「あけぼの」という和菓子屋があります。
多くの店舗を出しているので、目にされた方も多いと思います。その特徴のある「あけぼの」というロゴを書いたのが社長の次女の「智ちゃん」。私より1年早く生まれている方を「智ちゃん」と呼ぶのは失礼に当たるのかも知れません。しかし、この画像の本にも「奇跡の人智ちゃん」と記されているのでご容赦願いたいと思います。
この本は聖心会のシスター鈴木秀子氏の書かれた本です。ちょうど、死生学やグリーフケアを学んでいたときにシスター鈴木の書かれた本を読み始めたのですが、この本ではダウン症として生まれてきた智ちゃんが紹介されています。
>「終戦後、新しい日本の夜明けを願う気持ちをこめて名付けた"曙"。1991年に曙の新しいロゴを作り
>ました。娘の智子が書いたものです。ダウン症で背が小さいですが、仕事が大好き。誰かが悲しんだり
>淋しがっていると必ず一緒にいてくれ、自分に正直に生きています。
>1994年に、今は亡き妻・澄子と町田市の忠生(ただお)に障害者が働けるお菓子工場を作りました。
>今も工場では、障害者と健常者が一緒に働き、お菓子を作っています。私もたまに工場で一緒にお菓子を
>作ります。
>智子が生まれた時、父は“智子を会社の基準にお菓子作りを しなさい”と言いました。働く人である前に、
>一人ひとりを大切な人間として見ること。自分らしさを発揮し、一生懸命働くことに人の役に立ち、自分の
>人生の充実感を味わえるような会社にしたいと思いました
和菓子の「あけぼの」にこのような背景があったとは知らなかったし、そもそも「あけぼの」という、それこそ、どこぞの書道家が書いたのではないかと思っていたロゴが、この本の主人公が書いたものと知り驚いています。
「ダウン症の智ちゃんが書いた」ということではなく、武蔵小山の商店街の「あけぼの」の前を通るたびに注意を引かれたロゴを描いた「智ちゃん」に、今、私が辿りつくことができたことに「運命」を感じ、驚いているわけです。
奈良にいた時も、目黒にいた時も、ダウン症の子どもを持つ方々と普通に交流を持っていました。「療育」ということで、自閉症やダウン症の子どもたちと一緒に夏休みを山で過ごすのが毎年恒例の行事でした。
世の中、健常者の方々だけで成り立ってはいません。障害者の方々もこの世界の主要な構成者であり無視することはできないのです。私の場合、障害者の方々と一緒に過ごす時間をたくさんもてたことと、大学や大学院で障害児・者について深く学習できたことが、偏見を払拭させてくれたのだと感謝しています。
「あけぼの」という企業が、障害者と健常者が一緒に働き、お菓子を作っている企業なんだと知ることができたこともうれしいのですが、それ以上に、この本にめぐりあえたことが私にとって奇跡だなとしみじみと思っております。