年末、Hello Talkというアプリを通して、あるロシア人女性と知り合いました。
Hello Talkというのは、外国語を学習する者同士が、対象言語のネイティブスピーカーとチャットしながら、お互いに相手の言語を学ぶ、というアプリ。
私は数年前から利用していて、ミャンマー人、インドネシア人、フィリピン人などと会話を楽しんでいました。
今回知り合ったロシア人は、ラトビア在住。ラトビアは、もとソ連領で、ソ連が崩壊した1990年に独立したバルト三国の一つです。
アナスタシアさん(以下アナさん)は、独学で日本語を学習し、ラトビアに住むロシア人と結婚するためにラトビアに行き、今はラトビアで夫婦で暮らしているとのこと。
日本の文学に興味があり、日本語を学び始めたそうです。すでに相当な実力で、チャットでも主に日本語で対話しました。
犬「なんで日本語を学んでいるんですか」
アナ「日本語で本が読みたいからです」
犬「漫画ですか」
日本語学習者の学習動機は漫画やアニメであることが多いです。
アナ「漫画もいいですが、もっと難しい作品を読めるようになりたいです。三島由紀夫、芥川龍之介、太宰治などが好きです」
犬「ぼくはソルジェニーツィンが好きです」
アナ「うちに彼の作品がたくさんあります」
(本の表紙の画像が送られてきました)
犬「『ガン病棟』ですね? ロシアで三島由紀夫が翻訳されているんですか」
アナ「もちろんです。『仮面の告白』が最高でした。感動しました。『金閣寺』もとてもよかったです」
犬「三島、太宰、芥川はみな自殺しましたね。川端康成も」
アナ「はい。みんな気が狂っていたようです」
犬「(……)村上春樹も読みますか」
アナ「はい、彼の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』という作品をオーディオブックで聞いたこともあります。犬鍋さんは村上春樹の作品は好きですか」
犬「はい、彼の作品はたぶん全部読みました」
アナ「多崎つくるの話もご存知ですか」
犬「はい、読みました」
アナ「どうでしたか。多崎つくるの話は?」
犬「なかなか重い内容でしたね」
(実は、『1Q84』と『騎士団長殺し』という大作に挟まれた『多崎つくる…』は、あまり印象にない)
犬「オーディオブックは、日本語ですか、ロシア語ですか?」
アナ「ロシア語です。とても面白かったです。日本語でも聞いてみたいですが、今の日本語力じゃ聞き取れるかどうか」
犬「ラトビアに住んでいるロシア人と村上春樹の話をするのは不思議な気持ちです」
アナ「どうしてですか」
犬「日本で、漫画を読む人は多いけれど、文学を読む人は少なくなっていて、日本人と村上春樹の話をすることはほとんどありません。それにラトビアという国は、地図で見たことがあるだけで、今までまったく縁がなかったので、不思議な感じがするのです」
アナ「なるほど! 実はわたしも三島由紀夫すら知らない日本人に出会ったことがあります」
(三島由紀夫は難易度高いなあ)
犬「私は昔、韓国に住んでいました。ロシアとラトビアの関係は、日本と韓国の関係に似ているのではないですか」
アナ「そうですね。ここにはロシア人が好きじゃない人がたくさんいます。旧ソ連に占領されたっていう思いが強いんです」
犬「ロシア人は、ラトビアに住みにくいということはありませんか」
アナ「ラトビア語がわかる人なら大丈夫です。そうじゃないと住みにくいですね」
かつてソ連に占領され、独立戦争をすることなく、ソ連の崩壊によって独立したラトビア。
日本に併合され、独立戦争なしに、日本の敗戦によって独立した韓国と似ているのかもしれません。ちょっと、ラトビアの歴史を調べてみようかと思いました。
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