉がこんなにおいしそうな香りがするのか、
自然界のいたずらに驚きました。

桂の茶色になった落ち葉だけが香るのでしょうか?
若葉はどんな香りがするのでしょうか?
興味はつきません。
また調べてみたいと思います。

落ち葉を拾い集め、何枚か持って帰って、玄関とパソコンの横に置きました。
すると、家の中まで、ずっとあの甘い香りがするのです。
自然の芳香剤です。
ちなみに家族は「しょうゆせんべい」の香りと言いました。

私は甘い香りに感じました。
甘い香りは、なぜか心を穏やかにしてくれます。

桂の木は、ちょうど歩いていて苦しくなる
折り返し地点にあったのです。
甘い香りをかぐと
「もう少し。」とがんばれました。

この秋、桂の落ち葉の香りには
本当に励まされ、楽しませてもらいました。

でも11月下旬24回目の散歩した時、
もう桂の木の横を通っても、甘い香りはしなくなっていました。

落ち葉として落ちてからも、しばらく甘い香りを漂わせたあと、
カラカラになって、その甘い香りが終わるようです。

11月下旬で、すべての葉が落ちてしまいました。

「森の綿菓子屋さん」も11月で閉店のようです。

この秋、私の孤独なリハビリ散歩を
いつもそこで待っていて、甘い香りで応援してくれた
「森の綿菓子屋さん」。
ありがとう。

今より元気になって、きっと会いにいくから、
また、来年、甘い香りをかがせてね。



コメント (52)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする