月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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アルフェラッツ・15

2016-09-27 04:21:06 | 詩集・瑠璃の籠

馬鹿が
悲劇に酔っている間は
自分を忘れることができるのだ

どんなことをしたから
こうなったのだという
自分に起こった悲劇を
まるでそれをはたから見ていた
観客だというようなふりをして
自分をだまして
何度でも繰り返し語っている
その間はいいのだ

少しでも
目を覚まさせようと
おまえがそれをやったのだと
真実を言うと
そいつは途端に
とち狂い始める
本当の自分の姿を
見たくないばかりに
自分を劇外にいる
全く関係のない存在にしていたのに
真実の中に放り込まれる気配を感じると
存分に嫌なことを初めて
世界をかき回し始める

苦しい
苦しい
自分であることが
苦しい

嫌なのだ
放っておいてくれ
馬鹿になって
忘れてしまいたいのだ

それがあまりに馬鹿なので
あらゆる人間が
こいつはだめだと言って
離れていく
そんな世界にいたいのなら
永遠にそこにいるがいい
もう人間はみな
違う世界に進んでいくのだ
誰も残りはしない

馬鹿はいつまでも
幻の劇を見ているがいい




コメント
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