3月4日東京新聞朝刊の書評欄で取り上げられていた本に
興味をひかれました。
ニコラス・シャクソン著「タックスヘイブンの闇」です。
原題を調べると、Treasure Islands: Tax Havens and
the Men Whol Stole the Worldとなっています。
コロ子が出版社なら「タックスヘイブンは宝島」 と
邦題をつけるところですが、さすが朝日新聞出版です。
以下書評を転載させていただきます。
タックスヘイブンの闇 (著者) ニコラス・シャクソン
藤井清美訳 朝日新聞出版/2,625円
評者 足立 倫行 (ノンフィクション作家)
■格差を広げる不正ビジネス
昨年秋、「ウォール街を占拠せよ」の反格差社会デモがニューヨークで発生。
またたく間に世界各地に広がった。
一般国民が景気低迷で失職しているのに、企業経営者や金融機関のエリートは
法外な収入を得ている。「偏在する富を再分配しろ」と言うのだ。
しかし、わからないのは格差拡大の理由。本当に金融・経済危機の後遺症、
なのか? 「富裕層は利子収入が大きく、株の売却益を得ている」(米議会
予算局の報告書)にすぎないのか?
これに対し、そうではない、史上最大の詐欺行為により「世界の富は盗まれ
ている!」(副題)と主張するのが本書。
本書によれば、現在のグローバル経済の根底にあるのは、タックスヘイブン
(租税回避地)を使った不正ビジネスだ。例えば、ニューヨークで上場している
ある多国籍のバナナ会社は、アメリカで税金を払わない。財務部門をルクセン
ブルクに、経営部門をイギリス王室属領ジャージーに置くなど、タックスヘイ
ブンを経由して移転価格操作を行っているからだ。
経営者、銀行家、弁護士、会計士などが一体となったオフショア(国境を越え
た書類上の資金操作)システムにより、企業は納税の義務を免れるばかりでなく、
金融規制や刑法、相続法などの義務からも解放される。
つまり、富と権力を持つエリートたちは、この社会から便益のみを得、
「税金は庶民が払う」(ニューヨークの大富豪の言葉)仕組みなのだ。
世界の貿易取引の半分以上がタックスヘイブン経由で行われ、富裕な個人が
オフショアに保有する資産はアメリカのGDP総額に匹敵。人口約二万五千人の
イギリス領ヴァージン諸島に八十万社の企業が蝟集(いしゅう)する。
グローバル経済の何かがおかしい、と世界中の人々が何年も前から感じてきた。
その「何か」の正体を、初めて暴いた衝撃的な経済ノンフィクションが、本書で
ある。
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Nicholas Shaxson ジャーナリスト、英・王立国際問題研究所の研究員。
多数の新聞、雑誌に寄稿している。