今から30年前の1993年9月19日、タイで行われた試合結果です。
WBCストロー級戦(現ミニマム級):
王者リカルド ロペス(メキシコ)TKO11回2分30秒 挑戦者トートー ポーポンサワン(タイ)
*最軽量級の帝王ロペスが敵地タイに乗り込み、圧倒的な強さを見せつけ防衛記録を8に伸ばしたこの試合。いくら地元での試合だったとはいえ、プロ僅か5戦目で34戦全勝のロペスに挑むのはあまりのも無謀過ぎました。
この一戦は比較的屋外での試合が多いタイで、珍しく屋内で行われました。当時のロペスはサウスポー(左構え)が苦手と言われていました。しかしこの試合を観ると、この後のロペスと比べると及ばないかもしれませんが、サウスポー選手に対しての苦手意識というものは全く見られませんでした。
(サウスポーを全く苦にしなかったロペス)/ Photo: youtube
ほかの試合と同じように、どのラウンド前でも高々とガードを上げて各ラウンドに臨んだロペス。ロペスとトートーの実力差はあまりにも開きすぎていましたが、そんな格下相手にもロペスは慎重なボクシングを貫き通しました。
スピード差が歴然としていた両者でしたが、それでもロペスはコツコツの鋭い左ジャブを出し続け、タイ人を寄せ付けません。ジャブに続いての右ストレートも普段通りに強く、そして的確。しかしこの試合でロペスが多用したのは左右のアッパーカットでした。ロペス特有の天井に突き上げるようなアッパーで、タイ人の顎を打ち上げ続けます。
レベルの違いすぎる相手だったためか、普段以上に攻撃色が強かったロペス。しかしその卓越した防御技術に注意を怠ることはありませんでした。高くて固いガードを駆使しながら、ウェービング、ダッキング、そして軽やかなフットワークからのポジショニングでほとんどパンチを貰いませんでした。そして初回から一方的な試合展開も、回を追うごとにさらに広がっていくことになりました。
試合が挑戦者の地元で行われたためか、名レフィリー・アーサー マーカンテン氏(米)もストップするタイミングが、米国で行われる試合より遅くなりました。結局終盤11回の後半のストップでロペスが大勝することになりましたが、頑張りすぎたタイ人は試合後、病院に直行することになっています。
(今回、ロペスの餌食となったトートー)/ Photo: BoxRec
格下相手ながらも日本人選手を始め、多くの国の選手にとり鬼門とされるタイで圧倒的な強さを見せつけたロペス。敵地での過酷な環境でもその力を存分に披露し、技術面に加え精神面でもまた一つ強さを増した感があります。そしてロペスはこの試合後、いよいよ本格的に本場アメリカのリングへの進出を図ることになりました。