漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
http://kampo.no.coocan.jp/

補腎の概念・年のせいとか若いのになぜ?という症状は補腎する

2024-05-28 | 老化・血流
中医学でいうところの「腎」の概念は、西洋医学の腎臓だけでなく、生命を維持する様々なものを総括した生命力といったところに及ぶので、なかなかイメージしずらいかもしれませんね。

臓器の腎臓の働きだけを上げても、尿をつくる(老廃物の除去)他に、ミネラルバランスを調整し、細胞内外の水系をコントロールし、血圧の調整や造血の働きもあるし、骨代謝にも関係しています。副腎ではホルモンの分泌もやってくれます。

さらに中医学の「腎」は、腎臓、骨、骨髄から脳に及び、ホルモン分泌を刺激する物質を血液に載せて副腎、子宮、卵巣、睾丸などに届けます。これにより生殖、成長、発育をつかさどり、自律神経系をコントロールして酸素や二酸化炭素や水素などなどエネルギー代謝のすべてを担っていてるのです。

そして「腎虚」になった時の指標は「髪、耳、二陰」。
脱毛、耳鳴り難聴、生殖の衰え、排尿排便力の衰えです。ほかに足腰の衰え、老眼などもあります。巷でも「それは年のせいだね」と言われる症状ですね。

つまり「年のせいでしかたないよ」とか「まだ若いのになぜ?」という症状を何とかしたいと思ったら「補腎」するのです。


生命力のもと腎精は、親から授かった生命力(先天の精)に、日々の養生によって補われる生命力(後天の精)を注ぎ足しながら命を繋いでいると考えます。
後天の精を上手に補えば、いつまでも元気で過ごすことができるのです。この漢方薬が「補腎剤」です。

補腎剤の基本処方は六味丸で、よく宣伝している八味地黄丸は六味丸に附子と桂皮を加えたもので、冷え性体質の腎虚(腎陽虚)の人に向いています。
さらに、「精血同源」と言って血を作り出すものによって腎精を充実でき、「血肉有情」つまり動物性のものを摂ると精血が養われると言われます。たとえば鹿茸や紫河車、冬虫夏草などです。

どれを用いるかは体質によって異なりますので、補腎剤の選択は、よくご相談になって決めたほうが良いでしょう。

体がついていかないのは気虚

2024-05-21 | 夏の養生法
卯の花、ウツギが満開になりました。ホトトギスの声も数日前から聞こえています。
まさに「夏は来ぬ」です。
今日から暦では「小満」。生命が満ち満ちていくころ。草木も鳥も虫も獣も人も、日を浴びて輝く季節。
ですが、この頃の漢方相談で訴えが多いのは、
「体がついていかな~い」

この時期は、じっとしていても寒暖差に体を合わせるために体力を使っているのですが、それを疲れると感じてしまうなら「気虚」つまりエネルギー不足です。手や顔がむくみやすいのも気虚の傾向。

漢方薬なら、補中益気湯や麦味参顆粒(生脈散)などがおすすめ。
梅雨のように湿度が高まって、だるさや胃腸不良になるようなら湿を払う勝湿顆粒で早めに対策しておきましょう。
チュウサギ
朝は早起きして日差しを感じる
手足を動かして運動し汗をかく
戸外に出て気温差に慣れる
夜は食べ過ぎない
香りのある食材で気の流れをスムーズにする

日々の養生も忘れずに。

コチドリ

これはイボタノキ
印旛沼周辺にはイボタノキが茂り、独特な香りを放っています。
漢方家ファインエンドー薬局フェイスブック いいねクリックどうぞよろしく 


なぜ老化細胞は悪さをするのか?・元気な免疫システムを維持すること

2024-05-15 | 老化・血流
年齢とともに、質の悪い老化細胞が出現する確率が増すのですが、それがおとなしく消えずに周りの細胞に炎症を起こすのはなぜか?について「カズレーザーと学ぶ」という番組の中で解説がありました。

答えは、
「老化細胞が周りに炎症を起こさせるのは、自分を早く掃除してほしいという信号を出すため」

例えばがん細胞もミステイク細胞ですが、現実には毎日あちこちにできており、それでも元気に働く免疫システムがあれば、異常を感知してどんどんT細胞が活躍して掃除するので、むやみに増えることはありません。

現在研究が進められているのは、性能の良い免疫細胞(T細胞)をつくることなのですが、免疫システムをいじる結果どんな副作用(例えば激しい炎症など)が起こるか分からないし、今のところとんでもなくその治療は高額なのだそう。
咲き始めたウツギ
「年齢とともに落ちてくる免疫システム」
これを中医学的に考えれば、やはり「腎虚」です。

中医学でいう「腎」とは、脳下垂体、副腎、性腺、甲状腺、すい臓などのホルモン系は泌尿生殖器などの働き、免疫に対する働きなどが含まれ、からだ全体において重要な役割を担っている部分です。
スイカズラ(金銀花)とガマズミ
この「腎」を補う漢方対策のことを「補腎」といいます。何千年もの経験を重ねて処方された生薬の組み合わせ(補腎薬)を飲むと、なぜが体が元気になるのですが、科学的にまだ証明されずとも、理論よりも経験は強しといったところです。
クワの
中医学は究極、不老不死を目指している学問なので、老化に対する解釈と対策はなかなか奥深いものがあります。
漢方家ファインエンドー薬局フェイスブック いいねクリックどうぞよろしく 

胃ムカムカして吐いた原因は、湿邪

2024-05-07 | 胃腸
漢方ご常連さんのこと。
焼肉を食べたら、急に胃がムカついてどうにもならず、吐いてしまったそう。
これは肉が悪いわけではなく、体調の問題でした。彼女以外の人は何ともなかったのですから。

このところの湿気の多い天候の中(湿)、暑いので連日冷たいもの(寒)を食べていた。
つまり「寒湿邪」で胃腸の動きが停滞している状態にあったところに、こってりした焼肉が入ってきたので、体は処理しきれず仕方なしに上から(口から)出したというわけ。

久しぶりに勝湿顆粒を飲んでみたら、一服で胃が軽くなりすっきりしたのだそう。
これから、梅雨時には、このような状態に陥りやすいので、漢方薬のご用意を。
そして暑くても、冷たい食べ物と冷房は控えめにしておくことですね。





タイワンオナガ

漢方家ファインエンドー薬局フェイスブック いいねクリックどうぞよろしく 

太っているのに栄養不足?:腎精不足

2024-05-01 | 老化・血流
病院で栄養不足だから卵などもっと食べるように言われたのだそう。「こんなに太ってるの栄養不足だって・・・」確かに見た目は太っているお客様(70代)なのだが。

この頃よく言われる「フレイル(虚弱)」は筋力の衰えの問題で、筋肉の栄養素といえばたんぱく質なのだが、食べたものから筋肉を上手に作り出す酵素(酵素もたんぱく質)が働かなければ、筋肉は増えない。
この働きは年齢とともに落ちてくる。
モンキアゲハが田んぼにやってきた

前記事に関連しますが、老化によって細胞内の呼吸(ミトコンドリアの働き)や正しい形のたんぱく質を作り出す力が落ちてくる。
そこで中学的に必要なのが「腎精」
「補腎」対策の漢方薬の中には、良質のたんぱく質や大切なミネラルがたっぷり含まれているものがあり、服用すると「体がしっかりして、元気になれる」とよく言われるのは、ふだんの食事に加えて漢方薬をプラスすることにより栄養的に大切なものが効率よく摂れるからだろうと思う。
漢方家ファインエンドー薬局フェイスブック いいねクリックどうぞよろしく