ショーン少年が気絶した(この少年の倒れ方も天下一品だった)のを
目撃した直後のコンサートでのアナの気持ちの動揺といったら、
もう大変です。

そのシーンが、2分くらいも続いただろうかと思われる
アナ(二コール)の顔のアップ。
セリフなし、高まる音楽のみ。
表情に大きな変化はなく、それでも激しく心が動揺するさまが、
観ているこちらもそれこそ気絶しそうなほどに伝わってきました。
個人的には、まさにツボにはまったというか、気に入ってしまった
作品です。
想像力が豊か過ぎるという少年ショーン。
あのレターを読んだときの、稲妻にでも打たれたような彼の横顔。
最後のネタばらしがあっても、だったらなぜ彼は、「あの場所」を
指定することができたのか?
あの少年は、アナの、かつての夫ショーンへの想いの強さを
映し出したものではなかったか。
アナの願望が、少年にテレパシーのように伝わってしまったのでは
ないか。
そう思うほど、アナの想いは強かった
けっして、取れない「記憶の棘」。
それがあの少年ショーンを生み出した(Birth)のではないか。
「君が初めての女性だったよ・・・」とかいいながら、遠い記憶を
追うような憂いの表情をする10歳の少年ショーンには、
もう、クラッとめまいがしました。
それにしても、あの夫ショーンは、なんとなんと・・・
男って、男って・・・ああくやしい~。

この題名「Birth」を「記憶の棘」と言い換えたのがすばらしいです。
★★★★★
監督
ジョナサン・グレイザー
出演
ニコール・キッドマン
キャメロン・ブライト
ダニー・ヒューストン
ローレン・バコール