まあどうにかなるさ

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原発是か非か

2011-05-09 19:37:09 | 社会問題

大学のとき、授業でディベートを行った。テーマは『原発是か非か』是側と非側に別れ、上級生がジャッジをする。是非は本人の考えとは関係なく、半々に分けられる。
当時は中曽根政権下、世の中の流れは原発推進だった。
僕は非側の班だったけれども、その時はまだチェルノブイリ原発の事故前だったし、非側には不利だった。それでも、何とか引き分けに持ち込めることができた。当時は二酸化炭素は争点にならなかったし、その後の油田開発で新しい油田がこれほど見つかるとは思っていなかったので、争点は安全性と化石燃料の枯渇が主だった。
原発に関する限り是非論は慎重にした方がいい。反原発にしろ、推進にしろ、最初に是非を決めてしまうと、最後まで平行線をたどり、着地点がなかなかないように思う。核開発とリンクさせて感情的に反対したり、逆に原子力を聖域として、絶対推進を唱えたり、極端な意見からは建設的な話になりにくい。それぞれのメリットとリスクを全てあげて行き、評価をしてから結論は最後に出す方がいいのではないだろうか。
現在と大学生当時と違う点は自然エネルギーが実用化されていることと、二酸化炭素の排出が深刻な問題になっていること。
反原発の一番の理由は言うまでもなく事故による放射線放出のリスク。これは絶対にゼロにはならないと思う。確率論的に一万分の一まで対策をたてるのか、あるいはそれでも不十分で一億分の一まで確率を減らさないといけないのかということであって、決してゼロにはならない。当然確率を低くすればするほどコストはかかる。
航空機による自爆テロなどには、根本的な対策が立てられない。
そして、推進派にとって難問なのが核廃棄物の処理問題。一部は再処理してリサイクルされるが、地下に埋めて半永久的に管理し続けなければならない。
ランニングコストは原発が安いと言われているが、核廃棄物の処理コストや事故のときの補償コスト、廃炉にするのにもコストがかかる。
それらを含めると膨大なコストになる。
一方火力発電は依然化石燃料の枯渇問題はある。ウラニウムも限りある資源ではあるが、化石燃料に比べれば遥かに長い期間供給できる。
二酸化炭素の排出問題もあり、排出権を他国から莫大な金を払って購入しなければならないというコストの発生も予想される。
火力は発電所そのものは安全でも、採掘に危険が伴う。石炭の採掘現場では粉塵被害により毎年作業員が亡くなっている。
太陽光発電のランニングコストは今のところ原発の10倍。米国では2020年には太陽光発電と原発のコストを同じにすると発表されたが、雨の多い日本ではどうだろう?
土地の確保という問題もあり、何より太陽光発電は雇用を生み出さない。コスト削減にはパネルの寿命を大幅に向上させる必要がある。
風力発電は風向きがころころ変わる日本には不向きだし、低周波発生の問題もある。波力発電もコストがかかる。自然エネルギーは安定供給が出来ないので補助的な発電に留まるのではないだろうか。
地熱発電はもう少し見直していいと思う。日本は火山国なので、国産の資源と言える。安全性も高く、発電量も多いが、試掘を繰り返すため、膨大な初期コストがかかる。しかも、設置可能な地点の多くが国立公園内にあるため、なかなか許可が下りない。
現在7ヶ所が稼動し、国内電力供給量のわずか0.2パーセントに留まる。新規建設の予定もないという。
国内電力の3割を供給する原発の発電量にこれらの自然エネルギーの発電で置き換えることが果たして可能なのだろうか?
二酸化炭素の排出の問題がさらに深刻になった場合、火力の割合は減らさざるを得なくなり、ほんとうに原発なしで電力は供給できるだろうか。
そして、やがて化石燃料が枯渇したとき、自然エネルギーと水力だけで全電力を供給できるのか?
できるかもしれないし、できないかもしれない。
どんなに推進しても自然エネルギーで賄える電力は5パーセントまでという試算もある。
原発にもリスクはあるが、原発がない場合も、相当リスクを伴うのだ。
100年ほどのスパンで考えると核融合も有力なエネルギーであると思う。核融合は核分裂と違い、放射線は放出しないクリーンなエネルギーだが、超高温に耐える金属の開発など越えなければならないハードルは多い。
福島第一原発の事故後、現在稼動可能な原発の安全性の見直しは当然行わなければならないとしても、新規建設をしないかぎり、やがて原発は無くなっていく。耐用年数は小泉政権のとき60年に延長されたが、40年がいいところだろう。
ただ、今後は原発の新規建設は難しいと思う。
新規建設しないという事は、いずれなくなるという事になる。
もし、それまでに自然エネルギーによって十分な電力が賄えない場合は、原発の新規建設は必要になってくるかもしれない。
少し時間がかかっても、政府は電力供給のグランドデザインを示す必要はある。