遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

トイレ美術館22 『ゴブラン織 午後の水辺(仮題)』

2023年12月17日 | 絵画

今回は、絵画ではなく、織物です。

ゴブラン織『水辺の午後(仮題)』40.6㎝x59.3㎝。フランス。1940年代初。

ゴブラン織は、フランス、ゴブラン家の工場で作られた織物です。15世紀から始まり、タペストリーが中心です。

今回の品は、私の家にあった物です。

ヨーロッパ貴族の日常が表現されています。

織物なのですが、かなり細かな表現がなされています。

特に、色の濃淡によって、風景の遠近がうまく表現されています。

織組織を拡大してみました。

男性の頬(少し影のある部分):

男性の肩(左の黒い筋):

黒糸が巧みに使われています。黒糸が表に多く出ている部分は濃く、まばらな所は薄くなります。バックの木々や屋根にもこの技法が使われています。また、黑糸は色糸と組み合わさって、色の濃淡をも表現しています。

実はこのタペストリーは、故玩館の玄関を入った土間の上正面に、ず~――~っと掛かっていました。私が物心ついた時には、もうそこにありました。薄暗い古民家にこんな物が掛かっているのは、子供心にも不思議でした。聞けば、満州にわたった知人からのもらい物だとのこと。戦前の品ですから、80年以上経っているのですね。色が褪せているはずです(^^;

ビンテージを通り越して、アンティーク・ゴブラン織の範疇に入りそうです。なかなか入手は困難。

時々はこうやってトイレ美術館に飾ってやることにします(^.^)

ps. この品の絵、どこかで見た事があるような無いような(^^;   タイトルを仮に『水辺の午後』としました。ブログ読者諸氏、これはと思われるタイトルがありましたら、どしどしお寄せください。

 

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トイレ美術館21 日下田博『藍染絵 初秋』

2023年12月15日 | 絵画

藍染作家、日下田博の藍染絵です。

日下田博『藍染絵 初秋』33.5㎝x35.7㎝、綿布。昭和。

藍を基調にして、秋の山野が表されています。

一般には、型絵染と言われている技法です。

型絵染は芹沢銈介が有名です。

二人の作風はよく似ていますが、それぞれの特徴は異なっています。

芹沢銈介の場合、沖縄の紅型から強い影響を受けて、デザイン性にすぐれた様々な作品を生み出しました。色使いは派手でにぎやかです。

一方、日下田博の場合は、日本的な情景を、主に藍色を駆使して表しています。

日下田博は、江戸時代から続く紺屋の家に生まれ、藍染で創作品の開発をめざして、益子の濱田庄司と交流し、民芸運動に参加しました。

芹沢銈介作品との共通点が多いのもうなづけますね。

 

 

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トイレ美術館20 矢橋六郎『キスゲ』(水彩、色紙)

2023年12月11日 | 絵画

岐阜出身の洋画家、矢橋六郎の水彩画です。

矢橋六郎『キスゲ』水彩、色紙。1981年7月。

矢橋六郎(やばしろくろう、明治三八(1905)年ー昭和六三(1988)年):美濃赤坂町(現、大垣市)生れ。岐阜県きっての素封家、矢橋家本家出身。洋画家。東京美術学校卒、梅原龍三郎に師事。モダンアート協会を創立。モダンアートの旗手の一人。矢橋大理石商店社長、岐阜県教育長なども歴任。

キスゲの花が大胆に描かれています。

モダンアートなる言葉は漠として何を意味するのかよくわかりません。巷間では、19世紀末から20世紀初頭にかけての時代に主流となった美術のスタイルを指すようです。しかし、その中には、印象派、ポスト印象派、表現主義、キュビスム、シュルレアリスムなど、いろいろあって、これまたわかりません(^^;

何となく、新感覚の洋画(^.^)

 

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トイレ美術館19 加藤栄三『くわい』(日本画、短冊)

2023年12月07日 | 絵画

日本画家、加藤栄三の小品(短冊)です。

加藤栄三『くわい』岩彩、短冊。昭和。

加藤栄三(かとうえいぞう、1906年(明治三九(1906)年-昭和四七(1972)年): 日本画家。加藤東一の兄。岐阜市生れ。東京美術学校卒、結城素明に師事。文展、日展で活躍。文部大臣賞受賞。日展理事。

独特の色調が印象的です。

色使いや画題は、弟、加藤東一とよく似ていると思います。

くわいの周りのブツブツが気になります。

粗い岩絵具をそのまま撒いたように見えます。

加藤栄三は、昭和47年、65歳の時に自死しています。

絵画制作に行き詰ったからだと言われています。が、本当の理由は不明です

芸術家の宿命でしょうか。

画壇で華々しく活躍する弟、東一に対する複雑な思いもあったでしょう。

空襲で、ほとんどの作品が焼失するという悲惨な体験もその生き方に影をとしていたのかもしれません。

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トイレ美術館18 加藤東一『洋梨』(日本画、色紙)

2023年12月05日 | 絵画

昭和の代表的日本画家の一人、加藤東一の小品です。

加藤東一『洋梨』、水彩? 色紙。昭和。

加藤東一(かとうとういち、大正五(1916)年ー平成八(1996)年):岐阜市生れ。日本画家。東京美術学校卒。山口蓬春に師事。日展理事長、芸術院会員、文化功労者。

独特の色使いが特徴的です。

私には水彩画のように見えます。しかし、濁りがあります。岩絵具も併用しているのでしょうか。

素人には窺い知ることができない技法で、独特の色調が作り出されているのかもしれません(^.^)

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