銀座のうぐいすから

幸せに暮らす為には、何をどうしたら良い?を追求するのがここの目的です。それも具体的な事実を通じ下世話な言葉を使って表し、

美しさだけで言うなら、スワニー(鎌倉)でしょう

2008-10-21 13:18:44 | Weblog
 前回、シャルボネ(パリ)の本店がどんなに、静かで美しい空間かをお話いたしました。それに対して、日本の美しいお店として、鳩居堂が似ているともお話をしました。
 しかし、美しさの質が違うのです。鳩居堂は金箔張りの舞扇などが壁のショーウィンドーにたくさん飾られております。その一つ一つは、誠に美しい。しかし、色が氾濫しすぎていて、それが私のように特別に美にこだわるものには、過剰と思えるのです。茶道をなさっている方にはお分かりだと思うのですが、過剰はまた、真実の美とはならないのです。いや、ハイレベルを求めすぎるかもしれませんが、この際はひとつひとうの商品がどうのこうのというよりも、店内の展示の側面で言っておりますので、そのことは鳩居堂さんも、ご理解をくださいませ。

 日本のお店で、今、あのシャルボネの静けさに匹敵をするものがあるとすれば、銀座の、東側の裏通りに展開する、ごくごく、上等な和服店が、当たるかなあ? 木のドアがしっかりと閉まっていて、一見のお客には入りにくい雰囲気のある呉服店。これらの中に入ったときの静けさと、うつくしさったら有りません。中には襦袢だけを、専門にしているお店もあり、襦袢とは着物本体より、単純な色を使うので、それが、グラデーションを構成しながら、展示をしてあるのを見たりすると、「いやあ、シャッポを脱ぎます」と心の中でうなりたくなります。

 でね。普通の人が入れる大衆的なお店で、ここは抜群に展示マナーが美しいという場所を、今日はご紹介を致しましょう。実は「あなたが鎌倉へいらっしゃるのなら、あそこは観光名所のひとつですよ」とおせっかいをしたくなるぐらいのきれいなお店がありました。鎌倉・スワニーの(旧)木綿館です。

 今建て替えて新館に移動をしたらしくて、雰囲気が変ってしまったかもしれませんが、経営者が同じならコンセプトは残っているはずで、ともかく、この春までの美しい情景を描写してみましょう。

 今、日本の主婦の間で最もはやっている手芸はビーズ手芸です。でも、一昔前まではパッチワークでした。ターシャ・テューダーのような人は、ご自分が貯めた生地で、パッチワークをするのだと思いますが、日本で、特に初心者の人は、買った新しい布を使います。先生が教えてくださる模様が同じでも、生地の選び方で全く違ったものが出来ます。そこが面白いので、中級者は生地を探して歩くこととなります。

 上級者は、古い和服地を利用したりするので、また違ったお店を渉猟することとなりますが、初心者および中級者は木綿を捜し歩くこととなります。

 その木綿生地の収集と展示の美しさに置いて、鎌倉のスワニーほどのお店には、今まで遭遇した事がありません。資金力があるのだと思います。同じブルーでも、花柄、格子、縞、無地と、それぞれ、濃度や混合された色の違いで、何十種類あるか、ちょっと、見回しても数え切れないほどで、それが、お店一つ全体を、生地の種類ではなく、色の統一感でもって、グラデーション形成されている展示なのです。

 しかもフローリングの床で、小さな窓はまるで、『赤毛のアン』の世界です。以前はプチホテルだったそうです。私は歩いて20分で行かれるくせに、新館にはまだ行った事が無いのですが、古い木綿館は、それこそ、主婦の城でした。その中で主婦たちは夢を見たのです。お店が繁盛するということは店主や経営者が、お金儲けだけではなく、主義主張を持つことが大切だと思います。スワニーの主人は『美とは何かを知っている』それは、確かです。

 最後になりました。今日の画像は大船の県立植物園にある、ハンカチの木です。苞がまるで、ハンカチが下がっているように見える木なのです。育てるのが大変な木で、これを、自宅に咲かせている人は、自慢にしていますが、それも道理と言う珍しい花です。咲くのは初夏ですけれど。
    2008年10月20日         川崎 千恵子
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シャルボネ(パリ)と鳩居堂(銀座)

2008-10-21 01:13:28 | Weblog
 今日お話しすることの主眼点は、良質なものを丁寧に作っていて、規模を拡大せず、儲けを追及しすぎない・・・・・お店の美しさ・・・・・です。

 私は油絵と版画をやるのですが、美術評論家の方からは版画の方がよいといわれております。特にヘイター方式と言って色を多数使う版画を遣っておりますので、制作は大変ですが、結果として華やかになります。そのために版画インクは、種々持っていて、その組み合わせをノートに詳細につけて、仕事を進行させるのですが、色インクとしては、やはり、パリに本店があるシャルボネのものが一番だと思います。

 そのシャルボネのインクは、日本では神田の文房堂(多分、日本一古い画材店)と、萩原商店(プロの版画家が、電話やファックスで注文をする一種の問屋さん)には、確かにおいてあります。ただ、今現在日本一大きい画材店である、新宿の世界堂においてあるかどうかを、私は知りません。と言うのもほとんどの、版画家は萩原商店で買うので、世界堂がそれをおいても、買いに来るお客がいるかどうか、いてもとても数が少ないから、商売にならないでしょうから。

 世界堂には、アニメの道具、とか、漫画を描く道具は、相当数置いてあります。それを買いたい若い人が大勢いるのでしょう。ワンフロアーが、それに占められているぐらいです。日本のアニメやコミックと言うか、漫画は世界を席捲しているし、それを遣りたいという若い人が多いから、その材料は確実に売れる分野だからです。

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 さて、私はせっかくパリに来ているのだから、シャルボネの本店を訪ねたいと思いました。版画工房のお仲間に住所を聞いて、訪ねてみると、それは、セーヌ河畔にある、瀟洒な一軒家でした。コンクリートのビルではないのです。床はフローリング。北西の二方向にある道路に沿って、フランス式の縦長の窓が大きくとってあり、商品は窓の無い、二つの壁面に、棚を作っておいてあります。その棚の裏側の壁ですが、ウォールナットです。

 その前に、黒いふたのある、白い缶がずらっと、四段ぐらい並べられています。その缶は大体鮭缶程度の大きさですが、そこに茶色の飾りで縁取りされたハート型の窓があり、その窓にインクの色が印刷をされています。棚の幅は狭いです。それらは、大体一つが五千円ぐらいするのですが、もう少し安いものとしてのチューブがあります。

 また、他のスペースにはきれいな木製の引き出しがたくさんあって、その中にはシャルボネ製ではないが、版画家がよく使う刃物類が丁寧に区分けされて入っています。全体がものすごく静かで美しいです。日本で、私が最も頭が痛くなるお店が、ドンキホーテですが(それでも、夜遅くサインペンなどを買いたくなると、よく入るのですが)それの究極の対岸にあるお店だといってよいでしょう。

 売り子としては、中年の誇り高いマダムがひとりです。私は何代も続いた経営者一族だと見ています。雇われた人みたいな感じではない。それで済んでいるのはお客が少ないからです。私が想像するに、日本と同じで、プロはここでは買わないのです。きっと、もう少し値引きをしてくれる問屋風のところがあって、そこで、皆さん、買うのでしょう。

 なら、なぜ、このお店がここにあるかといえば、一種のパイロット店として、世界に冠たる品質を誇示するために置かれているお店だと思うのです。セーヌの河岸と言っても繁華街ではなく、画廊街のはずれで、窓から見えるのは、マロニエの葉ばかり。

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 日本でしいて似たようなお店を探せば、鳩居堂でしょうか? 自社ブランドとしての、便箋や葉書が有名です。それを使う事が中年、日本マダムの品格を現す商品です。銀座の本店は税務署が発表する、地価の日本一高いところして、戦後数十年、きらめいております。そして、本店にしろ、他の街にある支店にしろ、雇われている若いお嬢さん方が制服を着て、一杯居ます。そして、売上高もシャルボネの比ではないでしょう。

 でも、なんともいえず、静かなあのシャルボネ本店の雰囲気を、私は生涯で、出会った素敵な場所のひとつとして、宝物のように、大切にしています。

 会社を経営することは、資本主義の常として拡大を目指すでしょう。シャルボネも裏ではそうかもしれない。だけど、あの本店の、清潔にして慎ましやかで、そして、美しい雰囲気を見ると、それが斜陽に繋がってしまうかもしれないけれど、なんとはない・頑・固・な・節・度・を感じて、『た・よ・り・に・な・る・な・あ』と思うんですよ。

 最後になりました。この版画は日本で作った初期のものです。でも、インクはシャルボネの、カーマインと言う赤です。透明で美しいと思っております。

     2008年10月20日            川崎 千恵子
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