五感で観る

「生き甲斐の心理学」教育普及活動中。五感を通して観えてくるものを書き綴っています。

有馬の湯のおもてなし

2014年10月01日 | 第2章 五感と体感
有馬温泉の宿に着くと、まず目に入ったのが、フロントの壁に掛かる奈良画の掛け軸です。
漆塗りの長椅子におかれた白い陶器の鉢に有馬の野草が活けられ、喫茶室に通されると、李朝の棚に華道家の本が置かれてあります。
目を喫茶室の奥の壁に向けるとリーウファンのドローイングが目に入り、その作品をひきたたせるように花が活けられています。

旅館にしてもホテルにしても、花と花器と背景の作品と壁、諸々の設えのバランスに心を籠めた空気を感ずるところは希少です。
心をこめてもセンスが無いと、こんなものなのよね。。。と、美に対する解釈の違いだと諦め気分になります。
「設え」というのは、それだけ難しいものなのでしょう。

有馬の老舗旅館のご主人が14年前にテレビで出合った「これだ!」という華道家に弟子入りし、学び続けていらっしゃるそうです。
奇しくもその華道家は私が姉のように慕う友人の師匠でもあり、活けることについて、私自身も友人から四半世紀以上話を聞き続け、作品を観続けてきました。

有馬の旅館で、息の合うというか、自分の体感に塩梅良い浸透圧を感ずる設えに出合い、大変嬉しく思いました。

中大兄皇子、大海皇子が天智、天武となる前に訪れていた有馬の湯。そこに額田王、持統となる鵜野、謀反の罪で殺される有馬皇子、そして斉明天皇もおられたはずです。
山深い有馬まで女性達がよくも歩いたものだと感心しながら宝塚駅からバスに揺られ山越えをし、そのような妄想を体感して愉しもうと友人と訪れた有馬の湯でありましたが、思わぬ素敵な出会いで、現世をも愉しむこととなったのです。

有馬温泉は太閤の湯として有名で、黒田官兵衛も幽閉から解かれた後、ここで療養しました。
とはいえ、「私達は、有馬皇子ね」と、息投合し、金の湯、銀の湯に浸かったのでありました。

その日の月は三日月で、ふと空を見上げると南の空に煌々としておりました。
都会の喧騒から解き放たれ、しんとした宵のなんと心地の良いこと。
有馬の湯の効用は、当分の間心身に貯金できそうです。

息の合うおもてなしに感謝しております。お金を貯めてまた行きたいです。


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