毛勝山は北アルプスの北部に位置し、標高2414mの威風堂々たる山容ですが、富山平野から眺めると背後の名峰剣岳ばかりが目立って、剣岳の前衛峰にしか見られないのがチョット不遇な山です。
以前は山頂までの道は無く残雪期しか登られぬ山でしたが、近年登山道が開設された事を聞き、平成19年の秋に単独で登りに出掛けたのでした。その時の山行記録が古いHPに記されていたので、下記に転載してみます。
平成19年10月17日(水) 毛勝山登山 天気=曇り時々晴れ
06:18僧ヶ岳登山口(車中泊地)→ 06:30毛勝山登山口→ 06:591060m地点→ 08:141700m地点→ 08:57モモアセ池→ 09:10モモアセ山→ 10:04~10:40毛勝山→ 11:28~11:33モモアセ山→ 12:06~12:15 1700m地点→ 13:15 1060m地点→ 13:36毛勝山登山口→ 13:40僧ヶ岳登山口
前夜仮眠をとった北陸道、入善Pから東又沢の林道を通って阿部木谷出合へ未明に到着。朝食の準備をしていると、2台の車が通りすぎて行った。
食事と装備の準備を終えると出発。これから1800mの標高差を越えて毛勝山を目指すのだと思うと、マラソン大会のスタートを切るような緊張感を覚える。
林道を少し歩いて、小さな標識がある毛勝山登山口に着く。出だしから絶間ない急坂の連続である。要所にはロープが張ってあるので、それを伝って登り随分と助かった。
稜線に近づいた雰囲気なのでポケナビを確認すると、1060m地点のようだ。中年男性が一人ここで休んでいた。地元の人のようで「先週は猫又山に登った」と話す。「雪は大丈夫でしたか」と問うと、「雪は大丈夫だったけど、熊が居てネ」と聞きたくない事を言う。
ここから先は先程までの傾斜ではないが、樹林立帯の尾根道登りが延々と続く。思ったより道は明瞭で迷う心配はない。1700m地点の手前で夫婦連れの登山者を追い抜いた。これで私が先頭に立ったようだ。1700m地点で初めて視界が開けた。ガスの合間に北の駒ケ岳~僧ヶ岳や大明神山などが望めるが、行く手の毛勝山はガスの中に閉ざされている。
僧ヶ岳(左)~駒ヶ岳(右)方面
少し登った所で最初の休憩をとり栄養補給する。ここら辺が森林限界のようだ。更に登って行くと傾斜が緩んで左手に大きな池塘(モモアセ池?)が在り、草原を横切って登った地点がモモアセ山のようだ。二重山稜なので、何処がピークか判然としない。一旦降って急登すると天国のようにきれいな湿原に着いた。きれいな水を湛えた小さな池塘は、ガイドブックにあった「クワガタ池」のようで、なるほどそんな形に見える。
クワガタ池
ここから山頂へ向け最後の登り、今まで飛ばして来たツケがドッと出て足が重い。草つきの滑り易い道を我慢の登りを続け、10時04分待望の毛勝山へ到着した。三角点標石と毛勝山と書かれた表示板だけの簡素な山頂、晴れていれば素晴らしい展望だろうが。
クワガタ池から山頂への登り
毛勝山山頂
流れるガスがだんだん薄くなって、僧ヶ岳からサンナビキ山へと続く北の稜線や真っ青な日本海が、はっきり見えるようになってきた。しかし一番見たかった剣岳は相変わらずガスの中、隣の釜谷山がチラッと見えただけだった。
山頂からサンナビキ山方面
クワガタ池とモモアセ山
富山平野と日本海
しばらく粘ったが10時40分頃諦めて山頂を後にする。クワガタ池の所でふり返ると毛勝山~釜谷山の稜線がくっきり望める。「今だったら剣は見えるだろうに」と損をしたような心境、疲れも出て帰りの道はやけに長々と感じられた。1060m地点から最後の急坂は、ロープに縋り転げるように降って登山口に戻って来た。
山頂直下下山の道
下山の道から毛勝山(左)と釜谷山(右)
阿部木谷出合の車に到着すると身体と衣服の手入れを終え、まずは祝杯、全力で登った後のビールは実に美味い。明日は北側の僧ヶ岳と駒ヶ岳を登るので、今夜もここで車中泊をする。
念願だった毛勝山は期待以上に素晴らしい山でした。剣岳北方の山々は私にとって未知の山域だったが、今回の山行で概ねの位置関係も把握する事ができた。まだ登りたい魅力的な山が幾つかあるので、是非とも再訪したものです。
※登山口から山頂までの道は標高差1800mで、コースタイムは11時間の健脚コースです。三百名山を目指す人は、若く体力がある時期に登った方がいい山の一つです。