
最近観た映画の中で、もっとも自分の
人生に影響を与えたかもしれない。
おまけに、映像、音、ストーリの流れと、映画の作りも素晴らしい。
へたな媚もなく説教じみたシーンもなく、心地よく入り込んでしまう素晴らしい出来栄え。
要するに言ういことなしの作品。
★★★★★
胡同(フートン)とは北京の中心、故宮のある街だがその旧市街地に住む「チン」爺さんを中心とした物語。そしてこのチンさん、物語の本人(93歳でベテランの理髪師)が演じている。
さて、どうして自分の人生に

影響をあたえたか。

これに関しては残念ながら説明する言葉がみつからない。
チンさんの生きざまを見ているだけで、きっとそうなる。
ジタバタと生きている自分がなんと未熟なことか。
恥ずかしくなる。思い知らされる。

「20年前から全然お変わりないわ、元気でいるコツをおしえてほしい」
と尋ねられ、軽~く返すチンさんの言葉、

「
歳をとると死を恐れて不安がり、生にしがみつくと夜も眠れなくなる。わしはそんなことが全くない、夜もよくねむれるよ」
何気ない言葉だが、ぐっさり胸に突き刺さる。
なんせ毎日不安でしょうがないし、なんとかいい生活をしたいとあがいてるもの。
そして、チンさんがテープレコーダに向かって

自分の生い立ちを録音するシーン。
(なぜそうなったかのいきさつは、思わず苦笑してしまうのだが)
こんなすばらしいチンさんもいろいろと失敗してるんだな、おまけに息子の話になるとつい

愚痴ったり。(息子は失敗の真っただ中だ)

いまはまだまだ迷ったり不安がったりしてもいいのかも。あと50年も生きれば(!)こんな境地に到達できるかなあ。
だけど、こんなに真摯に生活することがはたしてできるか・・・
古時計の音、入れ歯のコップ、

猫・・・
それらはまるで爺さんの残り少ない寿命を数えているようだけど、
爺さんはそんなにやわじゃないんだなあ。
歴史のしみ込んだ古い街とオリンピックで騒がしい現代中国の織り交ざり方も絶妙。
監督ハスチョロー、

すごいぞ!

岩波ホールで上映され、最近千葉にやってきた作品なんだけど、千葉の1っ箇所しか上映していない。
どうしてこういういい作品をもっと多くの映画館で上映しないのかなあ。
映画界、もっとオープンにならないの?
胡同の理髪師公式ページ
監督ハスチョロー
出演 チン・クイ
チャン・ヤオシン
ワン・ホンタオ