ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

存亡の危機にある地域の産科医療供給体制

2008年05月30日 | 地域周産期医療

多くの病院で産婦人科が規模縮小~閉鎖に追い込まれて、全国各地で地域の産科医療供給体制が存亡の危機に直面してます。窮地に立たされている産科医療供給体制を今後どのようにして立て直していくのかという問題について、多くの議論があります。

行政で助産所の開設を資金援助して、助産所の新規開設を誘導することによって妊婦の受け入れ枠を増やし、何とか急場を乗り切ろうという動きも一部にあります。しかし、『地域内の助産所の数を増やせば、その分基幹病院の勤務医の負担が軽減する!』とは必ずしも言い切れません。場合によっては逆効果ということもあり得るかもしれません。行政側でこのような施策を決定する際に、『助産所からの母体搬送や新生児搬送を受ける立場にある産婦人科医、新生児科医の意見は十分に取り入れられたのか? 母児の安全性について少しは検討したのか? この問題について行政と医療関係者との間で十分な話し合いがあったのか?』というような点が少し気になります。

****** 信濃毎日新聞、2008年5月29日

伊那市が助産所の補助制度新設へ 医師不足受け

 伊那市は、市内でお産を扱う助産所への補助制度を新設する方針を決めた。6月市議会に費用750万円を盛った補正予算案を提出する。産科医不足で病院の負担が増していることから、助産所の施設整備や備品購入を支援することで、受け入れ態勢の充実を図る。県医療政策課によると、助産所を対象とする補助制度は県内で初めて。

 1カ所当たり250万円を上限に、経費の2分の1を補助する。制度を設ける期間は5年間とする予定。金額が上限に達するまで数回に分けて補助を申請でき、段階的に設備を充実することも可能だ。超音波診断装置や分娩(ぶんべん)監視装置の購入、建物の改修などへの利用を想定し、既に整備済みの設備や機器についても本年度当初までさかのぼって申請を受け付ける。市内でお産を扱う助産所は現在、今春開業した2カ所を含め計3カ所。補正予算案には3カ所分を計上する。

(以下略)

(信濃毎日新聞、2008年5月29日)