まあどうにかなるさ

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デフレの正体

2010-09-17 19:14:00 | 書評
現役の銀行員、藻谷浩介氏が書いた『デフレの正体』を読んだ。
日本経済の本質を人口の波で説明した目からウロコが出るような著書である。景気が悪いのは「景気循環」では説明することは出来ない。本質的なことは「日本人の加齢に伴う生産人口減少」であると。
今までの日本経済の波は生産人口(15-64歳)の波で説明がつく。例えば、バブル経済は団塊の世代がマイホーム購入の適齢期を迎え、大量に不動産を購入した結果であり、団塊の世代がマイホームを購入し終えた時点でバブル景気は終焉を迎える。
この生産人口は96年をピークに減少を続けており、それと同時に小売販売額の総額も縮小に転じている。
作者はこの「内需の縮小」の犯人は「地域間格差」ではないことを数字をあげて証明している。そして驚いたことに輸出が伸びても国内の景気には必ずしも結び付かないと結論付けている。事実、バブルのときに41兆円だった輸出は07年には80兆円にも上っている。だが、景気がいいと実感している人は少ない。国際経済競争の勝者である日本にこれほどの不景気をもたらせた犯人こそ、「人口の波」なのである。貿易で得た利益は一部の株主などを潤すだけである。
本書で触れているが、日本の相続の平均年齢は何と67歳。もう消費意欲はほとんどない年齢である。そして二十数年経つと、また高齢者が大金を相続する。日本の個人預金1400兆円のかなりの部分をもつ高齢者の上の方でぐるぐる回っているだけで、下の世代に降りてこない。
若い世代の所得をもっと増やさないと景気は良くならない。
本書は、生産年齢人口を増やすためにもっと主婦が仕事に就くべきであるとも書いている。
少なくとも移民による生産年齢人口の増加はコストがかかるため、望ましくない。