大学授業料の「出世払い」を導入する案があるそうだ・・・
制度の概要をよくよく検証していないので不用意な発言はできないのだが、対象者に対する世帯所得制限も現行の有利子奨学金と同じ。ということで、現在の育英会の奨学金との違いがよくわからない。
確かに、返済金額は「課税所得の9%」となっているので、所得に応じて返済ということになるのだろう。所得の少ない人や所得のない人は毎月2,000円返済していけばよいということなのだろうか?
もし民間の金融機関で、教育ローンを借りた場合の金利からすれば、毎月2,000円では元本どころか、金利すら返済できない。ということは、この制度は、「金利はかかならい制度」ということなのか?立て替えた金額は、国民の税金から拠出されるため、本来であれば、適切な金利を請求すべきであるが、それは「国の制度」として国民負担とするのだろうか?
また、「出世払い」ということなのだが、死ぬまでに返済できなかった場合はどうなるのだろう。所得がなくて、月々2,000円=年額24,000円だと、金利を無視した場合でも、100年経っても240万円しか返済できない。大卒後100年生きる人は、現状の医療水準ではまずいない。すなわち、もし、保証人という制度があったとしても、保証人も死んでいるわけだから、満額返済できない恐れが現在以上に高くなる。なんせ、「標準的な収入の正規雇用者の場合、国公立大で約12年、私大で約20年で返済が完了すると見込んでいる」そうだから。
あるいは、日本で大学卒業後、海外に行く場合はどうなるのだろう?海外の企業に勤務した場合、日本での住民税課税所得は発生しないので「2,000円」でいいのだろうか?あるいは、本人が悪意の下、払わなければ、その金額は焦げ付いてしまうのだろうか?
もう一つ、「所得」と連動して「返済額」が変更される制度。毎年、「国の機関」と「利用者」が繋がっていなければいけないこととなる。「所在不明」になるリスクもあるが、それ以上に、「事務コスト」はどうするのだろう?書類を郵送し、残高を把握し、収納するコスト。有利子奨学金なら、その金利の中に事務コストを織り込むことができるだろうが、金利を取るとするなら、月々2,000円程度では、借入元本が減るどころか増加し続けてしまう。
「出世払い」とすることは、意欲があるにもかかわらず、経済面で大学を諦めていた人には大きな福音となる。一方で、大学にいかなくていい人まで、「出世払いだから、今はお金のことは気にすることないや」と安易に入学を決定することにもなりかねない。大学サイドも、とりあえず学生を入学させればお金が支払われないリスクがなくなるのだから、経営努力への取り組みも減速するのではないだろうか・・・
「出世払い」=「出世しなければ踏み倒せる」という余地がある制度なら、それは、国民に負担を背負わせるものではないだろうか。その点、はっきりさせて、恒久的な制度を考えてほしいと願っている。
>自民党の教育再生実行本部(本部長・馳浩元文部科学相)は17日、大学などの
>授業料を在学中は国が立て替え、卒業後に所得に応じて返済する「出世払い」
>制度の導入を盛り込んだ提言案をまとめた。
>対象は世帯年収が約1100万円未満の学生とし、毎月の返済額を住民税の課税
>所得の9%、最低2000円と設定。経済財政運営の基本指針「骨太の方針」への
>反映を目指し、近く安倍晋三首相に提言する。
>提言案によると、入学金約28万円の他、国公立大の場合、授業料約54万円を国が
>肩代わりする。制度導入当初の運営費約9800億円の財源として財政投融資(財投)
>などの活用を提案している。