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犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

オーストラリアの日本語教育

2022-10-10 18:33:54 | 言葉
 海外で、日本語学習者が最も多い国はオーストラリアです。絶対数ではなく、単位人口当たりの話ですが。

 人口10万人当たりの日本語学習者数は以下の通り。

1 オーストラリア    1621
2 韓国 1029
3 台湾 722
4 タイ 281
5 インドネシア 267
6 ベトナム 184
7 マレーシア 121
8 中国 72
9 米国 50
10 フィリピン 48

 なぜこれほど多いかというと、オーストラリアでは初等教育(小学校)、中等教育(中学・高校)で日本語が教えられているからです。

 学習者が多いことが自動的に学習熱が高いことを意味しない、ということは、以前書いたことがあります。

日本語学習熱

 国際交流基金の資料によれば、オーストラリアで日本語学習者が増加したのは1980年代から1990年代にかけて。日本経済が好調で、同じ環太平洋国家でもあることから日本語学習が奨励され、主に中等教育段階で急速に学習者数が増えました。

 1970年代末から1998年までの約20年間で、日本語学習者数は約40倍に増加し、「日本語教育の津波」といわれたそうです。

 2018年の学習者は、405,175人。

 オーストラリアの国語は英語ですから、学生は英語以外の言語を外国語として勉強します。

 1987年の『言語に関する国家政策』では、LOTE(英語以外の言語)教育の推進が謳われ、推進すべき言語として日本語を含む9言語が指定されました。

 LOTE教育はまず中等教育(中学・高校)で強化されましたが、90年代には初等教育へ拡大していきました。

 さらに、外国語の中でもアジアの言語教育が推進されるようになり、優先度の高いアジア言語として、中国語・日本語・インドネシア語・韓国語の4言語が、1996年から全国の初等教育に導入されました。

 2012年、『アジアの世紀における豪州』という白書が発表され、日本語は中国語、ヒンディー語、インドネシア語、韓国語とともに学校で学ぶべきアジアの5言語の一つに改めて位置付けられました。

 オーストラリアの初等・中等教育は州政府の所管で、外国語教育の状況も州によって差があります。

 ビクトリア州の場合、2020年の各言語の学習者数(小、中、高、語学学校)は、以下の通り。

1 中国語        91,412人    19.6%
2 イタリア語        82,141人    17.6%
3 日本語        80,398人    17.3%
4 インドネシア語    61,929人    13.3%
5 フランス語        53,670人    11.5%
6 手話            31,355人    6.7%
7 スペイン語        23,003人    4.9%
8 ドイツ語        19,050人    4.1%
9 ベトナム語        2,920人    0.6%
10アボリジニーの言語2,791人    0.6%

 日本語より中国語が多いのは、今世紀に入って中国が経済的に日本を凌駕しつつあることの表れでしょう。イタリア語が多いのはビクトリア州にイタリア系移民が多いからかもしれません。

 オーストラリアでは、日本語学習者のほとんどが初等・中等教育段階に集中していて、全学習者の約96%を占めるそうです。

 初等教育段階では、言語学習というより歌や工作などの文化体験に比重が置かれているそうです。

 初・中等教育段階(5~9年生)では、多くの州で外国語が必修化されますが、特に7~9年生では、外国語(日本語)学習にあまり興味を示さない生徒たちが増え、教師を悩ませているそうです。

 英語を母語とするオーストラリア人にとって、外国語学習は基本的に必要ないので、モチベーションは低いのでしょう。

 大学受験を控える10~12年生になると、外国語は選択科目になる州が多いそうです。

 日本では、英語が大学受験の重要科目なので、英語を熱心に勉強する生徒が多いですが、オーストラリアの大学入試では、外国語は高い点数が取りにくいので、外国語を大学入学科目として選ぶ生徒は少ないとのこと。

 大学で日本語を学習する学生は少ない。

 2018年以後、やや増加傾向にありますが、オーストラリアに留学している外国人(特に中国人)の履修者が多く、クラスの30~50%を留学生が占めることもあるそうです。

 大学での日本語学習の理由は、就職などの実利的な目的よりも、日本の文化、特にポップカルチャー(アニメ、マンガ、ドラマ、J-POPなど)に対する興味によるもの。

 民間の語学学校や、各地域のコミュニティ・カレッジで、成人向けの日本語講座も開かれています。ここでの学習動機は、主に趣味(伝統文化、ポップカルチャー、旅行など)や日本人の配偶者や家族、友人、同僚とのコミュニケーションだそうです。

 学校での日本語教育のために、日本人を補助教師として導入する制度もあります。

 ビクトリア州政府の教育訓練省が主催するATJP (Assistants to Teachers of Japanese Programme)もその一つ。

 9〜12か月のプログラムで、待遇は、週30.5 時間労働(うち 18~ 20 時間の授業)で給与は週に 120 ドル(約11000 円、1 オーストラリアドル=90 円)。ただし、三食付きホームステイが無料で提供されるとのこと。

 12か月働いたとして、年収は50万円ちょっと。オーストラリアは日本より物価が高いし、相当の持ち出しを覚悟しなければなりません。「ボランティア」と考えたほうがいいかも。

 日本のJETプログラムのALT(英語指導助手)と雲泥の差ですね。JETは初年度336万円で、渡航費用、住宅補助付きですから。

 この待遇で応募する人がいるというのが驚きです。

 きっと「仕事」というより、自分の英語の勉強のための自己投資と考えて応募する人が多いのでしょう。あるいは、「海外での経験」を履歴書に書きたい大学生とか。

 オーストラリア側も、そもそも生徒にとって外国語学習はそんなに重要じゃないので、お金はかけたくない。もし応募が少なくても問題はないのかもしれません。

 JETプログラムのALTの過剰な厚遇がいよいよ明らかになってきました。

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