同居していた義母が他界する2年ほど前のこと
義母の首に大きなできものができ、痛みもあるので病院へ連れて行った。
検査の結果、患部は意外に奥が深く、何と癌と診断された。だが、医師からは意外なことを告げられる。
痛みを感じる首の外にある部分は切除した方がいいが、高齢で癌の進行が極めて遅いため、内部は手を付けないでそのままにしましょうと…
内部は太い血管のすぐ横にあり、もし全摘出する場合は大手術になるということだった。
妻と二人で話し合い、医師の提案通りにすることにした。義母には癌ということは伏せておいた。
外の部分だけを切除してもらい、しばらくはガーゼを当て、痛みもあったので痛み止めを処方してもらった。
やがてガーゼが取れたが、内部にはまだ腫瘍が残っているため、恐らく違和感があったのだろうと思う。義母は、首の患部にオロナイン軟膏を毎日のように塗り始めたのである。
万能薬という頭があったのだろうか。
「そんなの塗っても仕方ないよ」そう言ったが、「何となく効くような気がして…」と義母は笑って答えた。
癌に対してオロナイン軟膏という余りにもカジュアルな治療法が可笑しかった。
気休めくらいにはなったのかもしれないが、オロナイン軟膏が癌に効いたとは思えない。しかし、首の癌はその後もずっと鳴りを潜めていてくれた。
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