勿忘草 ( わすれなぐさ )

「一生感動一生青春」相田みつをさんのことばを生きる証として・・・

蜘蛛の糸

2006-10-22 23:36:55 | Weblog
 ある日の事でございます。お釈迦様は極楽の蓮池のふちを、独りでぶらぶらお歩きになっていらっしゃいました。池の中に咲いている蓮の花は、みんな玉のようにまっ白で、そのまん中にある金色の蕊(ずい)からは、何とも云えない好い匂いが、絶え間なくあたりへ溢れて居ります。極楽は丁度朝なのでございましょう。

芥川龍之介の小説「蜘蛛の糸」の書き出しである


 蜘蛛の巣には、大きく分けて縦糸と横糸の2種類があり、その太さは人の髪の毛が0.1ミリに対し、蜘蛛の糸は0.000015ミリで、強さははがね以上だという。

 蜘蛛はその巣に昆虫を捕らえて餌にするが、自分は自由に動きまわれる。何故だろうか。
蜘蛛の巣の横糸には粘着力があるが、縦糸は粘着力がなく、蜘蛛は縦糸の上だけを選んで歩くという。更にその足や身体には油のようなものが出て、くっつかないようにもなっているらしい。

 賢い蜘蛛の世界には不思議なことが多く、わからないこともたくさんあるそうで、研究材料にもなりその知恵は人間に役立つことが多いそうだ。

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 極楽の蓮池から地獄をのぞいたお釈迦様は、カンダタという一人の男が目にとまります。その男は極悪非道の大泥棒だったが、一度だけ蜘蛛を助けたことがあります。それを思い出したお釈迦様はカンダタを地獄から救ってやろうと蜘蛛の糸をおとします。

 カンダタは懸命にその糸を伝い地獄から這い上がります。しかし途中で下を見ると、多くの罪人が懸命にのぼってくるではありませんか。そこでカンダタは大きな声を出して、「こら、罪人ども。この蜘蛛の糸はおれのものだぞ。下りろ、下りろ」と大声で喚きました。
すると蜘蛛の糸はぷつりと切れてカンダタは再び地獄に落ちてしまいました。


 人間のエゴを描いた芥川龍之介のこの短編は、世界中から糸を切られている何処かの国の元首にも読ませたい。
いやその前に、自分自身が読まなければいけないか。
10月27日から11月9日まで(文化の日を中心とした2週間)読書週間です。
2006.10.22