![]() | 舟を編む (光文社文庫) |
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『舟を編む』の世界が自分の学生生活で見聞きしていた世界とかぶって涙が出そうなくらい懐かしくって、ブログに感想を書こうにも四苦八苦。あかん、自分のことを絡めると思い入れが過ぎてまとまらん。てなことで、最初から文章書き直し。
辞書編算にまつわる物語。編集者馬締が関わった最初からついに出版されるまでの長い長い物語。そう、研究は一日にしてならず。
ここで自分の話を。恩師、研究上での師匠も大きな資料を編算していた。実にその巻数31巻。私はその最後の最終巻の編集から刊行まで見守った←研究者としては使いものにならず。先生は研究一筋で無邪気な方で、先輩方も研究に誠心誠意尽くしておられた。そして、ちょっと浮世離れしていた世界だった。
そうまさにこの小説の作品世界のよう。
だからこそのリアリティも感じられて一層引き込まれたのだ。
前半は編集者として配属されたばかりの馬締とそのラブロマンス。狂言回しとしてでてくる同僚西岡(こちらの感覚はごくごく普通)が、いっちゃってる馬締のためにくるくると働く姿に私は確信した。
この作品にはいい人しかでてこない。
いや、そうあってくれ!そう思うのは無理はない。だって私もこういう人ら好きやもん。好きなことにまい進してあれやこれや少しでもいいものを作ろうと日常生活もままならないほどがんばる人たち。
後半はぐっと時は流れて出版直前へ。そこにでてくるのは新しく配属された女性社員。彼女の視点で物語は動いていく。
解説として岩波の辞書編集部の方の文章が載っている。この中に作者三浦しおんさんはインタビューでほとんどメモを取らなかったということとその理由が書かれていて、この作品世界を作り上げた作者がどのような触覚で物語になる情報を仕入れているのか一端が見えた気がした。