Fさんの日々の記録と山歩き

 山歩きが生き甲斐の団塊世代オッサン、ある事無い事日々感ずるままに綴っていこうと思います。

信越国境、苗場山~佐武流山登山

2012年10月06日 | 山歩き

10月3日(水)  和山登山口 →  苗場山頂ヒュッテ(苗場山)   天気=曇り、霧


08:40和山登山口(テニスコート跡地)→ 09:25~27登山道合流地点→ 10:00~10栃川上流徒渉点→ 10:24~34四合目標識→ 11:51六合目標識→ 11:51ヨモギドウ沢徒渉点→ 12:37小赤石コース出合→ 12:54赤倉山コース出合→ 13:10苗場山頂ヒュッテ(苗場山)

 「信越国境の苗場山から佐武流山に繋がる登山コースが切開かれた。」と以前、山の雑誌に書かれていたので、いつかは歩きたいと熱望していた。と言うのも、苗場山~佐武流山間を歩くと、群馬県の水上町から信州、志賀高原まで山稜伝いに、私の足跡が一筆書きで繋がるからだ。登山に興味無い人は?と思うだろうが、地図上に自分の足跡が長い線となって繋がるのは、山歩きが趣味の私にはけっこう嬉しい拘りです。。
 未明、妻を起さぬよう静かに起床し、我家を出て、AM4時前に関越自動車道に入る。(高速料金が深夜割引50%オフになるので)越後湯沢ICで一般道に降りると近くのセブンイレブンで朝食をとる。食事を終えると山越えの道で秋山郷へ向う。東は苗場山、西は鳥甲山に挟まれた山峡の村、秋山郷には、鳥甲山登山で来て以来だから20年ぶりくらいになる。
 まず秋山郷最奥の佐武流山登山口まで行き、折畳み自転車を残置する。その後、和山温泉近くのテニスコート跡地まで戻って車を駐車し、「苗場山登山口」と書かれた標識に従い出発する。「私道」と記された荒れた林道をしばらく行くと、栃川の流れにぶつかる。少し上流に小さな鉄橋が架かっているが、道が手前で流水に削られ寸断しており、そこは藪漕ぎで突破して橋を渡る。




 
テニスコート跡地の登山口(奥は鳥甲山)



 右に曲り、川沿いに進むと堆積した岩屑の下に道は消えていた。一旦橋まで戻ると「←苗場山」と書かれた小さな標識を見つけた。今度は左へ矢印どおり進むと再び道が消えた。困惑しつつ再度戻って、よく見回すと崖の途中に赤い布があり、そこが登山道だった。間違いに気付くのが早かったので、ロスタイムは僅かだった。踏み跡は急な斜面を100m程高度を上げて直上し、山腹沿いのしっかりした登山道と合流した。
 ここからは明瞭な道が続く。この道はあまり利用されてないのかクモの巣だらけでスットクで払いつつ進んで行く。小さな沢を2本越えて栃川上流の大きな沢と出合う。大雨の後遺症なのか沢全体を岩屑が覆いつくし登山道を埋めている。注意深く対岸を確認すると赤い目印が見えた。水飛沫を浴びながら沢を渡り、対岸の登山道に取り付く。此処からは尾根に向って、凄い急坂が続く。ベタ打ちされたロープが無ければ、登るのに苦労するだろう。辿り着いた尾根上には「四合目」の標識があった。此処で行動食をとり一息いれる。




 
平太郎尾根の急登



 ここから標高差500m余の平太郎尾根の急登が延々と続く。今日一番の辛い頑張りどころだ。「忍」の気持ちで登って行く。やがて尾根を左に離れると、一転して山腹を巻く水平な道に変る。小さな沢を越えてヨモギドウ沢に出合う。1850mという標高の割には豊かな流水である。沢の左側を登って行くと、だんだん緩やかな草原地帯に変化していく。標高1900m以上は既に紅葉が始まっており、赤や黄色の彩が美しい。



 
紅葉が始まった草原



 幾度か紅葉の草原を越え、沢音が尽きると広大な苗場山頂湿原の一角に着き、小赤石コースと合流した。太い木材で構築された木道が黄色い湿原の中に延々と続いている。木道は歩き易く歩行速度が早まる。一旦木道が途切れ、岩のゴロゴロした道を進むと再び木道に変り、右に分岐する赤倉山コース出合に着いた。此処を左に曲り、山頂へと緩やかに登って行く。白い霧が一層濃くなり、昼過ぎというのに薄暗く黄昏時のようだ。



 
小赤沢コース出合



 やがて白い霧の中から大きな看板と奥に山頂ヒュッテの建物が姿を現した。ヒュッテの管理人は若い男性で親切な応対が気持ちよい。私は40代の単独男性と同室になった。赤湯温泉から登って来たという彼は、控えめで温厚そうな人だったのでホッとした。苗場山頂標識(2145m)は小屋の側にあり、サンダル履きで出掛けて証拠の写真だけ撮った。




 
苗場山山頂



 夕食前に外へ出ると霧が払われ雄大な山頂湿原の全貌が眺められた。4度程訪れている苗場山だがいつも天気が悪く、こんなに見事な展望は初めての体験だ。夕焼け空に湿原が輝く風景は感動的で心揺さぶられる。



 
山頂湿原(右奥の山が赤倉山)




 
夕焼けに輝く湿原




 夕食はお変わり自由のカレーライスで、副食のトマト、キャベツの千切りやお漬物もバイキング方式で食べ放題、小屋泊まりは滅多にしないのだが一夜限りの見知らぬ人との会話も楽しくて食事も美味く、小屋泊まりが病みつきになりそうだ。一泊夕食付で7千円は高くないと思った。どこやらのBSテレビ局が我々の食事風景をカメラに撮っていた。






10月4日(木)   苗場山頂ヒュッテ(苗場山) → 佐武流山 → 佐武流山登山口   天気=雨


05:57苗場山頂ヒュッテ→ 06:15赤倉山コース出合→ 08:08~19赤倉山→ 09:16~25ナラズ山→ 09:44土舞台→ 10:22~30西赤沢源頭分岐→ 11:13~25佐武流山→ 11:53~58西赤沢頭分岐→ 12:26~30ワルサ峰→ 13:27~34檜俣川徒渉点→ 13:46~14:00林道出合→ 15:06佐武流山登山口


 ヒュッテの朝食が6時からなので、5時前に起きて食堂でガソリンコンロに火をつけたら炎が大きく燃え上がり一瞬焦った。濡れたフキンを被せて火を消したが、ヒュッテを燃やしたらエライ事なので屋外のベンチに移動し、お湯を沸かしてカップヌードルとパンとコーヒーだけの朝食を済ました。小屋の管理人さんに挨拶して6時前出発する。天気が良ければ未知のコースを歩くのは心躍る思いだが、外は真っ白な霧の世界で数十m程の視界しかない。こんな天候では不安と緊張が先立ち心細い気分が強い。昨日の天気予報は、「越後湯沢町は午前中晴れ」と予想していたのに山の天気は当てにならない。



 
霧の山頂湿原



 分岐の所で左折して赤倉山コースに入る。すぐ先に苗場山神社の小さなお社が建っていた。今日の無事を祈って手を合わせる。しばらく木道が続いていたが、途切れて草原の道に変った。小雨が降り始め、以後雨衣上下を装着しての歩きになった。あまり歩かれている様子は無いが、割としっかりした道が続く。雨の合い間にチラリと赤倉山の姿が見えた。展望が無いので踏み跡を見失わないよう慎重に進んで行く。



 
登山道から赤倉山を望む。



 一旦鞍部に降って小さな1787mピークを越え、急登をしばらく頑張ると左より赤湯温泉からの道が合わさり、少し先で赤倉山(1938m)に着いた。刈り払いされた小さな空地に山頂標識だけ建ち、展望は全くない。ここから佐武流山登山道までの間が9年ほど前に開通した道なのだが、笹の繁殖し踏み跡がだいぶ薄くなってきている。




 
ナラズ山に向う登山道



 ホワイトアウトの中、登山道のアップダウンで地図上の何処にいるのか見当をつけながら進んで行く。雨と草露で身体中ずぶ濡れだ。最近買ったばかりのモンベル製軽登山靴も防水が悪いのか、中は池状態で気分が重くなる。天気と展望に恵まれた山行は心弾むが、視界も無く雨に打たれながらの山行は修験者が修業をやってる気分だ。これも山という自然相手では仕方ない。辛い修行を楽しみながら行こう。赤倉山から1時間程でナラズ山(2052m)に到着、思ったより早かった。佐武流山と赤倉山の中間点になる。樹林に囲まれたピークだが晴れていれば展望があるのかも知れない。



 
ナラズ山山頂



 ナラズ山から道がはっきりしてきた。何度かアップダウンを繰返して「土舞台」という名の空地に着く。このコース中、唯一のテント場だが、ジメジメしていて、此処にテント泊したいとは思わない。ここからしばらく進んで、いよいよ佐武流山へ向けて登りが始まる。途中右に降る踏み跡があった。地図に記された水場への道だろう




 
土舞台のテント場



 登り続けると佐武流山登山道と合流した。此処は西赤沢源頭と呼ばれている。一息入れて佐武流山へ向う。今日は他に登山者は居ない様子、この雨では無理もない。登山道合流地点から山頂までの標高差は300m程だが、展望が全く無いのでやけに遠く感ずる。3度程ニセピークに騙された後、やっと佐武流山(2192m)に着いた。この山頂は十数年ほど前の春に、野反湖から残雪を伝って妻と二人で登っているから2回目だ。その時はまだ登山道が無かったので、立派な山頂標柱が建つ今とは全く様子が異なり、青い小さなブリキの山頂標識が樹木に吊るされているだけだった。



 
佐武流山山頂



 登頂の余韻に浸る気分の前に雨足が強くなったので、追われるように慌しく山頂を後にした。下山道に一箇所沢の徒渉があり、雨量が増えると増水して渡れなくなる恐れがあるのだ。前山のワルサ峰(1870m)を過ぎると木の根が絡みあって滑り易い急坂の下山が続くので気を緩める事が出来ない。何度か滑りそうになりながらも休まずに1時間程で檜俣川の徒渉点に降立った。さほど増水はしておらずホッとした。それでも靴を流水に浸さねば徒渉出来ないが、泥だらけの靴が綺麗になって、返って心地よい。



 
ワルサ峰への登り




 
檜俣川徒渉点




 対岸に渡ると100m程高い林道まで登り返す。この登りがきつかった。林道に着くとザックを投げ出して休憩タイム、お腹が減ってるので行動食の潰れた固いパンが実に美味い。この頃から天気も上向き始め、時折陽が差すようになってきた。ここからは単調な林道歩きが続く。途中「和山へ近道→」と記された標識があり右折する林道に入る。この道はまだ新しく、木材運搬のキャタピラーカーに踏み荒らされて泥んこ状態なので、しばらく歩き難かった。緩やかに曲りながら進んで行くと路上にいた猿の群れが、私の姿を見て渋々身を隠した。
 やがて再び「←和山へ近道」と記された標識に導かれ左の細い踏み跡に入る。この道はフカフカした土の道で気持ちよく歩いて行ける。15時ジャストに佐武流山登山口に到着した。朝6時前に苗場山頂ヒュッテを出発してから雨の中を9時間歩いてゴールした。コースタイムが11時間の道だから自分でもよく頑張ったなと思う。




 
佐武流山登山口



 登山口に残置していた自転車を組立てると、ダウンヒルの道をアッという間に疾走して、車の駐車場所まで戻ってきた。10キロにも満たないアルミの折畳み自転車だが、実に快適な乗り物だ。乾いた服に着替え人心地ついた。疲れが深いので高揚感もあまり湧かず安堵する気持ちが強い。天気が良ければ明日も登山をする予定だったが、装備が全てずぶ濡れなので、その意欲は消滅した。
 ただただビールが飲みたく、秋山郷を後にすると越後湯沢町のスーパーで夕食の食材とビールを買い、関越道上りの谷川岳PAで車を停め一人ささやかな祝宴をあげた。その夜は此処で車中泊し、翌朝朝日が昇る頃に我家へ戻った。


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