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助産師の活用についての私見:
総合病院の中のチーム医療として、産科医、新生児科医、麻酔科医との緊密なタイアップのもとで、助産師の活躍の場を広げてゆくことは非常に大切です。しかし、産科医不在の病院の中で、助産師を単独で活用しようとしても、助産師単独では患者の急変時に十分な対応ができないという大きな問題があります。
産科医、新生児科医、麻酔科医などの医療チームとの緊密なタイアップがあってこそ、助産師も思う存分に活躍できます。従って、産科医不在となった病院の助産師達を有効に活用しようとするのであれば、その病院の助産師全員が、即刻、産科医のいる病院に移籍するのがベストだと思われます。すなわち、今後は、産科医の集約化だけではなく、助産師の集約化も非常に重要だと思います。
『産科医がいなくなってしまったので、地域住民のために助産師だけで頑張ってくれ』というのでは、全くの丸腰で兵士を激戦地に送り出すようなもので、全員玉砕は間違いないです。
助産師は地域にとって非常に貴重な人材です。彼女達を地域の中でいかにして有効に活用するのか?をよくよく考えるべきだと思います。
****** 毎日新聞、2006年7月30日
産科医が足りない/秋田
秋田大からの産科医師派遣が9月で中止される大館市立扇田病院の対応を検討する医療関係者の協議会が過日あった。医師不足は全国に広がる現象だが産科医療現場からの声はあまりにも切実だった。
産科医療に定評があった扇田病院。大館鹿角地区の3病院での年間分べん件数は昨年1012件。このうち扇田病院は474件で約46%。最近5年の年間分べんは500件以上をコンスタントに扱う県北地区では産科医療の中心的存在だった。だが産科医師2人が9月で不在となる。大本直樹院長は「派遣中止はあまりに唐突」と大学側の体制に疑問を投げた。今後対応として「9月以降に助産師外来の開設を検討したい」と述べた。20週から40週の安定期に入った患者の検診を助産師が外来で対応するとの考えだ。
助産師は看護師の免許取得後、助産の専門教育を受けた女性だけに与えられる資格。席上、産科医療では卓越した技術を持つ田中俊誠・秋田大医学部教授も「お産のプロである助産師の活用は医療現場では一番大切」と助産師外来へ理解を見せた。
現在県北で出産を扱う医療施設は7施設で常勤の産科医師は13人いる。県助産師会大館北秋田支部によると出産の約99%は病院で行うのが通常。現場での助産師の存在は欠かせず「高リスクの出産を除いては助産師が対応するのがほとんど」という。分べんは産科医師、麻酔医師に加え小児科医師の参加も必要なチーム医療が必要な分野。その中でも助産師の存在は今後ますます必要、との方向でまとめた。
「医は仁術」との例えがある。医は人命を救う博愛の道との意味だが、優れた医者は技術もあるが患者の心をとらえるすべにもたけているとのとらえ方だ。医療技術が日進月歩となっている現在、患者の不安を除去するのに、医師数の充足は最低限必要なことだ。一自治体だけでなく国レベルでの問題解決が迫られている。【村川幸夫】
(毎日新聞、2006年7月30日)
****** 毎日新聞、2006年7月7日
県と大館・鹿角両市などの産科医療関係者でつくる「大館鹿角地域産科医療体制検討会」の初会合が6日、大館市内で開かれた。
秋田大から大館市立扇田病院産婦人科への産科医師派遣が8月末で中止されるのに伴うもので、関係者23人が協議。鹿角組合総合病院の産科医師が9月以降、1人増員され2人体制になるのを受け、大館市立総合病院との連携で分べん受け入れの増大を図ることを決めたほか、産科医師確保▽助産師活用--などに取り組むことを確認した。
扇田病院は秋田大から2人の医師派遣中止の通告を受けて、9月以降の産科診療の継続が困難な状況にある。市は対応策として総合病院の機能拡充で可能な限りカバーし、市内の人の分べんを優先。「市外在住者は原則として断り、里帰り出産も制限する」との方針を示している。
市立総合病院によると昨年度の総分べん件数は総合病院が309件。これに対し扇田病院は総分べん件数が474件(市内分280件、市外分194件)。2病院で北秋田地域の大半を取り扱うのが現状だ。一方、この10年間で県全体では産科医師は17人減少し、昨年の産科医師数は97人となっている。【村川幸夫】
(毎日新聞、2006年7月7日)