閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

かっこよさについて・その2

2010-12-23 14:02:39 | Q&A

つづきです。
サンゴロウをかっこよく描くためのポイントについて。
描いた人の回答。


では、実際の絵作りを例にお話しします。

例-1
たとえば、サンゴロウが去っていくシーンの文章があったとします。


画面中央に描いてしまうと、あたりまえすぎて、
なんでもありません。



端に寄せてみます。
ちょっと変ですが、まだ、どうということもないです。



影を描いてみます。
白地に広がりが出て、前面の余白に空気感が出てきます。
サンゴロウの後ろにも光が感じられるようになってきましたね。

このように、ただ文章に書いてあることの表面を描写するのではなく、
画面の中の白黒の世界を利用して、構図を考えたり、
線の集積で白から黒までの微妙な色を出したり、
光と影のコントラストを強調したり、
肌合いや質感を感じやすい表現を工夫したり……
読者がサンゴロウの存在する世界に入りやすくするために
いろいろなことをするわけです。

今はバックはわざと描きませんでしたが、
人ごみ(猫ごみ?)にサンゴロウが消えていく絵だって有りなのです。
(これは映画「羊たちの沈黙」のラストですね。)


例-2
サンゴロウの顔です。


右側を白のままにしてみました


上と同じですが、目の色を変えてみました。


さらに白でとばしてみました。


バックの斜線だけです。


目も鼻も意図的につぶしてみました。


目だけ。

というふうに、白と黒の色だけなのですが、ずいぶん表情が変わるでしょう。

どれが正しいということではなく、いろいろ自由な表現をすることで、
サンゴロウのデリケートで感情豊かなところが「格好よく」見えてきます。

マンガ的な表現ではこうなってしまいます。

主人公がネコ(=動物)であるところ、
それをどう表現するか・・も関係あるのでしょう。
本来、自然界の動物は、無駄が無く、造形的に美しい姿をしています。
ところが、今の絵本や童話の世界では、動物が出てくると、
みな、お人形というのか、ぬいぐるみというのか、
丸描いて点々の、単なる記号でしかありません。

サンゴロウは、おおもとでいえば、
古代エジプトのネコの彫像のイメージです。



野生本来の美しさ、生命本来の美しさを表現しようとしているのだから
格好いいのは当然なのです。

…すごいですねえ。
言っちゃいましたねえ。



《閑猫追記》

上の絵は画用紙のきれっぱしにちょこちょこっと描いてもらったのを
スキャナで拾ったので、縮小とかうまくなくてすみません。
解説は、当初はこれの3倍くらい長くて難しかった!(笑)

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カピバラ温泉

2010-12-23 08:40:49 | 日々

TVを見たら、カピバラが「ゆず湯」に入っていた。
ああまたこの季節になったんだなあ、としみじみ眺める。
カピバラが県内ニュースのトップにくるところがすごい。
これと、ワニの背中をデッキブラシでごしごし洗うところと、
サンタ服のダイバーが水族館のサメに餌をやるところが、
ローカルな師走の風物詩の定番なのである。

それにしても、カピバラという動物は、
じつに温泉向きの顔をしている。
温泉に浸かってぼーっとくつろいでいるような表情を、
だいたいどの子も、いつでも、どこにいても、している。
ほんとうは、いろいろ悩みなどもあるのかもしれないが、
顔に出ないタイプの人って、損なのか得なのか。
などと考える。
そうだ、うちのお風呂にも入れなきゃ、ゆず。


スーパーに鏡餅が大量に並んでいた。
鏡餅といえばもうパックされたものがあたりまえの時代だ。
てのひらサイズの鏡餅のてっぺんに、みかんのかわりに
ハムスターがちんまり乗っているのがある。
え? とよくよく見れば、ハムスターではなく、うさぎだ。
でも、ちょうど小さいハムスターほどの小ささだし、
(「ロボロフスキー」と言おうとすると、
どうしても「スワロフスキー」と言いそうになる閑猫)
造形上の都合なのだろうか、耳が短くて丸っこいため、
来年が卯年だと思い出さなければ、とてもうさぎには見えない。
再来年は何が乗っているのやら。

どうやら鏡餅はすでに自分が「餅」であったことを忘れ、
「招福開運グッズ」の道をまっしぐらに突き進んでいるらしい。
その隣を見れば、なんと招き猫の乗った鏡餅もあり、
おめでたそうな雰囲気は良いけれど・・
そもそも猫が正月から餅の上に座ったりして許されるのか。

ま、いいか。
お正月ですから、ね。

 

ところで、
先日、音夢鈴さんちで見かけた
「とある塾にて実際に出された問題@小2」が
たいそう面白かったので、こちらでもご紹介させてください。
それぞれの「絵」をイメージしつつどうぞ。

もんだい
次のことわざの中でひとつだけ、まちがっているものがあります。
それはなんでしょう。

1 ぶたにしんじゅ
2 うまのみみにねんぶつ
3 ねこにこんばんわ

 

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かっこよさについて・その1

2010-12-22 15:39:38 | Q&A

◆はちさんからのご質問。

>えっと・・
>サンゴロウはどうしてあんなに格好いいんでしょうか・・?
>すみません、ふざけている訳ではないのですが(汗)
>かっこよすぎてクールすぎて、最近、寝ても覚めても
>サンゴロウのことが頭から離れません・・。
>かっこよく書く(描く)ためのポイントなどあれば是非お伺いしたいです。


そ、そうですか? 
ありがとうございます。しかし、
寝ても覚めても・・って・・
あのー、だいじょうぶでしょうか?

これはサンゴロウとは別の本の話ですが、ある方に、
「この人(=登場人物)に出会ってしまったせいで、
わたし、いまだに結婚できないんですよね」
と真顔で言われたことがありまして・・
どーしよう?
と、かなり本気で責任を感じましたですね。
その後、無事ご結婚され、ママにもなられたことを知り、
心からほっと安堵したことでした。


サンゴロウに限らず、登場人物というものは、
もちろん作者が、考えて、書くんですけども、
わたしの場合、その「考える」過程が、自分で見えていません。
バックグラウンドで無意識にやっているのではないかと。
夢遊病の人が眠りながら歩くみたいに、
どうやら寝ている間にも「考え」は進行しているらしく・・。

しかし、頭のどこにそんな「舞台裏」とか「バックヤード」とか
「地下室」とか「屋根裏部屋」的な作業スペースがあるのか、
そのメカニズムはどのようになっているのか、
ひょっとして屋敷妖精みたいな連中が住み込んでいて
夜中にこそこそ働いているんじゃないか、とか、
そういうことは、よくわかりません。

このあいだ『スターズ』へのご質問に、
メンバーは「作った」というふうに書きましたが、
それも正確に言えば、制作の過程は一切不明で、
「ふと見たら」あるいは「あたりを探したら」「いた」。
いるってことは、まあたぶん自分で作ったんだろうな、と。

つまりそれは、設計して部品そろえてボディ作ってエンジン作って
組み立ててガソリンいれたら動く、ようなものじゃなくて、

水たまりに、いつのまにかまぎれこんでいる
ちっちゃなプランクトン、に近いものかもしれません。
それが、知らないうちに、細胞分裂を繰り返して成長していく。
ある程度の大きさになったとき、ふと「いる」ことに気づく。
おや? どれどれ、と、じっと見る。
見れば見るほど、その姿は生き生きとして鮮明になっていく。
やがて、歩いたり、しゃべったりもするようになる。
ヒトなのか、猫なのか。
猫ならば、どんな色の猫か。
どんな服を着て、どんな靴をはいているか(はいていないか)。
何が口癖で、食べ物は何が好きか。
それを観察しながら、書いていく。
かっこいいなあと思えば、できるだけそのように書くし、
おバカだなあと思えば、そう書く。
それだけ。

えー、それだけ? ほんとに?

で、ご質問の最初の「どうして格好いいか」に戻りますと、
それは、単純に、

猫だから!

じゃないでしょうか。
猫って、人間よりはるかに格好いいと、わたしは思います。
そして人間はどうがんばったって猫にはなれないんだから、
これはもう、一方的にあこがれるしかないじゃないか。

というあたりで、「描く人」にバトンタッチ。
はい。

(この項、次回につづく)

 

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あぶないジュリエット

2010-12-22 09:12:19 | 日々

2階ベランダにいるのをみつけ、
庭から声をかけたところ、
何か勘違いしたらしく。

そこからは降りられなーい!
降りるなーっ!

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ピザの作り方について

2010-12-21 14:00:40 | Q&A

このところ、話題がどんどんマニアックな方向に傾きがちで、
他のお客様には何のことやらで申し訳ありません。
サンゴロウだけ別サイトを作ったらいいのかもしれませんが、
現在3つ(ここと、Mの研究所本館と別館)持っているため、
なかなかそれ以上は手が回らず…。

◆kiraraさんから。

>『三日月ジョリー』に出てくる小エビのピザと
>小エビのクッキーの作り方を教えて下さい。
 
そうそう、美味しそうですよね、あれ。
どうやって作るんでしょう。


では、小エビのピザの作り方。

新鮮なエビを用意し、殻をむかずに背ワタをとります。
鍋に塩水(できれば海水)を煮立て、エビを投入します。
湯の量は、ひたひたくらいでじゅうぶんです。
このとき香りづけにタイムの小枝を一緒に入れます。
殻の色が変わったら、すぐに火を止め、
ふたをして、そのまま余熱で中まで火を通します。
自然に冷めたら、とりだして殻をむきます。
(むいてから茹でるのではありません。ここがポイント)

ピザ生地に、オリーブ油をうすく塗り、
岩塩、黒胡椒、バジル、オレガノをぱらぱらと振り、
薄くスライスした玉ねぎ、きのこ、ピーマン、生トマトをのせ、
(いわゆる「ピザソース」は使いません。ここもポイント)
茹でたエビと、ピザ用チーズを全体に散らし、
強火のオーブンでチーズがこんがりするまで焼けば、
できあがり。

以上は、チコリ通りの石窯ピザ屋のレシピ。

三日月島特産の小エビは、いわゆる「桜エビ」ではなく、
一口でぱくっと食べられるくらいのものをいいます。
殻つきエビの小さめのものなら何でも使えますが、
大きすぎたら、茹でたあと適当に切ってもいいでしょう。
加熱時間はエビのサイズによって調節を。
ピザ生地は店によっていろいろです。サラの町では
直径18センチくらいの小ぶりで薄いタイプが主流です。


つぎに、小エビのクッキーの作り方。

えーと…
これは、作者わかりません。
ハナおばあさんに聞かないと…(笑)

クッキーのほうは、干した桜エビを使うようです。
(中華の干しエビは、味が強すぎるので不可)
いちど、読者の方が試作して送ってくださったことがあり、
それはバターの入ったふつうに甘いクッキーをベースにして、
桜エビをちらちらっとアクセントにしたものでした。
ミスマッチと思われそうですが、とっても美味しかったですよ。
ほら、鰻パイなんていうお菓子もあることだし…(違うか?)
甘さの加減とエビの量のバランスが工夫のしどころかも。
どなたか、自信作ができたら、ぜひレシピを教えてください。

 
 
 

 

ところで、
「サンゴロウが結婚する話とか」につきましては、
大きく挙手1票、小さく1票、断固反対が4票でした。
べつにアンケートで決めようというのではありませんので、
どうぞご心配なく。
(そもそも、誰と、なの?)

 

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「黒ねこサンゴロウ」について・その2

2010-12-20 13:11:31 | Q&A

◆ミサキさんから。

>サンゴロウシリーズで一番難産だったのはどのお話でしょうか?
>(ストーリーがうまく進まない、取材に時間がかかった、
>新キャラクターが難しかった…など)。

どの巻も、書き始めたらするすると書けてしまいました。
取材は、基本的に、しません。
帆船の操縦法と太陽電池についてはお勉強しました。
キャラクターはだいたみんな勝手に「出てきて」くれるし…

『青いジョーカー』は、最初は敵役が違うキャラクターで、
いったん書き上げたのですが、ぜんぶ捨ててしまいました。
でも、書き直しのほうが早かったです。
『光のカケラ』は、書こうと思いついたときに、
「三日月島にクリスマスはあるのか?」
という問題にぶつかって、あっちこっち聞いてまわったので、
すこしだけ余計に時間がかかりました。

じつは、大変なのは、書いたあと「本にする」ことのほうなので。
前にも書いたように、これは自分ひとりではできません。
たとえば書くのにひと月かかったとしても、
それが出版されるまでには何年もかかったりしますから、
書くときの苦労なんて、ぜーんぜん、どうってことはない。
(キッパリ)


>それから、10巻の中でお蔵入りになったギャグテイストのイラスト、
>というのはどのようなものだったのでしょうか?
>ファンとしては気になるところです!

それはもう存在してないので(ないよね?)お見せできません。
『黒い海賊船』の123ページに入るはずだったもの、
とだけ申し上げておきます。
あとは各自ご想像…しないで。

 

◆りこさんから。

>続編はもう出ないのですか?
>できたら書いて欲しいです‥‥
>あの後クルミとナギヒコの関係はいったいどうなったのか、
>サンゴロウは結婚したのか、やまねこ族の連中はその後どうなったのか‥‥
>知りたいです。

本来は、最初の5巻で打ち切りになるところでした。
ここまで続けさせてもらえただけでもありがたいことで、
この上なく幸運だったと思っています。
10巻+5巻って、区切りのいいところだし、
「続きはないの?」と言っていただけるうちが「華」
ではないかなあ…。
でも、続編のご要望は、作者には何よりもうれしいです。

ドルフィンの5冊を通して、ようやくサンゴロウを書ききれた、
というのが本音かもしれません。
『旅のはじまり』のラストで、別れて歩き出すのはケンのほうでした。
ふりかえったケンに、サンゴロウが片手をあげてくれました。
『光のカケラ』では、サンゴロウのほうが歩いていく。
影を連れて、「ふりかえらない」で。
見送ったのはテールではなく作者自身かもしれず。

テール君は、ほっといてもちゃんとやっていきそうだし、
書くとしたら、またちょっと場所と角度をずらして、
マーレ・ルッシェ@真珠島など書いてみたかったりもするけれど。

(サンゴロウが結婚する話とか、
年とってカジキじいさんみたいになってる続編を、
読みたいっていう人は、手を挙げて~)

 
 
 


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名前について

2010-12-19 14:14:41 | Q&A

◆白鳥さんから。

>個人的には、一回も登場しませんが、イカマルの父親が好きです。
>「おやじとけんかしちゃって」
>「心臓が悪くて」(だったかな?)
>どういう人物かは書かれないのに、行間にイカマルに与える影響や
>その後どうなったんだろう?と思わせる、そんな存在。
>お名前はありますか?

登場しない人にまで注目してくださってありがとうございます。
えーと、すみません、名前まで考えてませんでした。
イカマルのお父さんだから…タコハチさん…ではないわねえ。

うみねこ族は、みんな名前に海のものがつく。
と、自分で決めたルールが自分の首を絞める結果になり、
途中から名前を考えるのがけっこう大変になりました。
(カツオ君とかワカメちゃんとか使えませんしね)
やまねこ族は植物系にしてみたら、そっちも意外と大変でした。
それで、三日月島は、なんでもありにしましたが、
結局「ナミちゃん」は2度使うことになってしまい…。

だいたい、わたしは、命名はあまり得意ではありません。
誰かいい名前つけてくれないかなー、といつも思っています。
役柄にふさわしい名前、という以前に、
「他のイメージのついてこない名前」を探すのが難しいの。
イカマルの先輩に「エビゾウさん」がいるんですが、
いまだったらその名前はちょっと…(笑)

流れ者のサンゴロウには最初から苗字があるのに、
家柄の良さそうなナギヒコ先生にはありません。
テールにもないのに、リンさんやマーレにはあったりする。
どういうわけか。
しかも、マーレって、苗字なのか名前なのかよくわからない。
どっちなの。
(って、ここで自分に聞いてたってしかたないですねー)

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音楽について

2010-12-18 10:47:13 | Q&A

◆鍵盤屋さんより。

>『星とトランペット』など一連の「楽器登場作品」で
>使われている音楽にはモデル(既存音楽)さんがいますか?
>それともそのころから「お手製音楽」が脳内再生されていたのでしょうか?

うわぁ。
プロの鍵盤屋さんからのご質問なので、緊張します…。

『星とトランペット』という短編集は、のちに追加した3篇を除くと、
だいたい高校から大学在学中に書いたものです。
大学というのが、じつは幼児教育の分野だったので、
まず入試の二次選考にピアノとお歌の実技がありまして…

うちにはピアノがなかったし、わたしは電子オルガンを
ちょこっと習っただけで、ピアノは全然弾けなかったんですね。
それで、みんなが受験勉強の追い込みで必死になっている時期に、
音楽教室の空き部屋を借りてピアノの「自習」をさせてもらっていました。
音楽科じゃないので、バイエル程度でOKなんですけど、
どうせならソナチネくらい弾けないかなと…(←ここが意味不明)

で、大学に入りましたら、全員ピアノが必修で、
2~3週間に一度ですが個人レッスンもあるし、
ピアノの他にも声楽とか、和声学とか、器楽合奏とか、
えーっとオルフ・シュールベルク理論とか?(←忘れました)
練習室は出入り自由で、1日中弾いてても文句言われないという、
とても恵まれた環境だったわけです。
そこで、講義の空き時間があると、図書館などに行くかわりに、
練習室にもぐりこんでピアノを弾き散らかし、
飽きるとピアノのふたの上で何かこそこそ書いてたり…。

たぶん、本格的に書いて投稿など始めた時期と、
ピアノの練習をしていた時期がちょうど重なったため、
文字と音符が頭の中でごちゃ混ぜになってしまい、
切り離して考えられなくなった、のでしょう。

ですから、作品に出てくる音楽にモデルさんがいたとしても、
それは具体的に誰の何という曲ではなくて、
「音楽」という漠然としたカテゴリーに属するイメージにすぎません。
つまり文字列の中に「音符マーク」が混ぜてあるような感じ。
木苺通信の「秋のソナタ」にしても、実際に頭の中で鳴るのは
最初の1小節くらい(しかも右手だけ)なので…
誰か続きを弾いてください(笑)

そのへんは、船に15分乗れば確実に酔っちゃうような人が
船乗り猫さんの話を書きたがるのと同じ原理かもしれない。
つまり、届かないものだからこそ、あこがれることができる。
現実に手にできないものを、想像で作り上げようとする。
これほど強力な「動機」はありません。


あ、いま思い出した!
それよりずっとずーっと前、小学生のときに、一度だけ、
コンサートに連れて行ってもらったことがあります。
夏の夜でした。
遊園地内の野外音楽堂みたいなところ。
オーケストラ…だったと思うけれど、
曲目は何だったかひとつも覚えていません。
ただ、金色の楽器が照明にきらきら光って、とてもきれいでした。
帰り道、空には天の川がいっぱいにひろがっていて。

「星とトランペット」という400字詰わずか13枚のおはなしは、
そのときのことを元にしてつくったものです。
どう考えても、書くまでに、10年くらいは間があるわけで。
なんというか、じつに「物持ちの良い」子どもでありました。

 
 
 

 

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「スターズ」について

2010-12-17 09:57:33 | Q&A

◆大学院生さんからのご質問。
(…このお名前でいいのかな? やみ○○研究家さんじゃなく?)

>『スターズ』のメンバーにはモデルはいますか?
>またモデルとなった「街」はありますか?

それぞれ複数のモデルはいたかもしれないですが、
(おもに風貌や服装の描写の参考として)
具体的に誰ということは思い出せないので、
ほとんどは「作った」のではないかと。
ショーは『シナモン・トリー』のバジルの別バージョンですね。
こういうヒトは、ときどき勝手に出現するので、作る手間がいらない…(笑)

大学の4年間、東京の端から端まで地下鉄とJRで通学していたので、
東西線、丸の内線、銀座線あたりのイメージが強くあります。
当時の銀座線はとても古くって、駅に入る直前にガチャガチャと揺れて、
電流?か何かの切り替えのため一瞬車内灯が消えるんですよ。
丸ノ内線も、カーブで傾くのと音がうるさいのとで有名だったな。
いまは地下鉄もずいぶん静かで明るくなりました。

ある日、地下鉄に、お母さんと4歳くらいの男の子が乗ってきました。
座席につくと、男の子はすぐに靴を脱いで窓の外を見ようとしました。
「外なんか真っ暗で、なんにも見えないでしょ」
お母さんがたしなめると、男の子はふりむいてキッパリと答えました。
「『ちか』が見えるよ!」って。

そうか。何も見えないんじゃない。
地下鉄に乗ると、地下が見えるんだ。
見ようと思う人にだけは。

そのことが、当時のわたしにはものすごく貴重な発見に思え、
以来ずっと頭の片隅にしまってありました。
『スターズ』を書いたのは、それから20年くらいあとのこと。

1章の魔女の家は、かつて神戸市内に実在したもの。
2章冒頭の地下鉄の階段は、丸ノ内線の新宿御苑前駅。
階段をあがったところはたぶんJR総武線の本八幡駅。
スターズのビルはJR山手線の五反田駅前の雑居ビル。
でも実際にあったのは進学教室じゃなくて音楽教室!
…というふうに、いろいろつぎはぎで出来ています。

(ほら、ねー、聞かれると、聞かれてないことまでしゃべる人…)

スターズ
竹下文子/作 小林敏也/画
パロル舎 1998年

 

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目の色について

2010-12-17 09:48:31 | Q&A

ご質問リクエスト、別名「舞台裏見学ツアー」(笑)
つづきます。

◆浮草さんから。

>絵を描いた方に質問です。
>サンゴロウの目は「みどり」と本文ではなっていますが、
>表紙のカラーではいつも片目ずつ青と黄色(コハク色)ですよね。

  

(このご質問は、このあとサンゴロウ最終巻のネタバレありなので
未読の方はご注意くださいませ)

 


 

>サンゴロウがうみねこ族とやまねこ族の混血だったという事実は
>最終巻で出てきますが、最初からそういう設定で絵を描いていらしたのでしょうか?
>それとも絵からそういう設定が生まれたのでしょうか?

はい、描いた人、どうぞっ。


 絵というのは、どこかにピントを合わせて見ているので、
 一つの画面で、同じ色というものはありません。
 それと関係あるかわかりませんが、
 なぜか、サンゴロウの目は、このように描きたくなってしまうのです。

 

…ということで、つまり、描いた人にもわからんと(笑)

目の色についてのご質問はよくいただきます。
片目ずつ違う、いわゆるオッドアイについては、
以前サンゴロウのカテゴリーでも書いたとおりです。(→こちら

猫の飼い主さんはよくご存じと思いますが、
もともと猫の目は、光や環境で色が違ってみえます。
うちの黒猫ズは、珊瑚がイエロー系、真鈴がグリーン系ですが、
(うーん、こうしてみると、名前と色が全然合ってないぞ)
なに色と一口に表現できない微妙な深みのある色で、
天候とか、時刻とか、どこで何を見ているかによっても違います。

絵の具のセットに「ビリジアン」というグリーンがあります。
わたしはその色がキライで、青と黄を混ぜて緑をつくるほうが
ずっと複雑できれいだということを、小学生のときに発見しました。
均一でなく、混ぜるたびに色が変わるのが好きだったのね。
いつかそれを使ってやろうと、ずーっと思っていた…のかどうか。

3巻で、やまねこ族を「コハク色の目」にした時点で、
最終巻の「ガラス玉ゲーム」がぼんやり見えていたわけですが、
1巻を書いたときには3巻のことはぜんぜん考えてなかったからなあ。
(わりと「いきあたりばったり」な作者)

 

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