厚生労働省は、医師確保総合対策費として平成19年度予算で約1029億円を計上し、各都道府県に地域医療対策協議会を設置し、小児科医と産科医を都道府県単位で集約化・重点化する方針を打ち出すなど、医師不足、偏在を解消する対策に本腰を入れ始めました。
従って、今後、地域医療対策協議会で小児科・産科の集約化が必要と判断された医療圏においては、集約化が実行に移されてゆくと予想されますが、この集約化により、小児科医や産婦人科医が撤退していなくなってしまう病院や自治体、地域住民の非常に大きな反発が予想されます。
また、小児科医や産婦人科医が撤退した病院に長年勤務していたベテラン助産師達の処遇も、非常に大きな問題となるだろうと予想されます。
当医療圏の事例では、分娩の取り扱いを中止した施設に長年勤務していた助産師の多くが当院の正式職員(地方公務員)として採用されました。地方公務員の採用なので、年齢制限などのいろいろの制約があった筈ですが、今回に限り、超法規的に(50歳を過ぎている前の施設の看護師長も含めて)多くのベテラン助産師達が当院に移って来てくれて非常に助かってます。今回、当院に移籍して来てくれた多くのベテラン助産師達は、当科でも、毎日、生き生きと輝いて大活躍しています。「他の病院で、1人目、2人目の時にお世話になった助産師さんに、こちらの病院でもまたお世話になれた。」と感激する妊婦さんも非常に多いです。
分娩のほとんどは正常分娩なので、分娩件数の増加に対応するためには助産師の増員が非常に重要です。地域医療対策協議会の話し合いで、職場が変わってもこの仕事を続けたいと思うベテラン助産師さん達の便宜を最大限に図ることが非常に大切だと思います。その点で、市長だとか、市の衛生部長だとか、保健所長だとか、各医療機関の院長だとかの、関係する地域の重鎮の方々にも地域医療対策協議会のメンバーとなっていただくことが非常に重要だと今回実感いたしました。
それぞれの立場の利害を乗り越えて、『地域存亡の危機を、地域の皆の力を結集して、何とか乗り越えよう!』という視点が非常に大切だと思います。