従来は、産婦人科を志望する者の多くは、出身大学の産婦人科に入局して研修を開始し、医局人事で関連病院を数年づつ回って、それぞれ経験を積んで、各自の最終的な就職先も大学の医局が決めてきました。
私自身、大学を卒業した時に出身大学の産婦人科に入局し、いくつかの関連病院での研修、大学での数年間の研究生活を経て、ある日突然、教授室に呼ばれて「来月から○○病院に赴任しなさい」という教授の一言で、新天地である現在の病院に一人医長として赴任し、そのまま当地に留まり現在に至ってます。当時は、一体全体、自分が将来どの病院に就職するのか?は赴任の直前まで全く見当もつかず、突然の教授の一言で全てが決まるというシステムでした。医師個人が自分の就職する病院を選択する自由は全くありませんでした。
この医局人事システムがくずれ始めて、特に地方病院には新たな産婦人科医が回ってこなくなってしまい、全国的に産婦人科病棟の閉鎖が相次いでいます。
今後、地方病院の産婦人科を維持してゆくために、一体全体、我々はどうしたらいいのでしょうか?今後、大学からの医局人事が維持されるという保障は全くありません。ある日突然、大学から「医師派遣の打ち切り」を宣告される可能性がありますが、それは全く予測できません。また、地域住民の署名活動だけでは、状況は全く変わらないと思います。
最近、臨床研修制度が大きく変わって、研修医自身が自分の研修する病院を自由に選べるようになりました。従って、今後は、まともな研修ができないような病院に研修医達が多く集まる筈がありません。
当院では、新臨床研修制度が開始されてから、院内に若くて元気な研修医や医学生が大勢あふれるようになり、沈滞ムードだった病院が活性化され、以前と比べて病院の雰囲気が格段によくなった気がしています。世間では非常に評判が悪いことは確かですが、『この新しい制度も決して悪くはない』というのが正直な私の感想です。制度が大きく変わったのであれば、この新しい制度に柔軟に対応して、病院の体制を大きく変革してゆくしかありません。
産婦人科を志望する研修医の数は以前と比べて減ってないということであれば、今後の地方病院・産婦人科の生き残りのためには、病院の産婦人科・研修体制を強化し、産婦人科を志望する研修医達が是非この病院で研修をしたいと思うような、研修体制の充実した病院に大変身してゆかねばならないと考えています。
****** 産経新聞、2006年8月31日
重労働でも意外に多い小児科・産婦人科希望 厚労省調査
重労働のため敬遠されているとされる小児科と産婦人科を選ぶ若手医師が意外と減っていないことが分かった。厚生労働省は31日、平成16年度に導入された新しい医師臨床研修制度に関する調査結果を公表した。
調査は今年3月、1年次(7526人)と2年次(7344人)の研修医に対して行われた。回収率は1年次が57・3%、2年次が51・9%だった。
2年次の研修医に対する調査で、32診療科のうち専門にしたい診療科のトップは内科(14・6%)だった。激務から不人気といわれる小児科は3位(7・5%)、産婦人科も8位(4・9%)と“健闘”した。
14年に20歳代の医師の診療科を調査したときに比べ、小児科と産婦人科はそれぞれ0・7ポイント増とわずかながらも増えており、厚労省は「医師数が減っているという傾向は出ていない」としている。
(以下略)
(産経新聞、2006年8月31日)