プラチナ世代のマラソン旅行

時悠人chosan流処世術

★湯田温泉紀行(後編):中原中也

2021-11-28 07:39:50 | 旅行記
 湯田温泉ゆかりの有名人と言えば、詩人中原中也だが、私は、今まであまり関心がなかった。

 昭和時代に活躍し、文学史上に大きな足跡を残し、30歳で夭逝した詩人だというので、ホテルの読書コーナーで、作品を読んでみた。

 プロフィールには、1910年代半ばに起こった芸術運動「ダダイズム」に心酔し、作風は、虚無感と既成の秩序を破壊する思想とあったが、ピンとこなかった。

 最初のページをめくり、「トタンがセンベイ食べて 春の日の夕暮は穏かです アンダースローされた灰が蒼ざめて 春の日の夕暮は静かです」まで読んで、意味が呑み込めず、読み飛ばした。

 斜め読みしていたら、分かりやすい詩を見つけた。

~また来ん春と人は言う しかし私はつらいのだ 春が来たって何になろ あの子が帰って来るじゃない 思えば今年の5月には お前を抱いて動物園 象を見せても猫(にゃあ)と言い 鳥を見せても猫だった 最後に見せた鹿だけは 角によっぽど惹かれてか 何とも言わずに眺めてた ほんにお前もあの時は この世の光のただ中に 立って眺めていたっけが~

 愛する我が子を亡くし、悲嘆に暮れる親の気持ちが、ヒシヒシと伝わり、ようやく、鮮烈な感受性と言語感覚の持ち主だと、理解できた。