今度は新大阪の話です。
ファミマがサークルKサンクスと合併したあおりか、最寄りのファミマが閉店し、しばらく空き家になっていましたが、ようやく借り手がつき、少し前に新しい「カフェダイニング」がオープンしました。
開店の翌週、早速行ってきました。
もとのコンビニは小さかったのに、今度の店は驚くほど広い。コンビニのバックヤード(倉庫)が広かったんでしょう。
テーブル席がメインで30席ぐらいあるうえに、カウンターが5席ほどある。一人だったのでカウンターに座りました。
「どんなメニューがあるの?」
カウンターの中には女性と男性のバーテンダーが一人ずつ。
「いちおう地中海料理です」
と女性バーテンダー。
「地中海か」
「店のデザインポリシーはモルディブです」
「モルディブ? モルディブは地中海じゃないでしょう?」
「えっ、そうでしたっけ?」
「モルディブの場所、知ってる?」
「たしか…」と、今度は男性が、
「ペルーの近くですよね」
「ペルー! それは南米だよ。モルディブはインド洋」
「すいません。地理が苦手なもんで」
店を見まわしてみると、淡いブルーを基調として明るくまとめられている。南国の高級リゾートをイメージしたらしい。プロのデザイナーによる設計なんだそうです。
今年の1月、次女がモルディブであげた二人っきりの結婚式の写真を思い出しました。
店の正面には、日本からモルディブまでの、東南アジアを中心をした地図も飾られている。モルディブと表示されている場所がインドのすぐ下で、スリランカがあるあたりになっているのが気になりますが。デザイナーも地理が苦手なのかもしれません。
ここでメニューに目をやると、確かにイタリアンっぽい料理が多いなか、タンドリーチキンとか、グリーンカレーとか、地中海とは関係なさそうなメニューもちらほら。
「料理は、ミシュランの星つきのレストランのシェフが…」
「作ってるの!?」
「いえ、指導してくれたんだそうです」
私はパテ・ド・カンパーニュ(田舎風パテ)というのを頼んでみました。でてきた一品は確かにおしゃれ。白い大皿の中央にパテが上品に配置され、褐色のソースが、子どもの落書きのように不規則に散らされています。
「このお肉は何?」
「あ、ちょっと聞いてきます」
鴨のような香りがしました。
ところが厨房から戻ってきた女性の答えは、
「豚肉だそうです」
「豚と何? メニューの説明には「数種類の肉を合わせ…」って書いてあるよ」
「でも、豚肉って言ってました」
「ふーん、きっと種類の違う豚肉を使ってるんだね」
「はい、たぶん!」
笑顔がかわいかったのでそれ以上追及しないことに。
生ビールを飲み終えて、ウイスキーに進みます。スコッチの種類が少なく、シングルモルトは2~3種類。グレンフィディックを頼みました。
「ストレートで」
「ストレート…」
グラス選びで迷っている様子。オンザロック用の大きなグラスを出してきたので、ストレートグラスはあっちだよ、と教えてあげます。
すると、こんどは入れる量で迷っている。
「この仕事、初めてなの?」
「はい、一通り研修は受けたんですけど」
「お酒は好き?」
「いえ、ちょっと苦手で…」
「…」
この店はチェーン店ではなく、オープンに際して全員新しく雇ったらしい。なので、経験者の指導が不足しているんだと思います。
店員さんは不慣れで心もとないけれど、店の雰囲気もいいし、感じはいいし、値段もそれほど高くないので、通うことになりそうです。
犬鍋さんは優しいので、いろいろな不手際を笑って許せるけど、大阪でこれだと突っ込まれますよね。
大阪の人も優しい人が多いけど、突っ込みどころでは突っ込むというのが、私の経験でした。
そこを突っ込んでみたら、
「不思議ですねえ」
と言いながら、しばらくメニューを眺めて、
「写真をみると、夜のメニューのほうが一切れ多いですね」
と返されました。