つづきです。
サンゴロウをかっこよく描くためのポイントについて。
描いた人の回答。
では、実際の絵作りを例にお話しします。
例-1
たとえば、サンゴロウが去っていくシーンの文章があったとします。
画面中央に描いてしまうと、あたりまえすぎて、
なんでもありません。
端に寄せてみます。
ちょっと変ですが、まだ、どうということもないです。
影を描いてみます。
白地に広がりが出て、前面の余白に空気感が出てきます。
サンゴロウの後ろにも光が感じられるようになってきましたね。
このように、ただ文章に書いてあることの表面を描写するのではなく、
画面の中の白黒の世界を利用して、構図を考えたり、
線の集積で白から黒までの微妙な色を出したり、
光と影のコントラストを強調したり、
肌合いや質感を感じやすい表現を工夫したり……
読者がサンゴロウの存在する世界に入りやすくするために
いろいろなことをするわけです。
今はバックはわざと描きませんでしたが、
人ごみ(猫ごみ?)にサンゴロウが消えていく絵だって有りなのです。
(これは映画「羊たちの沈黙」のラストですね。)
例-2サンゴロウの顔です。
右側を白のままにしてみました
上と同じですが、目の色を変えてみました。
さらに白でとばしてみました。
バックの斜線だけです。
目も鼻も意図的につぶしてみました。
目だけ。
というふうに、白と黒の色だけなのですが、ずいぶん表情が変わるでしょう。
どれが正しいということではなく、いろいろ自由な表現をすることで、
サンゴロウのデリケートで感情豊かなところが「格好よく」見えてきます。
マンガ的な表現ではこうなってしまいます。
主人公がネコ(=動物)であるところ、
それをどう表現するか・・も関係あるのでしょう。
本来、自然界の動物は、無駄が無く、造形的に美しい姿をしています。
ところが、今の絵本や童話の世界では、動物が出てくると、
みな、お人形というのか、ぬいぐるみというのか、
丸描いて点々の、単なる記号でしかありません。
サンゴロウは、おおもとでいえば、
古代エジプトのネコの彫像のイメージです。
野生本来の美しさ、生命本来の美しさを表現しようとしているのだから
格好いいのは当然なのです。
…すごいですねえ。
言っちゃいましたねえ。
《閑猫追記》
上の絵は画用紙のきれっぱしにちょこちょこっと描いてもらったのを
スキャナで拾ったので、縮小とかうまくなくてすみません。
解説は、当初はこれの3倍くらい長くて難しかった!(笑)