ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

静岡県立こども病院: 配置転換訴訟初弁論、病院側全面的に争う

2009年08月04日 | 地域周産期医療

静岡県立こども病院 「配置転換は不当」 病院機構を提訴

静岡県立こども病院NICU 新規患者は静岡市内のみ受け入れを継続

静岡県立こども病院NICU、新規患者の受け入れを休止

****** 読売新聞、静岡、2009年7月11日

こども病院配置転換訴訟初弁論

病院側全面的に争う

 勤務していた静岡県立こども病院(静岡市葵区漆山)から異動するよう不当な配転命令を受けたとして、同病院新生児未熟児科の前科長の男性医師が、同病院の院長と、同病院を 運営する独立行政法人県立病院機構を相手取り、配転命令の無効確認と慰謝料など550万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が10日、静岡地裁(松村秀樹裁判官)で あった。被告側は請求棄却を求める答弁書を提出し全面的に争う姿勢を見せた。

 訴状によると、前科長は1992年から同科に勤務していたが、今年3月10日、県立総合病院(同区北安東)への異動を内示された。

 訴状では、院長が原告に「クレームが多い」と繰り返し話したりうそのメールを他の医師に流したりするなど、退職に追い込もうとする不当な行為を続けていた、と主張。「原告 は新生児や未熟児の専門医で、配転には業務上の必要性がなく、配転命令は、原告を退職させようと狙ったもの。原告の配転を不当として、同科の医師らが退職し、県中部地域の 周産期医療が崩壊した」として、配転命令の無効を訴えている。

 これに対し被告側は答弁書で、「院長は原告に対し退職勧奨は一切行っておらず、配転命令は業務上必要だった。病院のNICU(新生児集中治療室)への患者受け入れを制限せ ざるを得なくなったのは、突然辞職した医師らの身勝手な行動が原因」と主張している。

 同病院では今年3月末、前科長の配転が決まったことをきっかけに、7人いた新生児未熟児科の医師のうち5人が退職や異動で同病院を去った。その後2人が補充され現在は4人 の医師がいるが、同病院はNICUの患者受け入れを4月13日以降、静岡市内の患者のみに限定している。前科長自身は現在、県立総合病院に在籍しているが、休職中という。

(読売新聞、静岡、2009年7月11日)

****** 毎日新聞、静岡、2009年7月11日

県立こども病院損賠訴訟:病院機構側、争う姿勢--第1回弁論

 県立こども病院(静岡市葵区)新生児未熟児科の前科長(47)が、退職を不当に迫られ、精神的な苦痛を受けたなどとして、同病院の院長と独立行政法人県立病院機構を相手取り、550万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が10日、静岡地裁(村松秀樹裁判官)であった。病院機構側は、請求の棄却を求めて全面的に争う姿勢を示した。

 訴状では、前科長は08年11月ごろから院長に退職を繰り返し迫られ、今年4月、県立総合病院の実体のない診療科へ異動させられたとしている。

 病院機構側は「業務上の必要性から配転命令を出した。新ポストは実体がある。退職を迫ったことはない」などと反論した。【山田毅】

(毎日新聞、静岡、2009年7月11日)

****** 静岡新聞、2009年6月27日

こども病院NICU、来月以降も新患制限

 県立病院機構は26日、こども病院(静岡市葵区漆山)の新生児集中治療室(NICU)について、7月以降も引き続き、新規患者の受け入れを静岡市内だけに制限すると発表し た。7月から新たに医師2人を確保し、NICUの担当医を4人体制にするが、「専門的な治療の提供には十分ではない」として新患制限を継続する。

 7月に新たに着任する医師は常勤と非常勤が1人ずつ。このほか、院内の他科から医師6人が応援に回る。

 市外の患者については、最も危険度が高い出産に対応する「総合周産期母子医療センター」に指定されている順天堂静岡病院(伊豆の国市)と聖隷浜松病院(浜松市)が対応する 。こども病院は「今後も医師の増員に努め、できるだけ早期に十分な診療態勢を確保したい」としている。

 こども病院は県中部で最も重症の新生児を担当してきた。人事をめぐるトラブルなどで4月、NICU担当の新生児科医が7人から2人に減った。吉田隆実院長は当初、「6月中 に診療態勢の立て直しを図りたい」としていた。

「情報ない」 親の会不安

 県立こども病院のNICUは十分な医師を確保できず、以前の診療機能を回復できないでいる。志太榛原から富士地域までの県中部には、1000グラム未満の早産児や重い疾患 がある新生児を受け入れる医療機関が、同病院のほかにない。常時、医師不足の状態にある周産期医療の各現場が補完し合って、この間、何とか診療をやり繰りしてきた。

 早産で糖尿病を患っていた妊婦1人を順天堂静岡病院に搬送した富士市立中央病院の幹部は、「順天堂が受け入れてくれたので良かったが、今後、もし順天堂がパンクしてしまっ たら大変な事態になる」と話した。静岡市立静岡病院の担当医は「遠方の病院は搬送に伴うリスクや家族の負担が大きい。できるだけ早く態勢を回復してもらいたい」と話した。

 こども病院にかかった子どもの家族が集まる「未熟児で生まれた子どもと親の会」の小林さとみ代表(42)=静岡市=は「これからどうなるのか情報がほとんどなく、戸惑いと 不安な気持ちでいる」と話した。

 今回の診療縮小は、3月まで同病院に在籍していた新生児科の元科長(47)の異動を命じた病院側と、それに反発した医師らの対立が背景にある。同病院に医師を派遣している 日本大小児科の医局は「一連の原因は県立病院機構とこども病院側にある。常勤医は当直を月9回こなすなど、激務も限界にきている。看過できない」としている。

(静岡新聞、2009年6月27日)