小泉 勝著『膵臓の病気』
膵炎ではないかと言われた時に最初に買った本です。
初心者向きでわかりやすい本だと思います。
この中に出てくる
、『いわゆる慢性膵炎』という言葉に興味を引かれました。
まさしく、私のことじゃ?と。
慢性膵炎の確定診断基準は、私の主治医曰く
「膵炎がかなり進行した状態」だそう。
つまり、そこに至るまでに進行中の病態があるわけですが、
基準を満たさないために「膵炎じゃありません」と言われて、
じゃあこの痛さは何なの?とホスピタルショッピングをされた方も多いかと思います。
この本の中で書かれている、いわゆる慢性膵炎とは
『膵炎の強い疑いがあるにも関わらず診断基準を満たさないために
慢性膵炎と診断できない例』であり、
病態としては
『軽い上腹部痛・圧痛が持続または再発継続し、尿中や血清の膵酵素の異常を伴い、
基準は満たさないものの膵臓には異常がみられる』ものとなっています。
つまり、膵酵素・・・アミラーゼ、リパーゼ、トリプシン等の異常
基準を満たさない膵臓の異常・・・膵臓の腫れ
ということになるかと思います。
アミラーゼやリパーゼの異常がある、でも画像の異常なし。
逆に採血は異常なし、でも画像に多少の異常がある。
こういう状態でありながらも、結果的に、
「すい臓が腫れてますけど慢性膵炎とは言えません」
とか
「アミラーゼは高いですが、すい臓に異常はないので大丈夫です」
と言われた方も多いのではないのでしょうか。
この言葉はドクターとしては正しいのです。
確かに基準を満たしてないのですから。
でも、痛いものは痛い。
どうにかして欲しいですよね。
ここで、こんな医者はダメだとすぐに他を探すべきなのでしょうか。
これは経験上、どうかと思うところもあります。
というのも、同じドクターに掛かって治療を受け続ければ、
ドクターのほうも「これでもダメなら次はこれでいこう」
と色んな治療法を考えてくれるからです。
私も3年半の間に、色々と処方が変化しました。
(「アナタは幸運な医者に最初から出会ったんだ」と言われるかもですが。)
勿論、人間同士ですから、相性というのがあります。
合わないと思ったら、他を探すのも必要でしょう。
ところで、この本によると
慢性膵炎と区別すべき重要な病気として
『膵がんや心理的なもの』がある、と書いてあります。
膵臓がんについては、
膵臓博士にお任せするとして、
心理的なものとは
機能性胃腸炎のことでしょう。
機能性胃腸炎とはなんぞや?
食事の後に胃が重たく感じたり、胃の辺りが何となく痛いといった症状があるものの、
検査では異常が認められない状態が続くことを言います。
採血・画像に全く異常のない膵炎疑惑と似ています。
ストレスが関わっているのもこれまた同じです。
投薬もH2ブロッカーや胃の粘膜を保護する薬、消化剤、
とフォイパンを除いた膵炎の処方とよく似ています。
初期の慢性膵炎であれば、
フォイパンよりも消化剤のほうがよく効くこともあります。
そこからすると、機能性胃腸炎と診断されても治療に大差なし?
膵炎を疑われて行う検査としては、
採血、エコー、CT、MRI、胃カメラ等があります。
膵炎は※除外診断されることもありますので、最低これだけは必要です。
(※膵臓病以外の病気を検査によって除外した上で、消去法によって膵炎であろうと考える)
最近ではEUSが第一選択肢とされるようになったようです。
EUSがもっとも膵臓の異常を捉えるのに適していますし
患者への負担も少ないです。
(CTは被曝、造影剤の負担がある)
EUSで膵臓の画像以上をチェックし、PFD検査で膵臓の外分泌機能を調べると
膵臓の状態がしっかり把握できるようです。
ただし、EUSはDrの側に技術が必要で、
できる医療機関が限られているようだし、
PFD検査も同様のようです。
触診とエコーのみで「慢性膵炎」と診断されたら、
他疾患が隠れている可能性があります。
たとえば、アミラーゼ数値は大腸や腎臓の病気でも上昇することがあるそうです。
もしかして膵臓では?と思ったら、
CTやMRI検査を受けられる医療機関に掛かった方が良いでしょう。
では、採血異常について。
総アミラーゼ値だけでは異常がわからない場合があるので、
P型(膵臓型)アミラーゼ、リパーゼ、トリプシン、
エラスターゼ1等の数値が知りたいところです。
炎症反応としてCRP、WBCの値も要チェック。
膵酵素の中ではトリプシンが高いのが特によくないのですが、
測定に数日掛かるので、痛い日に結果が出ないのが難点。
アミラーゼの数値と膵炎の重症度は比例しませんし、
異常の出ないこともあるので、
総アミラーゼだけを測定して、正常=膵炎ではない。
と診断されたら???と疑ってもいいかも。(^^;)
ただ、基準値といわれているものは、あくまで世間一般の値です。
自分自身が健康な時にどれぐらいの数値であったかを知らなければ、
自分の中の異常というのはわかりません。
たとえば、私の場合ですが、炎症を起こしていても白血球があまりあがりません。
それは、普段の私の数値が4000ぐらいだから。
だから、8000だと私の中では高値です。(基準値は9000まで)
残念ながら、膵酵素の数値を健康な時に調べる人は少ないでしょうから、
(健康診断にも入ってない)比べようがありませんね。
とはいっても、画像・採血とも異常なしであれば、
重篤な膵炎が隠れていることはないでしょう。
それでは、採血も画像も異常がなければどうするのか。
機能性胃腸炎と言われたのであれば、
まずはDrに従い出された薬を服用して様子をみてもいいのかもしれません。
薬が全く効かないのであれば、主治医にそれを訴え、
どんなに痛いと訴えても一向に処方を変えてくれないとか、
長く掛かっているのに必要な検査をしてくれないのであれば、
その時に転院を考えたほうがいいのではないでしょうか。
なお、いつまでも続く痛みに対して安定剤や抗うつ剤が処方されることもありますが、
これは本当の慢性膵炎であっても鎮痛目的で処方されることがあります。
詳細は
こちら
転院に際しては私のようにERCPで膵炎の原因がわかる場合もありますので、
ERCPやEUSの出来るような医療機関にされたほうがいいかもしれません。
しかし、こういう病院は紹介状が必須です。
まずはかかりつけ医へ、それから大病院へというのが正しい流れです。
ただ、ERCPは命の危険性があるリスクの高い検査ですから、
ドクターが勧めないとしても当然のことです。
「脂ものを食べて痛い」だとか「お酒を飲んだら痛い」のであれば、
こういったものを口にしないのは言うまでもありません。
慢性膵炎の基準を満たさない「いわゆる慢性膵炎」の場合であれば、
この本によると
『慢性膵炎に進行する例はほとんどないので適切な薬物療法と心理療法が大事』
とあります。
最後に
慢性膵炎の確定診断基準について
○エコーで膵石がみられる
○CTで石灰化がみられる
○ERCPで分枝膵管拡張や乳頭側主膵管拡張がある
です。
準確定診断例は
○膵臓内の粗大エコーや膵管の不正拡張、周囲の不規則な凹凸や膵臓の変形がある
○MRCPで分枝膵管拡張や乳頭側主膵管拡張がある
○ERCPで主膵管だけの不規則な拡張や非陽性石、たんぱく栓がある
○CTで膵臓周囲の不規則な凹凸や膵臓の変形がある
となっています。
なお、この場合のエコーは一般的なエコーのことではなく、
EUS(超音波内視鏡)のことだそうです。←amylaseさんより