助産師の養成は、従来、看護師免除を取得した者が入学する助産師専門学校や短大助産専攻科が担ってきました。しかし、最近、助産師の養成の主役は4年制大学となってきて、助産師専門学校や短大助産専攻科の閉校が相次いでいます。そのため、看護師が助産師を志そうと思っても、非常に狭き門で、道はほとんど閉ざされているような状況となりつつあります。
4年制大学での助産師養成のカリキュラムは超過密で、助産実習もせいぜい3ヶ月程度のことが多いらしいです。しかも、助産師になりたいから助産師課程を選択するというわけでもなく、『せっかくだから、看護師免許だけでなく、助産師免許、保健師免許もついでに取得しておこう』という単なる資格マニア的な者も少なくないらしいです。
『4年制大学での助産師教育は詰め込み教育となり、助産師としてのアイデンティティが育ちにくい』、
『大学卒業の助産師学生の35%は助産師として働かない』、
『大学での助産教育は過密で、分娩介助実習が十分にできないなど問題点が多く、大学の中で助産教育を行うことは望ましいと言っている大学教員はたったの7%である』
などの調査結果もあります。
現実の出産の現場で助産師数が圧倒的に不足しているのに、看護師が助産師に転身する道がほとんど閉ざされている現在の状況には問題があり、今後、看護師に対する助産師教育への門戸をもっと広げてゆくべきと考えます。
****** 読売新聞、2006年9月8日
助産師はいま 看護師からの転身 狭き門
養成の主役 「4年制大学」に
(略)
1992年、国が看護職員の質向上のため、看護教育を4年制大学で行う方針を打ち出した。
これに伴い、4年制の看護系大学が数多く設立された。短大の助産師専攻科や、助産師学校の多くは、そこに吸収された。それまでは、まず看護教育を終えた上で、助産師学校に進むのが一般的だったのが、4年制大学で看護師、助産師、保健師という三つの資格を取る方式が主流になってきた。
助産師課程を持つ4年制大学が、98年の34校から2005年は87校に2倍以上に増えたのに対し、助産師学校は、47校から34校に、短大専攻科は35校から22校に激減している。
(中略)
4年間で三つの資格を取得する大学のカリキュラムは「過密すぎて技能が十分身に着かない恐れがある」という産科関係者の指摘もある。厚生労働省が今年3月に設置した「看護基礎教育の充実に関する検討会」では、助産師を養成する仕組みの見直しについても話し合われている。委員からは「『医師の手助け』という位置づけではなく、能力ある助産師を育てられるよう、教育の充実を図る必要がある」との意見が出ている。
(読売新聞、2006年9月8日)