本日ご紹介にあがる漫画は、西遊記をモチーフにした歴史活劇『西遊妖猿伝』。作者は、このブログでもちらほら出てきている諸星大二郎です。
世界を滅ぼす災厄たる妖怪、斉天大聖に見入られた少年・孫悟空が、自らの運命と向き合い打ち勝つため天竺を目指す。
西遊記が元といっても、そこは諸星漫画、ちょっとやそっとのアレンジではすまされません。隋末から唐代にかけての時代背景を舞台に、独特の妖気とダークさをエッセンスにしつつ、かといってSFに走るでもなく、骨太なアクションとストーリーで楽しませてくれます。
玄装、紅ガイ児(ガイは子+亥)、金角・銀角兄弟、ナタといった原作キャラは大胆に味付けされ、通臂公、竜児女などオリジナルキャラもそれに負けない魅力にあふれ、おどろおどろしくも、どこか心の感じられる異形の妖怪達も登場し、どのキャラもいちいち諸星イズムにあふれていて、読んでいて全然飽きません。
対象年齢はやや高めでしょうか。小学生くらいにはちと辛いかもしれないけど、歴史好きだけではなく、幅広い層にオススメな一品です。
なお、諸星大二郎はこの作品で2000年に第4回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞しています。他の錚々たる受賞者を見ても、もうちょっと諸星漫画が世に認知されてもいいのになあ、と思うのだけれど、そうなったらそうなったで、ひねくれものの僕は恐らく読まなくなるので、今のままでいいや、てことにしときます。
1983年の連載から、掲載誌を転々としながら約15年続き、現在は休筆中。全4部構成のうち、2部までが刊行されています。
続編まーだー?
「西遊妖猿伝」 全9巻 双葉社
第一部のみ収録。
「西遊妖猿伝」 全16巻 潮出版社
第一部(加筆修正あり)と第二部まで収録。