学生3大駅伝の最終戦「第89回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)」は2日、初日の往路が行われました。今年の箱根駅伝も20チームで争われ、前回王者・東洋大学、11月の全日本大学駅伝を制した駒澤大学の2強に加え、出雲駅伝を制した青山学院大学、前回3位の明治大学、古豪・早稲田大学が頂点を狙います。チームの今後を左右する往路は、選手のブレーキ、優勝候補チームの苦戦、さらには途中棄権と波乱の展開となりました。
午前8時に東京・大手町の読売新聞東京本社を20チームが一斉にスタート。1区は東洋大・田口雅也が先頭集団を引っ張る。その後方では、早稲田・前田悠貴、青山学院・遠藤正人が出遅れる。16キロ過ぎに東洋・田口がスパートを仕掛け、19キロ手前で明大・文元慧に一度は抜かれるも、すぐに差し返す。田口はそのまま先頭を守り切り、鶴見中継所で2区・設楽啓太にたすきリレー。14秒差の2位に明治、3位・法政大学、駒沢はトップから26秒遅れの4位。早稲田は17位、青学大は18位と出遅れた。
各校のエースが集結する「花の2区」。トップの東洋・設楽啓は、横浜駅前で2位に52秒差、権太坂で約1分差をつける快走を見せる。4位でタスキを受けた駒澤エース・窪田忍は、3キロ過ぎに2人抜いて2位に浮上。そんな中、日本大学と山梨学院の外国人ランナーが怒涛のごぼう抜きラッシュを見せます。鶴見を13位でスタートした日大・ベンジャミンは、8キロ過ぎに7位に浮上すると、13.5キロ付近で2位集団を一気にかわし、11人抜きで単独2位浮上。山梨学院・オムワンバは鶴見では16位だったが、13人抜きで一旦は3位まで順位を上げる。そして戸塚中継所まで残り300mとなった23キロ手前で、ベンジャミンが設楽啓を抜き、12人抜きで首位に立った。一方、オムワンバは終盤に疲れが見え、日体大・本田匠にかわされ4位転落。
そして戸塚中継所。日大が先頭でリレーすると、東洋が1秒差の2位で追う。1区7位の日体大が3位に浮上、山梨学院は4位にジャンプアップ。駒澤は5位、青学11位、3区に大迫傑が控えている早稲田は12位。中継所手前で中央大学の新庄翔太がブレーキを起こし、ふらつきながらも何とか19位でタスキを繋いだ。
3区、東洋・設楽悠太が日大・佐藤佑輔をかわして再びトップを奪い返し、強い向かい風をモノともせず、茅ヶ崎チェックポイントで2位に2分以上の差をつける快走を見せます。その後ろでは激しい順位変動があり、日大・佐藤が強風に煽られてズルズルと順位を落とし、早大・大迫は10人抜きで2位に上がります。しかし、19キロ辺りで駒大・中村匠吾が一気にスパートし、大迫ついて行けず。先頭をひた走る東洋・設楽悠太は、2位に2分40秒以上の大差をつけ、平塚中継所をトップでタスキリレー。2位に駒大、早稲田が3位、青学大のルーキー・久保田和真は5人抜きで7位。2区で1位だった日大は、平塚中継所では10位と大幅に順位を下げてしまいました。
4区、東洋・淀川弦太が独走するその裏で、激しい2位争いが繰り広げられます。4位でタスキを受けた日体大・木村勇貴が2位集団に加わり、駒大・湯地俊介が7.5キロ過ぎに集団から置かれていく。木村は12キロ過ぎに単独2位に躍り出る。駒大・湯地は苦しい走りが続き、帝京大・早川昇平にもかわされて7位転落。先頭の東洋・淀川は、後半失速するもトップを守り抜き、平塚中継所で往路アンカー・定方俊樹に繋ぎました。2位・日体大は1分49秒差で服部翔大にタスキリレー。3位に早稲田、4位・明治、帝京大学が12位から6位に上がり、駒澤は10位まで後退。総合優勝争いから早々と脱落か?日大は16位とさらにダウン。ベンジャミンも怒ってるに違いない。
山登り区間の5区、日体大・服部翔大と早稲田・山本修平が逃げる東洋・定方を猛追。服部は5キロの箱根湯本で1分20秒差、9.5キロ地点の大平台で42秒まで詰める。山本もトップから1分4秒差で追いかける。12キロ過ぎに山本と服部が並び、2人が激しく競り合います。14.3キロの小涌園前で、首位・東洋大と日体大&早稲田の差は4秒差。その200m後、服部が定方を捉えて日体大が首位に躍り出た!定方は山本にもかわされ3位後退。そして17キロで服部がスパートを見せ、山本を突き放します。
激しい往路優勝争いの裏で、小田原中継所で13位だった法政大・関口頌悟のごぼう抜きショーがあり、小涌園前で6人抜いて7位浮上、16.7キロ辺りで帝京大・小山司をかわし、8人抜き達成で5位まで順位を上げます。
トップに立った日体大・服部は、芦之湯チェックポイントで2位・早大に28秒差、元箱根で1分30秒近いリードを拡げます。向かい風に苦しめられながらも、最後まで勢いは衰えず、芦ノ湖を先頭でゴールイン!日本体育大学26年ぶり10度目の往路優勝!それから2分35秒差の2位に早稲田大学、4区までトップを守っていた東洋大学は2分39秒差の3位。4位・明治大、法政大学が往路5位と躍進し、青学・帝京・順天堂の3チームによる6位争いは青学が制しました。駒澤大学は往路9位フィニッシュ。なお、城西大学・浜本栄太が18.3キロ辺りで途中棄権、中央大学・野脇勇志も21.7キロでリタイアしました。
往路順位
1位 日本体育大学 5時間40分15秒
2位 早稲田大学 5時間42分50秒
3位 東洋大学 5時間42分54秒
4位 明治大学 5時間44分37秒
5位 法政大学 5時間45分39秒
6位 青山学院大学 5時間46分27秒
7位 帝京大学 5時間46分27秒
8位 順天堂大学 5時間46分29秒
9位 駒沢大学 5時間47分12秒
10位 関東学連選抜 5時間47分52秒
11位 山梨学院大学 5時間48分09秒
12位 大東文化大学 5時間48分46秒
13位 中央学院大学 5時間50分05秒
14位 国学院大学 5時間53分03秒
15位 日本大学 5時間54分31秒
16位 上武大学 5時間58分02秒
17位 東京農業大学 5時間59分24秒
18位 神奈川大学 6時間00分03秒
中央大学 記録なし
城西大学 記録なし
区間賞
1区(21.4km) 田口雅也 (東洋大) 1時間03分32秒
2区(23.2km) ガンドゥ・ベンジャミン (日大) 1時間08分46秒
3区(21.5km) 設楽悠太 (東洋大) 1時間04分36秒
4区(18.5km) 田中秀幸 (順大) 57分16秒
5区(23.4km) 服部翔大 (日体大) 1時間20分35秒
山登りの5区で逆転劇が生まれたのと同時に2校途中棄権のアクシデントが起こった往路は、日本体育大学が1987年以来26年ぶりとなる往路優勝を果たしました。2位の早稲田は、1区で17位と出遅れましたが、3区に大迫選手が9人抜きで3位まで押し上げ、最後は2位フィニッシュ。往路5連覇を狙った東洋大学は3位。4区までトップを守り続けたものの、5区の定方選手が区間10位に沈みました。優勝候補の一角である青学大は序盤の出遅れが響き6位、駒大はエースの窪田選手が波に乗れず、4区の湯地選手がブレーキを起こし、最終的には9位。優勝争いどころかシード権争いの中に…。
1位・日体大から3位・東洋大までは2分39秒差。10位までのシード権争いは、3分以内に5チーム含まれており、駒大シード落ち、13位・中央学院にも逆転シード入りの可能性が残されています。
ところで、5区で途中棄権した城西大の浜本選手と中央大の野脇選手は、両者とも低体温症と脱水症状が原因でリタイア。中央大学は87回目の出場で初の途中棄権で、28年間も守り続けてきたシード権も途切れてしまいました。往路の同区間で複数の途中棄権が出たのは、1996年大会以来17年ぶりだそうです。
往路で番狂わせを起こした日体大は、昨年の大会で初めての繰り上げスタートという屈辱を味わい、19位惨敗でシード落ち。出場権をかけた予選会では1位通過で65回目の出場を決めました。2区の本田選手が山梨学院・オムワンバ選手をかわしてみせると、5区の服部選手は1分49秒差をひっくり返す激走で区間賞を獲得。その服部選手は3年生ながらキャプテンを務めています。前回19位→予選会上がりで往路優勝したのは、最高の下克上といえるしょう。3日の復路も往路Vの勢いそのままにゴールまでトップを死守し、30年ぶりの総合優勝を掴みとれるのでしょうか?
3日・復路は前日の成績に従って時差スタート。午前8時に1位・日体大が芦ノ湖を出発。2分35秒後に2位・早稲田、その4秒後に3位・東洋と続きます。1位がスタートしてから10分後、14位の國學院大学から18位の神奈川大学、オープン参加となる中央&城西の7チームが一斉にスタートします。往路で波乱が起きたから、復路も予想外のドラマが起こり得るかもわかりません。