藤沢氏生前最後の短編集である。
短編集と言うより、掌編小説集である。いわゆる、ショートショート集である。
巻頭の「江戸おんな絵姿12景」は、江戸の四季を背景に、当時の下町の何気ない女性の日常を編んだ12編の掌編である。
しかも、その趣向が凝っている。
つまり、作者がざっとあらすじをメモし、それを女性編集者にわたして相応する浮世絵を選んでもらい、後に小説に仕立てるという趣向である。
編集者も、提示された「あらすじ」にふさわしい絵柄を選ぶのに相当苦労したらしいし、また、作者も「あらすじ」を選ばれた絵にふさわしく仕上げるという緊張感があったと(あとがきに)記している。
後半は、”広重「名所江戸百景」より”として、表題作など7編を収める。(都合19編)
いずれも、極めて上質のエンターテイメントに仕上がっている。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★★)