閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

うぐいす

2011-03-10 16:08:05 | 日々

数日前からようやくウグイスが鳴き始めた。
遅咲きの八重の紅梅もちょうど見ごろ。

「梅に鶯」というけれど、それは、ウグイスが梅の枝にとまって
ホーホケキョと鳴く、という意味ではないだろう。
まだ冷たい風の中で、いち早く咲く梅は春の前ぶれ。
その花の色をめで、香りをよろこび、三寒四温に足踏みし、
寒の戻りに落胆し、名残の雪に気を揉みながら、
ウグイスの初音はまだか、ほんとうの春はまだかと耳を澄ます。
断熱性のきわめて低い、風通しのよすぎる日本家屋で、
小さな火鉢を抱え、重ね着して冬をすごす昔の人びとは、
そんなふうに全身で春を待ちこがれていたに違いない。

実際に梅の花をおとずれる鳥はメジロで、
ウグイスはやぶの中からほとんど出てこず、
自慢の声だけを聞かせてくれる。
しかし人目につくメジロのほうが
いわゆる「うぐいす色」をしているから、
なんとなくイメージ的にややこしい。
さらにややこしくしているのが花札の絵かもしれない。
梅の枝に、色はメジロ、形はウグイスにも見えるような、
あいまいなデザインの鳥の姿が描いてある。
それを「昔の人はメジロとウグイスを混同していた」などと
決めつけて言うのは間違いで、現代の人だって
大半はハトとカラスの区別しかできないのである。

さて、今年のウグイスの声だけれど、
どうも去年までとは違う方向から聞こえてくる。
しかも、節回しが、ここ数年聞き慣れたものとは明らかに異なる。
「あれ、ウグイス?」
「・・だと思うけど、なんか変だね」
下手だとか、まだ調子が出ない、というのではない。
むしろ上手すぎる。
というか、妙に技巧的である。
装飾音いっぱいの複雑なフレーズからこちょこちょと始めて、
「ホケキョ」なんて決まり文句はひとことも言わない。

テリトリーに変更があったのか。
それとも世代交代がおこなわれたのか。
シンプルな先代のバージョンが懐かしくもあるけれど、
これはこれで、1シーズン繰り返し聞いていれば、
いつのまにか耳になじんでしまうだろう。


(あ、昨日の椎茸はね、ちゃんと椎茸でしたので、
ご心配なく) 

 

 

コメント
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