ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

後期研修医募集要綱

2006年07月10日 | 地域周産期医療

後期研修医の募集要項ができましたのでアップします。希望者があれば、説明会を実施する予定もあります。お気軽にお問い合わせください。

問い合わせ先:
〒395-8502 飯田市八幡町438 飯田市立病院
産婦人科 山崎(科長)、または庶務課 知久
電話番号:0265-21-1255 FAX:0265-21-1266

http://www.imh.jp/

    飯田市立病院産婦人科 後期研修プログラム

 本プログラムは、2年間の初期臨床研修を修了後に、日本産科婦人科学会の認定する産婦人科専門医および母体保護法指定医の資格取得を目指す3年間のコースである。

 当科における後期研修プログラムは、信州大学産科婦人科学教室(小西郁生教授)との緊密な連携のもとに実施される。本人の希望により、3年間の研修期間のうちの半年~1年間は信州大学産科婦人科学教室にてフルタイムで研修を行い、より多くの症例を経験することも可能である。当科および信州大学産科婦人科学教室において、産婦人科に関する臨床研究を行い、積極的に研究発表(論文も含む)を行う。

 飯田市立病院産婦人科は常勤産婦人科医4名、非常勤産婦人科医4名、助産師22名の診療体制である。年間約200例の婦人科手術を行い、新規の婦人科浸潤癌症例が年間約50例ある。婦人科内視鏡手術も年間約50例実施している。当科は、NICUとともに地域周産期センターに県より指定され、年間約1000例(月80~100例)の分娩を取り扱い、年間約50例の緊急母体搬送を受け入れ、当医療圏の異常分娩のほぼ全例を取り扱っている。臨床各科と協力して多数例の合併症妊娠にも対応している。また、年間約50例に体外受精(顕微受精を含む)を施行し、胚移植あたりの妊娠率は22.1%、総症例あたりの妊娠率は27.4%、個別症例あたりの妊娠率は39.6%である。

 本プログラムでは、産婦人科診療のほぼすべての領域において、多数の症例を経験し、産婦人科専門医資格を取得するために必要なすべての技能を修得することが可能である。本プログラムの指導医師達の専門分野は、産婦人科のほぼすべての領域をカバーしており、専門医資格取得のために必要十分な指導を受けることが可能である。

 また、地域周産期センターとしてNICUもあり、本人の希望により、NICUでの研修ができる。新生児科・小児科での正常新生児の健診や未熟児のフォローアップについても研修できる。さらに、当院麻酔科の指導により、産科麻酔(無痛分娩を含む)の研修もできる。

 なお、本プログラムを修了して日本産科婦人科学会専門医の基本資格を取得後に、さらに本人の希望により、当科において、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、母体・胎児専門医、産婦人科内視鏡学会技術認定医、生殖医療指導医などの各種のsubspecialityにおける専門医資格を目指して研修・トレーニングするコースも順次用意される予定である。

指導担当(常勤):

 山崎輝行(産婦人科科長、昭和57年信州大学卒業、医学博士、信州大学医学部臨床教授)専門領域:婦人科腫瘍学、周産期医学。日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、細胞診専門医、婦人科腫瘍専門医、日本周産期・新生児学会暫定指導医、

 松原直樹(産婦人科医長、平成9年信州大学卒業)専門領域:内視鏡手術、生殖医学。日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医

指導担当(非常勤、週1回):

 可世木久幸(日本医科大学医学部教授、専門領域:内視鏡手術、生殖医学)

 塩沢丹里(信州大学医学部助教授、専門領域:婦人科腫瘍学)

 金井誠(信州大学医学部講師、専門領域:周産期医学、臨床遺伝学)

****** 関連診療科の常勤指導医

 長沼邦明(小児科科長、昭和53年弘前大学卒、小児科専門医、医学博士、信州大学医学部臨床教授)

 竹岡正徳(小児科医長、平成6年独協医大卒、小児科専門医)

 青木 盛(小児科医長、平成10年信州大学卒)

 原 克実(麻酔科科長、昭和57年信州大学卒、麻酔指導医、医学博士)

 丸山晃一(麻酔科医長、平成2年山形大学卒、麻酔指導医、医学博士)

待遇:飯田市立病院規定に従う。身分:常勤医(1年ごとの契約更新)。年俸:1千万円程度となる見込み。宿舎あり。

募集人数:若干名

後期研修終了後の進路:研修終了時に病院側との話し合いで決定する。

問い合わせ先:〒395-8502 飯田市八幡町438 飯田市立病院産婦人科 山崎(科長)、または庶務課 知久、電話番号:0265-21-1255

当科の最近の主な業績:

山崎輝行,波多野久昭,鈴木章彦,菅生元康,中村正雄,関谷雅博,上田典胤,羽場啓子,塚原嘉治,藤井信吾:Normal-sized ovary carcinoma syndrome,14例の病理組織学的解析.日本産科婦人科学会雑誌 47:27-34,1995

Shimojo H, Itoh N, Shigematsu H, Yamazaki T : Mature teratoma of the placenta. Pathol Int 46 : 372-375, 1996

波多野久昭,山崎輝行,折井文香,八木ひかる,生山敏彦:腸チフス合併妊娠の1例. 産婦人科の実際 45:235-238,1996

野口 浩,横西清次,小谷俊郎,山崎輝行,波多野久昭,塚原嘉治,重松秀一:扁平上皮癌優位の下床癌を伴った外陰Paget病の1例.癌の臨床 43:793-796,1997

堀米直人,山崎輝行,神頭定彦,疋田仁志,金子源吾,千賀 脩,宮川 信,波多野久昭:消化管大量出血により発症した絨毛癌空腸転移の1例.飯田市立病院医誌第3号105-107,1997

大平哲史,波多野久昭,山崎輝行:卵巣原発の悪性中胚葉性混合腫瘍の2例.飯田市立病院医誌第4号91-95,1998

山崎輝行,波多野久昭,大平哲史,長沼邦明,津野隆久,朴 成愛,松下雅博,原田 大:胎盤多発梗塞を呈した原発性抗リン脂質抗体症候群の1例,飯田市立病院医誌 第4号:85-89,1998

大平哲史,山崎輝行,波多野久昭,津野隆久,長沼邦明:胎児母体間輸血症候群の1例.周産期医学 29:241-244,1999

山崎輝行:Normal-sized ovary carcinoma syndrome. 臨床婦人科産科 53,774-775,1999

大平哲史,波多野久昭,山崎輝行:膣壁に発生したAngiomyofibroblastomaの2例.日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報 36:391-394,1999

Ohira S, Yamazaki T, Hatano H, Harada O, Toki T, Konishi I: Epithelioid trophoblastic tumor metastatic to the vagina: an immunohistochemical and ultrastructural study. Int J Gynecol Pathol 19: 381-386, 2000

大平哲史,波多野久昭,山崎輝行:頸部に発生したAngiomyofibroblastomaの1例.日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報 37:41-44,2000

大平哲史,山崎輝行,波多野久昭,土岐利彦:特殊な絨毛性疾患,ETT (epithelioid trophoblastic tumor).半藤 保(編),新女性医学大系第37巻 絨毛性疾患,pp315-319,中山書店,東京,2000

松原直樹,山崎輝行,波多野久昭:原発性卵管癌の1例.飯田市立病院医誌第6号121-124,2002

西尾昌晃,実原正明,園原美恵子,赤羽美智子,荒木竜哉,山崎輝行,福島万奈,伊藤信夫:子宮頚部Glassy cell carcinomaの2例.飯田市立病院医誌第8号43-46,2002

Horiuchi A, Itoh K, Shimizu M, Nakai I, Yamazaki T, Kimura K, Suzuki A, Shiozawa I, Ueda N, Konishi I: Toward understanding the natural history of ovarian carcinoma development: a clinicopathological approach. Gynecol Oncol 88: 309-317, 2003

山崎輝行,波多野久昭,小野恭子,実原正明,西尾昌晃,金井信一郎,伊藤信夫:脈管侵襲を伴う子宮頚癌Ia1期における骨盤内リンパ節転移例.飯田市立病院医誌第10号67-70,2004

山崎輝行,波多野久昭,小野恭子,伊藤信夫,金井信一郎,正木千穂,大平哲史,塩沢丹里,小西郁生:不妊治療中に発見された高カルシウム血症型卵巣小細胞癌(大細胞亜型)の1例.日本婦人科腫瘍学会雑誌第23巻163-170,2005

山崎輝行、小野恭子、正木千穂、松原直樹、波多野久昭:帝王切開後の経腟分娩(VBAC)で発生した子宮破裂の3症例.産婦人科の実際第54巻845-849,2005


外陰原発の悪性腫瘍

2006年07月10日 | 婦人科腫瘍

外陰に原発する悪性腫瘍の発生頻度は全女性性器癌の約4%とされる。すなわち女性人口100万人当たりの年間発生数が10例前後と推定される比較的まれな疾患である。

外陰悪性腫瘍の組織型は、扁平上皮癌がその大部分を占め、悪性黒色腫がそれに次ぐ。

扁平上皮癌 Squamous cell carcinomaは、角化型 Keratinizing、非角化型 Nonkeratinizing、類基底細胞型 Basaloid、疣状型 Verrucous、湿疣型(コンジローマ様癌) Warty (condylomatous)、その他 Othersに分類される。このうち類基底細胞型、湿疣型は、ヒトパピローマウイルス16型との関連が指摘されている。

臨床進行期分類として国際産科婦人科連合(International Federation of Gynecology and Obstetrics: FIGO)の分類が使われている。

ちなみにFIGOのAnnual reportでの5年生存率は、Ⅰ期69.4%、Ⅱ期48.8%、Ⅲ期31.7%、Ⅳ期12.6%である。

外陰癌の進行期分類

1994年FIGO進行期分類

0期:上皮内癌

Ⅰ期:外陰または会陰に限局した最大径2cm以下の腫瘍。リンパ節転移はない。
 Ⅰa期:外陰または会陰に限局した最大径2cm以下の腫瘍で、間質浸潤の深さが1mm以下のもの※。
 Ⅰb期:外陰または会陰に限局した最大径2cm以下の腫瘍で、間質浸潤の深さが1mmを超えるもの。
 ※浸潤の深さは隣接した最も表層に近い真皮乳頭の上皮間質接合部から浸潤先端までの距離とする。

Ⅱ期:外陰および/または会陰のみに限局した最大径2cmを超える腫瘍。リンパ節転移はない。

Ⅲ期:腫瘍の大きさを問わず、
(1) 隣接する下部尿道および/または膣または直腸に進展するもの。
  および/または
(2) 一側の所属リンパ節転移があるもの。

Ⅳa期:腫瘍が次のいずれかに浸潤するもの:
上部尿道、膀胱粘膜、直腸粘膜、骨盤骨および/または両側の所属リンパ節転移があるもの。

Ⅳb期:骨盤リンパ節を含むいずれかの部位に遠隔転移があるもの。


地方国立大で「地域枠」を創設・拡大する動き

2006年07月10日 | 地域周産期医療

 地方における医師不足の対応策としては、短期的には(地域内の総医師数を増やすことは困難であるので)、地域内に分散している医師を拠点病院に集約化する必要がある。

 しかし、根本的には地域内の総医師数が増えないことには解決できない問題なので、長期的対策としては、地域内の総医師数を増やしてゆく方策もいろいろと考えてゆかねばならない。

 現状では、地方国立大学医学部は、都会の受験生の滑り止めという位置付けになっている場合が多いので、医学部卒業と同時に多くの者が去ってゆく。中には、卒業生の大半が地域に残らない大学もある。

 今後、地域に定着する医師を増やすさまざまな取り組みが必要であるが、医学部の入学者選抜における「地域枠」の創設・拡大もその一つの試みである。

****** 読売新聞、2006年7月8日

医師不足で国立大3校医学部が県内者推薦の「地域枠」

 医師不足に悩む自治体などの要望を受け、地方の国立大学3校の医学部が来年度の推薦入試で、県内高校出身者に限定した地域枠を設ける予定であることが7日、文部科学省のまとめでわかった。

 また、既に導入した国公私立大16校のうち国立4校が地域枠を拡大する方針で、地域に定着する医師を増やそうとする取り組みが本格化している。

 地域枠を新設するのは、富山、山口、大分の3大学で募集人数は計21人。

 弘前、信州、三重、島根の4大学は地域枠の募集人数を5~8人ずつ増やす。

(読売新聞、2006年7月8日)