

場所中に泥酔して、知人男性に暴力を振るってケガを負わせた疑いで、どのような厳しい処分が下されるか注目された横綱・朝青龍が、4日に暴行問題の責任を取って現役引退を表明しました。解雇か除名といった厳罰処分ではなく、自ら土俵を去るという決断を下しました。
朝青龍は4日午後、師匠の高砂親方と共に両国国技館内で開かれていた相撲協会の理事会に出席。事情聴取を受けた後、世間を騒がせた事などの責任を取る形で引退届を提出しました。理事会は午前中の会合で朝青龍に対しての処分について話し合い、解雇処分が出される見通しであったそうです。一部には「出場停止処分にしてもう一度チャンスを与えてほしい」と訴える理事もいましたが、現役続行を認めない武蔵川理事長の意向で決まりました。
また、横綱審議委員会は引退勧告書を提出。その内容には「示談の成立は当事者間の和解に過ぎない。横綱に対する国民の期待に背いた責任を免れるものではない」と厳しく判断。横審が引退勧告を出したのはこれが初めてとなります。
引退発表から約30分後に行われた会見では、朝青龍が涙をぬぐう所が見られました。冒頭で「皆さまに大変ご迷惑をお掛けし、日本相撲協会にもご迷惑を掛け、報道でも大変騒がせ、そういう意味でわたしは責任を取って引退しました」と説明した後、「最後はけじめをつけるのは僕しかいないので、引退を決意した」と語りました。一番の思い出については、2001年夏場所初日に当時の横綱・武蔵丸を倒した事を挙げました。当時は小結になったばかりで、モンゴルの両親を初めて国技館に招待し、その目の前で金星を奪取。それが評価されて殊勲賞を獲得しました。
朝青龍は日本国籍を有していないため、親方にはなる事ができません。本人は「相撲に対する悔いは一切ない」ときっぱり言い切りました。今後については「少し休みたい」と当面の間白紙。最後は報道陣に対して笑顔を見せ、手を振って会見場を後にしました。ただ、この会見で暴行事件については「その話は控えたい」と事実を明らかにしませんでした。
朝青龍の経歴を振り返ると、1997年に来日し、高知の明徳義塾高校で日本の相撲を学びます。99年に高校を中退して若松部屋に入門。序二段・幕下で優勝した後、2000年の秋場所で新十両、2001年の初場所で新入幕を果たします。2002年7月にモンゴル人初の大関に昇進し、九州場所で自身初優勝。2003年の初場所では14勝1敗で2場所連続優勝を決めて横綱に昇進しました。この年の初場所で貴乃花は引退、若貴時代が終焉し朝青龍の時代が到来した瞬間でした。
横綱になって以降も強さをみせつけ、2004年の初場所~名古屋場所まで4連続優勝、2005年には年6場所完全制覇と共に7場所連続優勝を達成。九州場所の表彰式では小泉純一郎元総理が「新記録、大記録、見事だ!おめでとう!」とその偉業をたたえました。
その後も優勝回数を重ね続けたんですが、2007年7月にある出来事が起こります。腰の疲労骨折を理由に夏巡業を休場しながらも、モンゴルでサッカーをプレーしていた事が判明。仮病疑惑で2場所出場停止処分を受けます。その後解離性障害を発症し、モンゴルに帰国して治療に専念。出場停止後の2008年、春場所で復活Vを果たすも、度重なるケガで名古屋~九州の3場所連続休場。2009年は初場所と秋場所を制し、今年の初場所で通算25度目の優勝を決めるも、場所中に起こした不祥事で引退となったのでした。通算成績669勝173敗76休、幕内優勝25回、殊勲賞3回、敢闘賞3回、金星1個の記録を残して角界を去ります。25度の優勝回数は、大鵬と千代の富士に次いで歴代3位です。
朝青龍は暴行事件以外にも問題発言とトラブルを起こしていました。
①モンゴル力士のパイオニア的存在である旭鷲山のマゲを掴んで反則負け、浴室で口論となり、サイドミラーを壊した。
②2002年の秋場所で、貴乃花と対戦した後のインタビューで「チクショー」と叫び、「横綱の怪我をしている足を狙えばよかった」と貴乃花が痛めていた右ひざを破壊しようとしたような発言があった。
③稀勢の里に対して背中にひざ蹴りを入れたり、「けだぐり」を見せた。
④仮病疑惑でワイドショーが大騒ぎとなった2007年8月に1億円の申告漏れが発覚。
⑤2008年夏場所千秋楽で白鵬と土俵上で睨みあい。
⑥優勝を決めた後にガッツポーズして横綱審議委員会から注意を受ける。2009年の初場所と秋場所の2回ありました。
トラブルメーカーぶりを発揮した事で「今までにない人なので皆さまに迷惑をかけた」と反省しておりました。横綱が不祥事で引退したのは、「ちゃんこ」が原因で親方と対立し、おかみさんにチョップを放った後、部屋を飛び出した双羽黒(元プロレスラーの北尾さん)以来だそうです。あの人はプロレスラーになった後もトラブルがあったなあ。
圧倒的な強さと度重なるトラブルが印象的だった朝青龍が、暴力事件が原因で突然の引退宣言。解雇か除名されるだろうと思っていましたが、自ら引退を決断したのは予想外でした。朝青龍の強さは認めるけど、一般人に暴力を振るうのは本当に良くない。今回の引退は妥当だったと思います。被害男性との示談は成立していますが、警視庁側は朝青龍への事情聴取を検討しているそうです。横綱経験者が逮捕されたら前代未聞ですよ。
師匠である高砂親方が横綱に徹底指導をしていれば、不祥事なんて起こさなかったと思うんだけど…。親方本人は理事長の注意を無視したり、騒動の最中に泥酔していたり、引退会見では謝罪の言葉も無かったらしい。横綱も親方もろくなもんじゃない。
引退後は格闘家転向説というのが流れていて、DREAMとかSRC(戦極)といった団体が獲得オファーを出そうとしています。ただ、横綱経験者が格闘技で成功した例はないんですよねえ。曙なんかK-1で負けっぱなし、ボビー・オロゴンにも負けてるからなあ。あと、本人はモンゴルの大統領になりたいとか言ってるらしいんだけど、大統領の被選挙権が45歳以上だから、現在29歳の朝青龍はあと15年以上待たないといけないんです。
朝青龍引退で相撲界は一つの時代に終止符が打たれました。看板力士がいなくなったけど、負のイメージが払拭出来たんじゃないでしょうか?引退相撲および断髪式の日程は未定、両国国技館で行うのではないかと思います。今後は朝青龍みたいな問題児が出ない事を願っています。




