今から30年前の1993年12月4日、米国ネバダ州で行われた試合結果です。
WBCフェザー級戦:
挑戦者ケビン ケリー(米)判定3対0(116-111、115-112x2)王者グレゴリオ バルガス(メキシコ)
*この年の4月に、敵地アイルランド(実際は両者にとり第3国)で強豪ポール ホドキンソン(英)を破りWBCフェザー級王座を獲得しているバルガス。世界王座を獲得する以前から非常に評価が高く、王座獲得後は長期政権も期待された実力者です。バルガスが初防衛戦に迎えたのは、指名挑戦者でこちらも高い評価を受けていた実力者ケリー。初冬にラスベガスのリノで、屈指の好カードが実現しました。
序盤戦をリードしたのは「フラッシングの閃光(The Flushing Flash)」の異名を持ったスピードスター・ケリー。そのサウスポー(左構え)スタイルからのスピードに乗ったボクシングでバルガスを翻弄していきます。「このまま挑戦者のペースで試合が終わってしまうのでは?」と思われましたが、バルガスが中盤戦からエンジンを上げていきました。王者は6回からボディーに攻撃の的を絞りだし、試合の流れが大きく変わっていきます。
(スピーディーなボクシングで、前半戦を支配したケリー(右))/ Photo: Ring Magazine
強打者であり、好打者のバルガスのボディー攻撃はすぐに功を奏し、7回には挑戦者はロープを背負うなど明らかにダメージを被り始めました。しかし最強挑戦者の呼び声が高かったケリーも意地を見せます。続く8回、ケリーにとり苦しい場面が続きましたが、その回の後半にはバルガスのお株を奪うボディー攻撃でポイントを奪い返します。
8回からはバルガスの右目下は腫れ始め、挑戦者がペース奪回したかに思われました。そんな中続く9回、ケリーがジャブ・ストレートのワンツーを放つと、そのパンチの後にバルガスがワンツーをお返しし、見事なダウンを奪うことに成功。王者が再度ペースを取り戻すという、何とも目まぐるしい主導権争いが続いていきました。
(右目下を腫らせながらも、ケリー(左)を激しく攻め立てるバルガス)/ Photo: Pinterest
その後も一進一退の攻防を繰り広げたバルガスとケリー。バルガスはクリーンヒットで上回り、手数でもそれほどケリーに劣っていなかったため、ダウンをも奪った王者の防衛と思われましたが、結果は僅差ながらも明白な3対0の判定で挑戦者を支持。どちらが勝者となってもおかしくないほどの接戦だったため、ここまではっきりとした結果が出たのは意外に感じました。ちなみに私(Corleone)の採点では、114対113でバルガスの勝利と見ました。
バルガスは非常にレベルの高い選手でした。しかし、タイトルを奪取したポール ホドキンソン(英)との一番やこのケリー戦など、前半に相手にペースを譲ってしまい失点を重ねるなど、試合運びに改良点があったように思えます。もしその弱点を克服していれば長期政権や世界複数階級制覇も可能だったのにと、今でも悔やまれます。