山寺へのルート探しで迷ったあげく、仙台に一泊しレンタカーで奥羽山脈越えを選んだ。その日のうちに山形県内に移動したかったのだが、小松空港から仙台へは1日1便しかなく、到着時間(16:50)を考えると仙台市内に泊まるしかなかった。
空港アクセス線で市内へ向かう途中、マンションやショッピングセンター建設ラッシュの光景に軽いショックを受けた。沿線沿いに新しい都市形態が出来上がろうとしていた。東京に勤務していた頃、仕事で数回訪れたことがあったが、当時と比べると見違えるほど大きく変貌を遂げていた。
昭和45年頃、仙台の人口は56万で金沢は42万人で、都市機能も似通っていて、金沢の財界には競争意識が強かった。が、40年近く経って、金沢は今なお46万人の中都市だが、仙台は100万人を超える政令指定都市に仲間入りした。周辺地域との度重なる合併により新しい大都市をつくり上げた仙台人は進取の気質に富み、保守色の強い金沢人と好対照といえる。だが、高度経済成長の潮流にうまく呼応し、豊かさと便利さを実現しても没個性化した大都市に、私は魅力を感じない。
昨年暮れ、萩を訪れた時、土地の人に「萩は金沢と違い貧乏だから、近代的な施設を作れんのよ」と言われた時、歴史に根付いた郷土愛と価値観を育んでいる町だと感じ入った。我々日本人が忘れ去ろうとしている大切な物を示唆された気がしたからだ。地元では、「兼六園を世界遺産に」と躍起だが、今一度、その必要性を問い直してもらいたい。