昨日、研修医との会話の中で、「ホメオパシーって何だか知ってる?」と聞いてみたところ、その研修医曰く、「はっ? 何ですかそれは。初めて聞きました。」
その時は、「えっ、今、世間でこんなに話題になっているというのに、君は全然知らないの?」と唖然としましたが、よくよく考えてみたら、私自身も先月までは「ホメオパシー」という言葉は全く聞いたこともなかったし、朝日新聞では日本学術会議の会長談話が第一面のトップ記事として大々的に報道されましたが、同じ日の他の新聞ではそんなに大きく報道されてませんでした。
朝日新聞のホメオパシー関連の一連の特集記事を読んで、ホメオパシー信仰にはまっている助産師が少なくないことを初めて知り、私もこの問題に関心を持ちました。
昨日、長年一緒に働いてきた超ベテラン助産師と話す機会があったので、日本助産師会について聞いてみたところ、「病院勤務の助産師は日本助産師会に所属している者はむしろ少ないと思います。私も最初から日本助産師会には所属しませんでした。日本助産師会の会員にはホメオパシーにはまってる人が多いようですよ。でもまさかKさんまでホメオパシーにはまっていたとは、全く知りませんでした。私には全く理解できません。」などとぼやいてました。
****** 朝日新聞、アピタル特集より引用
日付・場所 2010年8月24日 日本学術会議大会議室
出席者 金沢一郎・日本学術会議会長
唐木英明・日本学術会議副会長
(前略)
唐木 一番大事なところは、たぶん会長談話の一番最後の3行になります。ホメオパシーの治療効果は科学的に明確に否定されています。それを「効果がある」と称して治療に使用することは厳に慎むべき行為です。このことを多くの方にぜひご理解いただきたいと思います――というのが、一番大事なところだと思います。
(中略)
記者2 朝日新聞の岡崎と申します。2点ありますが、まず1点、なぜこのような会長談話をいまのタイミングで出されたのか、その背景について教えてください。
金沢 あの、これはですね、学術会議っていうのの役割と関係があるんですけどね、いくつか役割があるわけですが、たとえば政策提言ですとか、そのなかの一つに「科学リテラシーの向上」というのがあるんですよね。まあちょっと、リテラシーという言葉が適切ではないかもしれないけれども、国民のみなさんが科学に対してもっている力っていうかね、それを向上させた方がいいと。科学をもっときちんと理解していただくのがいいと。そういう役割があるんですね。そういう意味でですね、たとえばサイエンスカフェだとか、サイエンスアゴラだとか、いろいろやってはいるんですけどね。そうはいうものの、ものを申さなければならない場面というのがあるわけですよ。たとえば、これはいい例かどうかわかりませんけれども、当時の委員だった唐木先生がまとめられたんですが、BSEに対するまとめとか、最近まとめた遺伝子改変作物のまとめなどがあるわけですね。そういう科学を無視してくださらないでちゃんと理解してください、ということを言い続ける義務があるわけです。学術会議にはですね。
その一環として、いろいろなものを見ていくんです、常に。そのなかの一つにホメオパシーがありました。えー、ところがですね、ご存じのように事件が起こった。で、これは放置するわけにはいかないと思って出したわけです。もちろん決着がついていない、ということはよく知っています。しかし、さきほど最後の3行が読まれましたけれども、やはり医療関係者がこれをすすめるというのは非常に問題がある、ということであります。
記者2 2点目の質問なんですが、この談話を出すだけでなく、たとえば実態調査なり、または厚労省への働きかけとか、学術会議として何かアクションをすることは。
金沢 わかります。大変わかるのですが、あの、談話を出すことがファーストステップだと思います。さきほど「科学リテラシーの向上」といいましたが、誰が向上するのかというとそれは厚労省の方なんで、向上してもらいたい。直接自分で聞いたわけではないですが、厚生労働大臣がなにか口走ったことがあるようで、それはやはり、向こうで考えてもらわないといけない。名指しをする必要はないでしょう。わざわざ反発を招く必要はない。むしろ理解してくださるのが本来の形ではないかと。
(中略)
記者4 先生の眼から見ると科学的ではないものが、一方では日本でも世界でも多くの方に、まあ日本ではそれほど多くないと思いますが、世界で一定の影響力をもっているということは、どういう背景があるのだと、いま認識されていらっしゃるのか。
金沢 それは難しい質問ですね。社会学的な考察が必要かもしれませんね。ハーネマンがこういうのを考えついた背景には、当時は本当に西洋医学というものがほとんどない時代ですから、当然といえば当然かもしれないが。いったん、しかし、西洋医学がこういうものを排除した歴史はあるんですよね。最初ゼロからこういうものがスタートして育ってきている、というわけではない。いったんこれはしずまっているんですよ。それがまた盛り返してきている、というように見えるのがたぶん大事なポイントなんだろうと思います。
それは、反省すべき点がないとはいえない。西洋医学が、患者さんたちに、苦しい思いをしている方々に、どういうアプローチをしてきたかということは、確かに問題になるかもしれません。ただそのこととですね、いいですか、そのことと、科学的に否定されていることだっていいではないか、ということは別物です。ここはあなた方には区別してもらわなければならない。科学を無視してはいけない。そういうことです。あえてここには入れておりませんが、そのほかの替わりになるいろいろなものがありますよね。それをあえて入れていないのはですね、必ずしもみんな、科学的に否定されているものではないからです。これはちょっと余計なことを言ったかもしれないけれども、科学的に否定されたものを、信じさせてはいけません。そういうことです。
(後略)