ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

医学部の「地域枠」急増

2006年07月30日 | 地域医療

卒業生達が県内に多く残留してくれるかどうか?は、地方の医学部にとってはまさに死活問題ですから、最近は、全国の大学医学部が、最重要課題として、非常に熱心にこの問題と取り組み始めたように感じています。

医学部入試の「地域枠」拡大も、その多くの試みの中の一つだと思われます。将来の地域医療を支えてくれる後継者達を養成するために、長期的な展望に立って、じっくりと取り組んでいっていただきたいと思います。

我々一般病院の医師達も、臨床実習の指導などで全面的に協力し、若い医学生達に地域医療の現場を実体験してもらい、将来は一緒に頑張ってもらいたいと願っています。

本音を言えば、個人的には、将来の専攻科が産婦人科であってくれたら一番うれしいのだけれど、小児科医や麻酔科医なども増えてくれないと話になりませんから、この際、別に産婦人科志望でなくてもいいから、とにかく、卒業後に県内に残留してくれると非常にありがたいと願いつつ、若い医学生達と接しています。

最近、当科に実習に来た医学生達(5年、6年)に進路を聞いてみると、例年よりも比較的多くの者が『卒業後は県内の病院で研修する』と言ってます。また、『将来の志望科として、産婦人科を考えています!』と断言する学生もけっこういます。

****** 読売新聞、2006年7月29日

医学部の「地域枠」急増

地方の医師不足解消策 定着には課題

 地方の医師不足を解消しようと、医学部の推薦入試に、地元高校出身者などに受験者を限定した「地域枠」を設ける大学が急増している。(地方部 上田詔子)

 今年度の入試で、秋田大や宮崎大など9校が新たに地域枠を設け、導入校は前年度の7校(募集人数56人)から16校(同121人)へと、一気に倍以上に増えた。来年度はさらに3校が新設するほか、4校が募集枠を拡大する。

 厚生労働省によると、医療に従事する医師は、年4000人のペースで増えており、人口10万人当たりの医師数は、ほぼすべての都道府県で増加している。しかし、大都市圏と地方との医師数の格差は大きく、政令市は全国平均の1・25倍、東京都区部では1・53倍にもなる。さらに地方では、県庁所在地などの都市部と町村部で医師の偏在化が深刻化している。

 医学部には、都市部から学生が集まる傾向が強い。医学部のある国公私立79校で、地元出身者は3割程度。さらに卒業から10年後、大学のある都道府県に残る割合は、地元出身者が78%なのに対し、地元以外は40%に過ぎない。

 こうした事情から、「地域枠」への期待は大きい。しかし、地域枠で入学しても地元に残る義務はなく、“残留率”を上げるためには、さらに工夫が求められる。

 その一つとして、厚労省の「医師の需給に関する検討会」は28日、地域枠と組み合わせた奨学金制度を推進すべきだという報告書をまとめた。奨学金の返済免除と引き換えに、地元医療機関で一定期間勤務してもらい、医師を確保しようという狙い。すでに秋田、鳥取など5県が同種の制度を設けている。

(以下略)

(2006年7月29日  読売新聞)