宮本輝の「水のかたち」を読んだ。
大好きな宮本輝。だけど、今作は、、、
主人公が50歳の主婦と、多少私より先輩だけど、まあ同じ主婦なので主婦目線で読んで、なんだか納得いかないことばっかりで、心の中でツッコミを入れながら読んだ。
面白いんだけど、ちょっと盛りすぎだと思う。
まず、主人公の主婦、能勢志乃子がツキすぎている。
とある喫茶店で、目に止まった鼠志野の茶碗を店主がいらないからと貰ってくるところから始まり、それがなんと3千万で売れたのだ。
まずそこから、えーー!!?なんだけど、またいい人ぶって、そのお金を元の持ち主に
渡そうと思いながらも、店主は引越してしまって見つからない。
そこに謎の美女現るも、その美女の正体は陳腐なものだったし、(いる??この人、この話にいる??)
そもそも、本気で探したいなら、そのお金で探偵でも雇えばいいじゃん、ともどかしく思う。
一番腹立たしかったのは、その店主を探してるうちに、同じくその店主から花瓶を買った人がいて、その花瓶を見るや売れるかも!!と興味を持ち、その人が首を縦に振ってるうちにすばやく買い取り、それをまたすごい値段で転売した後、善人ぶって、売れたお金の半額くらいをその人に渡すんだけど、(持ち主には実際いくらで売れたかは教えていない)何だか、その店主から無理矢理もぎ取った風で本当に嫌だった。
更には、学生時代以来会っていなかった友達と急に会いだして、その友達は駆け出しだけど、凄腕のジャズシンガーで、志乃子の家の店子の不動産屋で働く19歳の早苗ちゃんを何故か急に見染め、マネージャーに引き抜く。早苗ちゃんは免許合宿で免許を取った後、初めて運転するには大変だろうなと思われるすごいデカい車をマネージャーとして乗り回す。
更には、その五十何歳かの不動産屋の親父は20代の娘と出来ちゃった婚。
最初の結婚では子供はいなかったので、50代にして初めて父になる、喜びのわりには、生まれて最初の正月なのに、志乃子の旦那、平気で麻雀に誘ったり・・
今の感覚では、ないでしょ、それーーと思うこと多々。
最後、息子も付き合ってた学生の子を妊娠させるも、親としてその態度??って、もう最初から最後までツッコミ通しで読んでて疲れた。。
うーん、どうしてこんなに盛り込んじゃったんだろう・・
子供との関係性も同じ主婦目線で見て妙に希薄だし、終いには、神田にある物凄い素敵な喫茶店を引き継ぐという無茶苦茶なストーリー展開。
私が編集者なら、先生、ちょっとって言いたい。けど、大先生だから、そんなこと言えなかったのか??
でも長年の一読者として、今作はちょっと、いや、かなり残念に思えた。
朝鮮からの引き上げ話(実話)を一番に描きたかったのかな、と思うので、茶碗の下りなどはいらなかったのかも、、
面白いっちゃ面白いのに、ストレス溜まる、そんな作品でした。
追記
東京在住の主人公が茶碗のことやらで京都に行くんだけど、京都好きとは一言も書いてない割に、京都を知ってる風で、しかも新幹線でやたら日帰り往復したり、普通の50歳の主婦なら、せっかく京都行ったら、ついでに清水寺とか二条城とか行ったりしないともったいないって思うんじゃないかなー、とかその辺も謎でした。
宮本先生の庶民感覚の欠如がこの小説を書かせたのかもしれない。