月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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テグミン・13

2022-01-24 05:27:37 | 詩集・瑠璃の籠

神のふところの
銀の壺を壊し
おまえは神の家を出た

荒野をさすらい
盗んだ宝で着飾り
言い訳の酒を飲み
つぶれてゆく自分の音におびえながら
吹きすさぶ矛盾の風の中で
踊っていた

荒野の空に
幻の太陽を描き
愛を真似した嘘を吐きながら
これでいいんだ
これでいいんだと
自分の耳にささやいていた

哀れな愚か者よ
幻の太陽は
決しておまえを照らしてはくれない
愛のない暗闇の片隅で
酒瓶を抱きながら眠っている
おまえの元に神の便りが届く
本当にそれでいいのかと

おまえは手紙を握りつぶしながら
また酒瓶に顔をつっこむ
忘れたいのだ
こんな馬鹿なことをしている
自分のことなど
永遠に忘れたいのだ

夢の中でおまえは
すべてを支配できるひとつ神となって
自分の罪を許そうとする
だが
どうしてもそれを許せないものが
おまえの中にいる
それはだれだ
それはだれだ

自分の影から
永遠に逃げようとする自分を
許さない自分が
自分の中にいる

それこそが
本当の自分なのだ




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