遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

トイレ美術館27 長谷川朝風『はがき絵壺屋風景』

2024年01月16日 | 絵画

日本画家、長谷川朝風のはがき絵です。

はがきに描かれた小さな絵です。

 

俳句が添えられています。

はがき裏面に絵と俳句。昭和34年。

長谷川朝風(はせがわちょうふう、明治三四(1901)年ー昭和五二(1977)年):岐阜県生れ。日本画家。名は慎一。安田靱彦に師事。院展を中心に活躍。俳人としても知られる。

壺屋焼で知られる沖縄壺屋の風景が、さらりと描かれています。

俳句が添えられています。

「鵜篝の 遠見を過ぐる 真の闇」

「河鹿鳴く 闇を涼しと わかれけり」

旅先からの便りかと思いましたが、違うようです。

岐阜市の知人に宛てたお礼のはがきですね。

当時、東京で活動していた長谷川朝風が、昭和34年6月に出したものです。故郷の鵜飼を懐かしんで句を詠んだのでしょう。壺屋との関係はわかりません。

はがき絵といえば、竹久夢二が有名です。骨董市には贋物があふれています。古いはがきに、少し絵心のある者が描いたのでしょう。驚くことに、昭和初期の消印のある切手が貼ってあったりします。ジャの道はヘビですね(^^;

そんなビッグネームに騙されるよりも、贋物を作っても割が合わない中堅画家の小品を飾る方が賢いかと(^.^)

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トイレ美術館26 珍品 花柳章太郎『エナメル画 ヨーロッパの街角(仮題)』

2023年12月30日 | 絵画

大変珍しい品です。

花柳章太郎『ヨーロッパの町角(仮題)』16.1㎝x23.1㎝。エナメル。昭和。

花柳章太郎(はなやぎしょうたろう、明治二七(1894)年~昭和四〇(1965)年):東京生れ。劇団新派の統率者、女形として活躍。演劇の他に、俳句、随筆、作陶、絵画など多方面に才能を発揮した。

私は、この品を、ずっと陶板画だとばかり思っていました。今回のブログを書き始めるまで、例によって、品物をしっかりと見た事がなかったからです(^^;

触ってみるとヒンヤリしますが、どうも陶磁器とは違う・・・

よく見ると、陶板ではなく、真鍮板の上に、風景が分厚く描かれています。

これは、エナメル(色ガラス釉)焼付けですね。

有名画家の陶板画は、ほとんどが原画を陶板に焼き付けた数物ですが、今回の品は、作者が描いた一品物です。

エナメル(エマーユ)画は七宝の一種で、ヨーロッパで数多くつくられてきました。ほとんどが、人物を精細に描いた物です。

ところが、今回の品は、油絵の風景画に近い雰囲気の作品です。

木の幹など、よく見ると、複雑な色使いがなされています。

雪のようにふんわりした白釉の質感が、独特の雰囲気をだしています。

右下に「花」のサイン。

花柳章太郎は、文字通り、multi talent な芸人さんだったのですね。

 

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トイレ美術館25 和田まさし『藤椅子によれる』(油彩、4号)

2023年12月28日 | 絵画

今回は奇妙な品です。

和田まさし『藤椅子によれる』油彩、4号。キャンバス。1935年。

少女が籐椅子に座っている油絵です。

暗い絵です。

「M.WADA 1935」のサインがあります。

裏に、「(中村研一氏ノ〇・・・〇)藤椅子によれる 一 九 三 五 和田まさし」と書かれています。

中村研一は、従軍画家として活躍した洋画家ですが、何か関係があるのかな、と思い調べてみると・・・・

中村研一『弟妹集う』1930年(住友クラブ蔵)

何と、元になった作品が有りました。中村研一の代表作、第11回帝展帝国美術院賞を受賞した250号の大作です。暗い時代に入っていく予感が漂う画面です。

いよいよ時代がきな臭くなってきた5年後、和田まさしなる人物が、その一部を写し、『籐椅子によれる』と名付けたのです。

このような品をどう呼んでいいのでしょうか。

習作?

贋作?

わだかまりが残る絵はトイレにふさわしい!?

そのココロは?

水に流します(^^;

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トイレ美術館24 節子『静物』(油彩、6号)

2023年12月26日 | 絵画

30年ほど前に購入した絵画です。

『静物』油彩、6号。板。昭和。

典型的な静物画です。

リンゴとレモンに挟まれた果物もリンゴでしょうか。

非常にぶ厚く塗られています。

「節子」のサインがありますが、

この名の洋画家は多く、作者の詳細は不明です。

トイレならずとも、どこでもおさまりがつく無難な絵ですね(^.^)

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トイレ美術館23 『刺繍 温公甕割り図』

2023年12月20日 | 絵画

今回も、絵画ではなく布です。

袱紗『温公甕割り図』52.8㎝x56.5㎝、刺繍布。大正時代。

濃紺の絹地に、刺繍が施されています。

これは、有名な中国の故事「温公甕割りの図」ですね。

北宋の政治家・学者、温公(司馬光)は、子供の頃、遊んでいるうちにあやまって大きな水甕に落ちた友達を救うため、石を投げて甕を割りました。とっさに気転をきかして友を助けた冷静な判断と生命の尊さを説くために、古くから多く描かれてきた画題です。

温公。

大甕。

救われた友(水が流れている)。

拡大してみると、針の運びがわかります。

 

人物もすべて刺繍です。

顔は撚りの多い糸をぎっしり詰めて、ふっくらとした質感を出しています。鼻や耳はその上にもう一度糸を重ねて立体感を出しています。

なるほど、眼はこのように糸を配置するのですね。

指先の爪なども黒糸で表現。

実はこの品、亡くなった母の持ち物を整理している時に見つけました。母の箪笥の奥にひっそりとありました。袱紗の反対側はかなりボロボロです。おそらく少女の頃に作ったのでしょう。明治晩年生れですから、大正時代頃の作だと思います。もう100年ほど経っています。我々子供にとって初めて目にする物で、なぜ、ずっとしまっていたのか、今は知る由もありません。

 

 

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