遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

琉球漆器漆絵龍図木鉢

2023年02月11日 | 漆器・木製品

先回と同じような箱に入っています。

表に、「御木鉢」とだけ書かれています。

径 30.2㎝、高 5.8㎝。江戸後期ー明治。

大きな木製の鉢です。

鮮やかな色漆で龍と縁模様が描かれています。

中央には、少しマンガチックな龍が、ダイナミックに描かれています。

その周囲を可憐な装飾模様が囲んでいます。

このように、大きな龍を器いっぱいに描いた品は、琉球漆器で多く見られます。また、色漆の色や品物の作風からしても、琉球漆器と考えてよいと思います。

先回の琉球漆器と同じく、今回の品も、使用された痕跡は全くありません。

どのような人が持っていたのでしょうか?

箱の底に古い書類が入っていました。

「互融講」の名称で滋賀県の某寺に置かれた頼母子講の会則のようです。

明治23年11月21日付けで、それまでの講則を変更するための草稿と思われます。生命保険のような内容です。普段から皆でお金を積み立てて、いざというときに備えるためのものでしょう。

今回の品は、個人の持ち物にしては少し多きすぎます。やはり、お寺で人が寄った時に飾った物ではないでしょうか。

ps.

やっとブログを書き上げ、ふと外を見ると、久しぶりに快晴。雪の伊吹山が光っています。さほど高くない山(1377m)なのに、地形の関係で雪が多い。日本の最高積雪記録もここなのだそうです。

 

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琉球漆器山水楼閣人物図箔絵丸盆(5枚)

2023年02月09日 | 漆器・木製品

今回も古箱に入った品です。

 

出てきたのは、琉球漆器の丸盆5枚です。

 

径 24.6㎝、高 2.5㎝。江戸時代後期。

豚血下地とよばれる朱色の地に、箔絵で太湖石、楼閣と人物、山などが描かれています。

この図柄は、以前に紹介した琉球漆器角盆とよく似ています。

また、縁が籐編みで作られ、裏底が黒漆塗りなのも同じです。

徳川美術館の図録に、今回の品とよく似た琉球漆器が載っていました。

『徳川美術館名品集2 唐物漆器』(平成9年)

琉球漆器類が、唐物漆器の図録の最後に載っています。その多くは、琉球王朝から幕府への献上品です。徳川家では、琉球漆器が、唐物に準ずる品として珍重されていたことが伺えます。

今回の品が入っていた箱にも、「唐盆五枚」と書かれています。江戸時代、日本では唐物への憧れが強く、この琉球漆器は唐物として扱われていたのだと思います。伊万里焼の初期色絵磁器に、「南京」の箱書きが見られる事があるのに似ていますね。

 

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玉杢欅大角盆

2023年02月07日 | 漆器・木製品

今回も箱に入った盆です。

58.7㎝x36.0㎝、高(縁) 2.4㎝。江戸時代後期(文化14年)。

非常に大きな角盆です。素材は欅。表面は透き漆処理、裏面は黒漆塗です。

箱の裏底に、この品の由来が書いてありました。

文化十四丁丑五月有故求
得牛窓本蓮寺牀板之餘
使大工塩飽忠左衛門造此
器満藤喜平治
    五品之内

文化14年5月に、牛窓(岡山県)本蓮寺の牀板の余りを使って、大工、塩飽忠左衛門がこの品を作った 満藤喜平治

本蓮寺は岡山県牛窓にある古刹です。寺の牀板(ゆかいた)の余りを利用して、5枚作られた盆の内の一つが今回の品です。

表面はむらむらとしています。

よく見ると、欅の木目です。

丸い木目(玉杢)がたくさん見られます。

少し大きめの玉杢も点在。

魚の鱗のように同心円がかさなっているので、魚鱗杢(如輪杢)と呼ばれている木目です。魚鱗杢は、数ある木目の中でも最高級のものとして珍重されます。

本蓮寺は、贅沢な材を床木に使っているのですね。寺は牛窓観光の中心地、瀬戸内海の眺めが最高だそうですので、機会があれば床板探しを兼ねて出かけてみたい・・・と思いながら、蓋の裏を眺めていると、無数の虫舐め跡があるではありませんか。

しかし、ぐぐっと目を凝らすと、どうも虫跡ではなく、人がつけた模様に見えます。

垣根、木枝、花が彫られているようです。

江戸時代、自分の名を刻めなかった大工が、そっと刻み込んだ知らせ鉋?(^.^)

 

ps. 先回の肥松盆の光透かしを写真に撮るとき、ライトを近づけすぎて、盆の表面に松ヤニが噴出したのは先回のブログ通りです。ところが、気が付いてみると、電球にもべったりと松ヤニが付いていました(^^;

 

 

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時代肥松刳貫丸茶盆

2023年02月05日 | 漆器・木製品

盆類は使用を前提としているので、裸で入手することがほとんどです。

が、中には、麗々しく箱に納められているものもあります。

古箱に入っています。

年代物の更紗に包まれ、大切にされてきた品です。

径  28.4㎝、高 4.3㎝。江戸後期ー明治。

これまで、脂分の多い松材を使った肥松盆をいくつか(今回の品も含めて6枚)紹介してきました。

その中で、今回の品は、時代、造り、品格、どれをとってもピカ一であると思います。

薄く刳り貫かれた盆は、内側に湾曲した鉄鉢型で、凛としたフォルムが美しい。

もちろん、木目も多彩。

相当使い込まれ、底には使用痕が多くあります。が、おそらく使うたびに乾布で磨き込んだのでしょう、松の脂で美しく輝いています。

肥松といえば、透ケルトン。長年の間に油脂が樹脂化して、板に光を通す部分ができるのです。

表面に強い光を当ててやると・・・

星雲のような光が浮かび上がります。

 

上手とはいえ、使用してナンボの盆です。

明るい薩摩焼の茶器を合わせてみました(^.^)

 

ps. 昨晩、必死でライトを当て、透ける光を何とかカメラにおさめたのですが、今朝、盆を見てビックリ。ライトで熱せられらのでしょう、松ヤニが表面に噴き出ています。柔らかい布で拭いてやらねばなりません。いっそう、味が増すといいですね(^.^)

 

 

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中国寄木角盆

2023年02月03日 | 漆器・木製品

まだ花器がいくつかあったはずなのですが、見つかりません(^^;

気分を変えて、漆器・木製品の盆類に戻ります。

30.0㎝x29.7㎝、高 5.1㎝。中国清時代。

中国製の古い寄木盆です。この場合の寄木とは、装飾を主とした日本の寄木細工とは異なり、文字通り木を寄せて品物(盆)を作ることを指します。

作り方は木桶と一緒です。細長い板(濃、淡二種)を底板の周りにぐるりと並べて縁を作り、タガで締めます。

非常に薄いパーツを多数並べて盆の縁を作っていることがわかります。

タガは通常、太い銅線を用いますが、今回の品は鉄帯でできています。

盆の表には、

奇怪な絵が朱で描かれています。漆が厚く塗られているので、はっきりしません。中国のお化け?

一方、底は真っ黒、

と、ず~~~~っと思っていました。

ところが、今回、ライトを強く当ててみると・・・

何やら絵らしきものが浮かんでくるではありませんか。

二人の人物がやり取りをしているようです。

これまで、各種の盆を紹介してきましたが、裏側に絵がある物は、今回の品が初めてです。

以前に紹介した中国の寄木盆です。

今回の品(上)と較べてみると、寄木の数が非常に大きく異なっています。当然、細かい方が手間がかかります。また、形も、円(寄木盆のほとんど)と方形の違いがあります。形を整えるには、円形より方形の方が難しく、手間がかかります。時代も、以前紹介した品より遡るでしょう。

このように、今回の品は、ワンランク上の中国民芸品と言ってよいでしょう。

せっかくですから、気の合った二人が酌み交わす時のおぜん立てをしてみました。

瀬戸(美濃?)の蕎麦猪口は、呑兵衛さん専用(^.^)

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