引き続き、インドネシアの仮面です。
幅 15.6㎝x 長 18.3㎝ x 奥 15.7㎝。重 192g。インドネシア(ジャワ島、バリ島)。20世紀前半。
インドネシアのジャワ島、バリ島で行われている古典仮面劇で使われる面です。ワヤン・トペン(仮面劇)呼ばれる民衆芝居は、12世紀か、それ以前からジャワ島で行われてきたもので、その後、バリ島へも伝わりました。
役柄に応じて、非常に多くの種類の面があります。そのうちの一枚(名称不明)です。
見る角度によって、表情が変わります。喜怒哀楽など、劇の要素を満たすことができそうです。
これまで紹介してきたエスニックな仮面の多くには、おどろおどろしい形相で、人間を超えた霊的な力を備えたいとの願望がこめられていました。
ところが、今回の仮面は人間の顔です。誇張はあるものの、目、鼻、口、髪、眉、髭など、人間の特徴を備えています。
表側は、鑿跡が残らないよう、きれいに磨かれ、その上に白、黒、肌色の彩色が施されています。裏側は深く彫られ、面をつけた時に安定するようになっています。大きな丸い目の下に、切れ込み(演者のための目)がいれてあります。演者は声を出さないので、口穴は開いていない物が多いです。
薄く作られており、軽いので、面を被って演技をするのに向いています。
完成度の高い面と言えます。
大きさや重さも、日本の能面とよく似ています。
面の下側が水平になっていて、
直立します(何か意味がある?)。
長い間、使い込まれたのでしょう。
パカっと二つに割れたのをくっつけてあります。
顎の部分が一部、凹形に切れ込まれています。
よく見ると鎹のような金具で留めてあります。割れが広がらないようにしているのでしょう。
ところで、この凹は何のためにあるのでしょうか。
インドネシアの仮面芝居では、演者は声を発しません。音楽と語りによって、劇は進行します。人形浄瑠璃の人形のかわりに、仮面をかぶった人間が演じる人間浄瑠璃なのですね(^^;
トペンでは、この凹部木片などを差し込み、それを口にくわえて面を顔に固定するのです。日本にも、祭礼に使われる面では、口に咥える物があります。一方、バリ島では、ゴム紐を使って被ります。
今回の面には、両耳の下にも小さな穴があいています。凹と穴の両方があるのです。
ジャワとバリの共通仮面??(^^;
能は世界最古の舞台演劇と言われてきました。
しかし、インドネシアの仮面劇に席を譲らねばならないかも。
猿楽まで遡れば、能が勝ち?
ところが、トペン劇のルーツも相当古そう。
簡単に勝負はつきそうもありません(^.^)